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隠しキャラ転生物語  作者: 瀬田 彰
二章
56/122

三つ目の選択肢

閲覧ありがとうございます。

ちょっと時間が遅くなりました。

今回から少し書き方を変更しました。


 聞いたときにおかしいとは思っていた。声だけで人を判別できるはずがないと。

 でもその答えは目の前にあった。

 私の目の前にいる人はどこからどう見ても元のアルフィード様には見えない。

 でも分かる。それは同じ魔法を使うから。


「魔法の共鳴ってやつかしらね」


 私は聞こえないくらい小さな声で呟いた。  


「それで、これからどうなさるおつもりですか?せめて行動内容くらいお伝えください」


 サーガさんが面倒臭そうにアルフィード様に聞いた。

 

「とりあえず、ミート・ブレイクのところに行く。そこで話を聞くつもりだ」

「初対面の人間に色々とペラペラと話してくれますかね?そもそもまだ彼女の意識は目覚めてませんよ?」


 サーガさんが嫌味タラタラでアルフィード様に聞くと「従業員はいるだろう?それにそこは俺の腕次第だな」と彼は笑った。


「それなら私も一緒に行きます」


 それは意識せず自然に出た言葉だった。

 二人とも「え?」という顔をして私を見る。


「だって、ミートさんのところに行かれるんでしょう?それなら(わたくし)が一緒の方がいいと思います。そうすればジェニーやジェフリーは警戒することなく全てを話してくれますわ」


 私の言葉に対してサーガさんは少し怒った雰囲気になる。

  

「シルヴィア様、私は先ほど申し上げましたよね?シルヴィア様とアルフィード様が共に行動するのはよくありませんと…」

「ええ、そうね。つまり、『シルヴィア』でなければいいんでしょう?」


 私はアルフィード様と同じ様に指を鳴らした。

 私の髪の色と目の色が『シル』になっていく。


「まさかとは思いますけど、サーガさんは(わたくし)がシルヴィアの姿と名で庶民に紛れていたとお思いですか?」


 にっこりと微笑むと、サーガさんは口をヒクヒクさせながら「いいえ」と答えた。

 アルフィード様はそれを見てクックッと笑っている。


「まんまとやられたなサーガ」

「全く何なんですか貴方達は……」


 サーガさんはブツブツ文句を言いながら部屋を出ようとする。

 私が止めようとすると、キッと睨まれた。


「まさかその格好のままで行くつもりなのですか?髪や目の色は変えられても、服の色までは変えられないでしょう?着替えをそれぞれ用意しますのでこのまま大人しく(・・・・)ここで(・・・)、お待ち下さい」


 サーガさんは苦々しく言うと勢いよく扉を閉めて出ていった。

 残された私とアルフィード様は顔を見合わせる。


「シルヴィア嬢、今のサーガの顔を見たか?」

「はい、見ました。中々の爽快感ですね」

「だろ?だから一度やるとやめられないんだよ」


 そう言って二人で笑った。

 ひとしきり笑った後アルフィード様は「さてと」と切り出した。


「いくら姿を変えても呼び名がそのままでは意味がない。サーガが戻ってくる間に色々決めようか」

「そうですね。(わたくし)とアルフィード様の関係も決めておかなければいけませんし」

「そこは普通に恋人でいいんじゃないか?」

「へ?」


 驚く私にアルフィード様は「じゃあ、夫婦がいいか?」と笑いながら聞いてきたので私は首を横にブンブンと振った。

 いきなり夫婦とか色々と通り越して逆に怪しすぎる。


「従兄弟という設定はどうですか?丁度似たような髪の色ですし……」


 私の提案にアルフィード様は私をじっと見つめ「シルヴィア嬢はそれでいいのか?」と逆に聞いてきた。

 私は何がいけないのかわからない。

 そんな私を見てアルフィード様は少し残念そうに伸びをした。

 

「シルヴィア嬢は俺が他の女性に声をかけられても気にしないのだな」

「え?」

「仕方がない。シルヴィア嬢がそこまで言うなら……」

「ま、待ってください!」


 慌てる私を見てアルフィード様は「ん?」と驚きの顔をする。

 その顔も格好いいと思うのが少し悔しい。


「何で女の子に声をかけられる前提なんですか?」

「え?だっていつも声をかけられるから?」


 まかさのモテ発言だった。


「俺はシルヴィア嬢が馴れ馴れしく男達に声をかけられる姿は見たくない。だからシルヴィア嬢も同じだと思った。だがシルヴィア嬢は気にしないなら俺は我慢する」


 アルフィード様はそう言いながら「自分の価値観を強要する男は嫌われるからな……」とぶつぶつ呟いたのが聞こえた。

 私はアルフィード様が町中で女性に囲まれるのを想像した。

 それは予想以上に嫌だった。 

 私はアルフィード様の服の端を掴み、小声で言う。

 

 「……、恋人でお願いします」


 恥ずかしい。

 でもただの従兄弟の関係という設定ではそれを回避するのは不可能だ。

 アルフィード様は優しく微笑み私の頭をポンポンと撫でた。

 結局、私達は恋人という設定とし、馴れ初めは互いに一目惚れだと言うことにした。

 正直言って今の私とアルフィード様の関係とあまり変わらない気もする。

 

「そうそう。俺のことは『アル』と呼んでくれ。俺はこの姿の時に『アル・キーヴァー』と名乗っているから」

「わかりました。(わたくし)のことは『シル』でお願いします。『シル・アジャン』です」

「わかった。シル」


 名前を呼ばれて私は胸が高鳴る。何だか恥ずかしくてむず痒い。


「シル。俺の名前も呼んで?」


 優しく囁かれる。

 恥ずかしい……。


「えっと、アル様」

「違う。アルだよ」

「……、アル」

「ん。よくできました」


 私はあまりに恥ずかしくて顔を手で覆った。

 男の人を呼び捨てにするのがこんなにも恥ずかしい事があっただろうか。いや、ない。断固としてない。


「苦い珈琲でもお持ちしましょうか?」


 突然声がして私とアルフィード様……、もとい、アルは驚いて後ろへと下がる。


 「全く、人が戻って来たのも気がつかずイチャイチャと鬱陶しい」

「悔しかったらお前もしたらいいだろ?」


 アルが勝ち誇った顔をしながら言う。

 けれどサーガさんは引き下がることはなかった。


「生憎、私達の方があなた方よりも先に進んでいますのでご心配なく」


 よくわからないけど、アルが悔しそうに舌打ちをしたってことは負けたんだろう。


「それはさておき、こちらがその服です。どうぞお着替えください」


 そう言って私達は服を受け取った。

 私の服は見覚えがあった。

 『シル』の服だ。それに鞄もある。


「サーガさん、これは……」

「マリエッタから預かってきました。自分のことは心配いらないから気をつけて行って来てください。と言っていましたよ」


 私は服と鞄を抱き抱えた。


「マリエッタにありがとう。わかりました。とお伝えください」

「かしこまりました」


 こうして私シルヴィアと、アルとなったアルフィード様は町へと行くことになった。

 この三つ目の選択が波乱を呼ぶとも知らずに――。 

読んでいただきありがとうございます。

見にくい、見易い色々あるかと思いますが、ご了承ください。


次からは町へと移動します。

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