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隠しキャラ転生物語  作者: 瀬田 彰
三章

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絶対に離さない

閲覧ありがとうございます。

今回はアル(アルフィード)視点です。


 シルが突然駆け出したのを俺は追った。

 彼女は必死に『ロジュア』と叫んでいる。

 シルは周りが見えないのか、わざとそうしているのか人混みを選ぶように動いていた。


「待て、シル!」

  

 俺の声は人混みにかき消されシルに届かない。シルと俺の距離がどんどん開いていく。

 シルは一体誰を追っているんだ?

 俺は彼女の先を見たが彼女の先には誰もいない(・・・・・)

 そしてあろうことか彼女はスピードを出している馬車の前に飛び出した。


「ねーちゃん、あぶねえ!!」 


 誰かが叫んだ。

 俺は全力で走った。

 彼女を失いたくないその一心で……。

 そして俺もそこへ飛び出す。

 彼女を、シルを助ける為に。

 俺はシルを抱き締めそのまま滑り込むように転がった。


「ぐっ!」

 

 馬車との衝突は避けらたが右腕に激痛が走った。

 だかそんなことを気にしていられない。

 

「シル、しっかりしろ!」


 俺は起き上がりシルに声をかけた。

 シルは俺の声に反応しゆっくりと目を開けた。


「アル……?アルフィード様……?」


 この時、俺がどれだけホッとしたかは言うまでもない。


「これは、夢?」

「馬鹿!夢なもんか!」


 俺はシルを抱き締めた。右腕が再び痛むが構わない。

 シルは生きてる。

 ちゃんといる。

 俺はシルの名前を呼び続け強く抱き締めた。


「アル、苦しい……」

「馬鹿っ!いくらなんでも馬車の前に飛び出すなんて事はするな!俺の心臓が持たないだろ!」

「ご……、ごめんなさい……」


 シルは自分がやったとこに対して申し訳なさが溢れてきたのか、俺に謝る。

 でも俺は謝れたいんじゃない。

 俺はシルに無茶をしてほしくないだけなんだ。

 でも周りに人が集まった人間がそれを阻む。「兄ちゃんかっこよかったな!」「すげーよ!」と呑気に声をかけきたのだ。

 そんな中、シルは俺の腕に触れた瞬間顔色を変えた。


「アル、その腕……」

「心配いらない。ちょっと当たっただけだ」

「嘘!こんなに血が出てる!」


 シルは慌てて回復魔法(ヒール)をかけようとした。けれど俺はそれを止め、小声でシルに呟いた。


「人が多すぎる。無詠唱魔法はまずい」

「でも……」


 頭ではわかっている。

 そんな様子が窺えた。

 それでもまずいものはまずい。

 何故ならば普通の庶民が無詠唱魔法を使うなど殆ど聞かないからだ。

 だから俺はシルを止めた。けれどシルは聞かない。彼女は責任感からか無理矢理魔法を使おうようとした。


「あ、馬車から人が出てきたぞ!」

  

 誰かがそう言うと周りの人間達がざわめき始めた。

 流石にこの周りの状況に違和感を持ったのかシルは手を引っ込めた。

 

「さっきの……貴族の馬車だって」


 シルがそう呟いた。

 俺は舌打ちをする。

 今の俺達にとって一番会いたくないのは貴族関係者だ。

 下手に目をつけられたら面倒になる。

 俺は最悪逃亡でもするかとも考えたが、腕が思ったより痛くて動けなさそうだった。

 声からしてこちらに向かってきているようだ。


「クラウド様だ!」

「クラウド様!」

「クラウド殿下!」


 クラウド?

 俺はそれを聞いて安堵する。

 この国の王子クラウド・ダニエル。

 俺の友である彼ならば何とかなりそうだ。

 それにしてもクラウド様は人気があると聞いてはいたがまさかここまでとは思わず俺は苦笑いをした。


「アル、大丈夫?」


 シルが不安そうに聞いてきた。

 俺は「大丈夫だ」と言って頷いた。相手がクラウドなら問題ない。

 何故なら、クラウドは鈍いからだ。

 

「大丈夫か?怪我をしたのか?」


 案の定クラウドは俺がアルフィードだと気がつく気配はなかった。

 そしてそのまま回復魔法(ヒール)をかける。

 相変わらず回復魔法(ヒール)は苦手なようで痛みはあまり引かない。


「すまなかったな。急いでいたからスピードをあげていた」 

「いいえ、飛び出したのはこちらでございます。殿下の責任ではございません」 

「そう言うな。大層な怪我をしてるではないか」


 クラウドはそう言って無言になるが、何かに気がついたのか俺の顔をまじまじと見てきた。


「何か?」

「いや。お前、スピティカル国の民ではないな?と思ってな」 

「はい、殿下の言うとおりわたくしはスピティカル国の民ではありません」

「もしかしてジャイル国か?」

「はい、そうですが?」


 もしかしてバレたか?と一瞬警戒したがクラウドはうっすら笑みを浮かべた。

  

「成る程、通りで素っ気ないわけだ。俺の友人にお前のように素っ気ない男がいるからな。そうではないかと思ったのだ」


 それはまさかアルフィード()のことか?

 俺が眉をピクピクさせているとシルが俺左手を握ってきた。


「アル、大丈夫?痛む?」


 誰が言い出したのか惚れた女に男は弱いとは良く言ったものだ。

 俺はクラウドの事など頭から飛び「心配ない」とシルに優しく答えた。

 ふと、視線を感じて俺は目線を、動かした。

 すると人混みの中でじっとこちらを見ている男がいた。

 クラウドでも見ているのか?

 いや、違う。

 あいつの視線の先はクラウドじゃない。

 シルだ。

 シルを見ている。

 けれど当の本人であるシルはその視線に気づいていないのか俺の腕だけを気にしていた。

 俺はもう一度男の方を見る。

 すると男はもういなくなっていた。

 俺は胸に熱いものを感じ、胸を押さえた。

 それは嫉妬に近い、怒り。

 見たこともない男に何故そんなことを思うのかはわからない。

 だが、俺の何かがアイツは危険だとシルに近づけてはいけないと警報を鳴らしていた。

 俺はシルがまた離れないよう彼女の手を握る。

 シルはそれを俺が痛いのを我慢していると思ったのか握り返し「大丈夫だからね」と必死に声をかけてくれている。

 そして俺はこの時改めて心に誓った。

 この手を絶対に離さない。誰にも渡しはしない……と――。

読んで頂きありがとうございました。

次もまたよろしくお願いします。

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