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隠しキャラ転生物語  作者: 瀬田 彰
三章
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アルとアルフィード

閲覧ありがとうございます。

今回はアル(アルフィード)視点です。


 夕食を食べ終えた俺達はシルが思い出したという『ロジュア』という男について話していた。


「マックスの事を聞いたときに違和感は感じてたの」


 シルの話しによると、ミート・ブレイクはマックス・ディーンとではなく、ロジュアという男と王宮に来るはずだったらしい。


「だが、目撃者は皆『マックス・ディーンだった』と言っている」

「そこがひっかかるのよね」


 シルが頬杖をついた。

 シルヴィアの時はそれなりに令嬢をしていた彼女もシルとなれば普通の女の子。

 道中言葉遣いを散々注意して今に至る。

 彼女にとって『シル』の顔を知り合いの誰かに晒すことはない。当然と言えば当然なのだが、そのせいでどうしても俺を『アルフィード』と意識してしまうようだった。 

 今こうして彼女とフランクに話せるのは俺としてはとても嬉しいことだ。


「だから余計にジェフリー達に話が聞きたかったのに……」


 シルはテーブルに突っ伏した。

  

「様子がおかしかったと言っていたな?」 

「うん、多分二人とも何か隠してる。それにあの短剣」

「短剣?」

「お店を出る前に短剣が落ちてたの」

「護身用を落としたんじゃないのか?」

「あのね、商人とかならまだわかるわよ。でもあそこはパン屋よパ・ン・屋!パン屋にそんな物騒な物置く?しかもあそこはジェフリーの店じゃなくて、ミートさんのお店よ?」

「確かに、趣味でもなければそんな物を店に持ち込む必要もないな」

「でしょ?因みにジェフリーやジェニーにそんな趣味ないわよ」


 シルはそう言うと「うーん」と頭を抱え込んでしまった。

本気で悩んでいるんだろうけど、何だか可愛らしくて笑うとシルに睨まれた。


「そう言えばサーガさんからの連絡はないの?」


 俺は頷く。

 状況を把握するために定期的に連絡を入れるようにサーガには言っておいたのだがまだ来ていない。


「何かあったのかな……」


 不安そうに言うシルに俺は隠すつもりはなかったので頷いた。


「あいつが連絡を寄越さないと言うことはそういうことなんだろう。俺達の事がバレたか、それとも……。」

「それとも?」

「何者かが嗅ぎ回っていて連絡できないかだ」


 俺の言葉にシルはブルッと震えた。

 怖がっているのだろうか?

 無理もない。不気味なカードに振り回され、知り合いが不可解な事件に巻き込まれたんだ。

 俺はシルに声をかけようとした。


「気に入らない……」

「え?」

「どこまで人をバカにしてるの……」

「は?」


 予想外の反応に俺は固まるが、シルは……シルヴィア嬢はあのダーンの娘だと思うと納得してしまった。

 彼女はあの義母上(ははうえ)に立ち向った令嬢なのだ。

 あの事があったからこそ今の俺がある。

 もしあの時彼女が声を上げなければ、俺はここにはいない。

 義母上(ははうえ)の言われるがまま動き、ダーンが望む哀れな王子になっていただろう。

 そして俺は……――。

 

「アル?どうしたの?ボーッとして」


 シルに話しかけられて俺は我に返った。

 今は黒い彼女の瞳が俺を見つめる。


「いや、何でもない。俺の目に狂いは無かったと思っただけさ」

「どういうこと?」

「シルヴィア嬢にプロポーズしてよかったってことだよ」


 俺がそう言うとシルは顔を真っ赤にした。


「本当に感謝している。あの時、シルヴィア嬢が俺の手を取ってくれていなかったら今頃クラリス嬢の婚約者にさせられていたかもしれない」


 勿論簡単には折れるつもりはないがな……。

 だがそれこそシルヴィア嬢を盾に婚約させられていたかもしれない。

 あの時シルヴィア嬢が俺の婚約者だったから簡単に回避できたのだ。


「そう言えば、クラリス様ってどうなったの?」

「え?」

「結局私マックスの事で頭がいっぱいになっちゃったからそっちのこと聞いていないなって思って……」

「ああ、そうか。そう言えば言ってなかったな。彼女なら普通の生活に戻ったよ」

「本当に?」


 驚きを隠せないシル。そりゃそうだろう。

 俺だって聞いた時驚いた。


「詳しいことはわからないがクラウドによると魅了魔法(チャーム)に耐性がある者を側にいて、監視はしているから完全な自由でもないらしいがな」

「そうだとしてもあれだけ騒いでおいてお咎め無しというのは、クラリス様が『光の使者』に似ているから?」


 シルの言葉に俺は唖然とした。

 

「よく、知っていたな」

「ごめんなさい。アルフィード様の部屋にあった本。勝手に読んじゃいました」

「成る程。そういうことか」    


 誰も興味を示さない本をシルヴィア嬢は読んだと言うことか。やはりシルヴィア嬢と俺は波長が合う。

 俺は嬉しくて笑みを浮かべた。


「でもクラウド様も大変ですね」


 俺は何でシルがクラウドを心配するのかがわからず、少しだけモヤモヤしながら言葉を探した。

  

「どうして?」


 絞り出した言葉がそれだった。

 めちゃくちゃ機嫌悪そうに聞いてしまったと俺は後悔した。

 シルはそれで俺が怒ったと勘違いしたのか、気まずそうに俺を見る。

  

「婚約解消したのにまたクラリス様の顔を見るわけでしょ?気まずいだろうなって……」


 何だ。そう言うことか。

 シルはクラウドを哀れに思っていただけなのだ。

 それなのに何でか俺は態度を変える事ができない。

 

「それは仕方ないな。元々クラリスを王宮に招き入れたのはあいつだし最後まで責任は果たさなければ示しがつかないだろう」


 シルは「そっか……」と納得した顔をして、「もし、アルフィード様がクラリス様とお会いしてなければすんなりお二人は婚約してたんでしょうね」と呟いた。

 俺はそれに対して「どうだろうな」と答える。

 

「俺とクラウドは友だ。遅かれ早かれクラリス嬢とは顔を会わせなければならない」

「それはそうですけど……」


 そう答える彼女に、俺は言葉遣いを指摘した。

 どうも彼女は『アル』相手なから大丈夫だが、『アルフィード』となるとまだダメらしい。


「もっと慣れてもらないとダメだな」

「そんなあ……」

「俺もシルヴィア嬢と距離が縮む様に頑張るから」


 そう言うとシルは恥ずかしそうに頬を赤らめた。

 やっと手に入れた彼女を手放す気はない。

 何故ならばクラウドに会うときにはシルヴィア嬢は俺の女だとはっきり見せつけるのだ。

 それもあいつが単純馬鹿なのが悪い。人の女に手は出さないとか言ってたくせに、流れた噂を簡単に信じやがって……。

 俺が手に入れたものを簡単に手放す様な男じゃないと知っているだろうに……。

 ふと、シルがクスクス笑う声がした。


「アルフィード様って独占欲強いんですね」


 シルに言われ俺は「え?」と冷や汗を流す。 


「声、出てましたよ」


 シルはちょっと恥ずかしそうに言う。 

 

「でも、いいんです。アルフィード様なら嬉しいですから……」


 それを聞いて俺は席を立ってシルを抱き締めたくなった。けれど彼女は「でも……」と続ける。

 

「私は守られるだけのお姫様役は嫌です。私は、アルフィード様の隣にいたい。貴方の力になりたいんです」


 そうだ。彼女は俺が告白した時に確かにそう言った。そしてそれが彼女が望む形だ。

 抱き締めにいかなくてよかったとホッとした。

  

「なので、演技だとしても婚約破棄だとか、そういうのはもうごめんです」

「あ……。その事はすまなかった」


 根に持たれてる……。

 当然なのだけれど、何でだろう。彼女に弱味を握られた気分だ。


「大丈夫ですよ。私はアルフィード様が好きなので」


 ゴンっ!

  

 俺はおもいっきりテーブルに頭をぶつけた。

 今の『好き』は違う。俺が求めるものじゃない。

 これはただ人に対して『好き』『嫌い』とかの事であり、告白じゃない。

 でもヤバイ。笑顔が可愛い。

 俺の理性が飛びそうになる。

 いや、耐えろ。

 ここで耐えなければ信用がなくなる。


「アル?ちょっと大丈夫!?」


 慌てるシル。 

 『アル』ならば心を開く君。

 早く『アルフィード』に対してもそうなってほしい。

 それが今の俺の最大の力になる。

 6年前のあの日。

 君の強い声を聞いて、初めて触れたあの時に誓った。

 俺は君を絶対に手に入れると。

 まだそこまで到達はできてないけれど、この状況も悪くない。

 二人だけの会話。二人だけの秘密。


「どうしよう、俺幸せ過ぎて死にそう……」

「ええ!?」


 彼女はまだわかっていない。

 傍にいるだけでこんなに俺が幸せになっていることを。

 力になっているということを。

 離さない。離しはしない。

 手に入れた。俺のたった一人の愛すべき人。

 

『前世からの想い人――』

読んで頂きありがとうございます。

近いうちに最初の方の書き方を若干変更予定です。(設定等の変更はありませんし、追加文も考えてはいません。)

あくまで改行等の編集を予定しています。

その変更をしている間はストーリーの更新が少し空くかもしれません。

ご了承ください。

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