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隠しキャラ転生物語  作者: 瀬田 彰
二章
52/122

待つのってつらい

閲覧ありがとうございます。

楽しんで頂ければと思います。


『俺の部屋に居ててくれ。部屋の物は自由に使って構わない。食事や服は適度に送るから』


そう言って早一週間という日にちが過ぎていた。


「暇……」


私はベッドの上に横になった。

この部屋は寝室といいながらも立派なホテルの一室のような部屋だった。シャワーだってトイレだって全部揃っている。


「流石滞在城というべきかしら?でもこれは暇よね……」


アルフィード様は確かに部屋には一度も来ていない。

服も食べ物も適度に魔法で送られてくる。

でもそれ以外はない。

部屋の外に出てみようかと何度か思ったけれど、人の気配は常にあるので止めた。

部屋の向こうにいるのがアルフィード様がどうかもわからないのに飛び出していくわけにはいかない。

そこまでじゃじゃ馬な年齢でもない。


「それにしても静かね……」


魔法で音を遮断しているのだろう。気配はするけど外の音は何も聞こえない。

そのせいで情報が入ってこない。

マリエッタは大丈夫だろうか。アンリ様は無事にメイドに戻ったのだろうか?

リリィは?執事長の件はどうなったんだろう。

私は一人で悶々とするしかなかった。


「本も飽きたなあ……」


そう言って近くに置いていた本をペラペラめくる。

アルフィード様の趣味なのか、この部屋には本が沢山置いてあった。

政治、歴史、童話から魔法など、ジャンルも様々だ。

図書館で本を漁っていた私にとってこれらの本は苦ではなかった。

寧ろいい情報収集となったくらいだ。

ここ、スピティカル国では『光の使者』が強く根付いている。

それは前世の知識ではなく今の知識。

因みに『光の使者』とは世界を作った女神デゥエスの遣い人のことだ。

女神デゥエス。この世界は国に関係なくこの女神(デゥエス)様を崇めている。

そしてここスピティカル国は『光の使者』が降り立った初めての大地とも言われている。


「信仰が厚いとは聞いていたけれどここまでとは思わなかったわ」


私は本を閉じた。

今見ていた本は『光の使者』がいかに素晴らしいかを綴ったものだった。

『シル』としてこの国に一年半居たけれど『光の使者』の話など聞いたことはない。

でもスピティカルの人間は誰もが『光の使者』を崇めているらしい。

でもそれがわからなったのはそれを国外の人間に強要はしてはいけないと言う暗黙の了解があるからだそうだ。もし強要しようものなら『光の使者』の品格を下げることとなり、その者はスピティカル国の人間ではないというレッテルを貼られる。

他国の人間の私にとってそれは何とも不思議な感覚だった。


「でも一つ謎が解けたわね」


私は体を起こして再び本を手に取る。

『光の使者』の特徴。それらがクラリス様に当てはまっている。


「だからクラリス様を支持する人間が多いんだわ」


スピティカル国の人間にとって『光の使者』は絶対なる存在。

クラリス様が本当に『光の使者』かどうかは別として、彼女をそれに仕立てようとする人間はいるだろう。

それにクラリス様は主人公(ヒロイン)。そうでなくても何からのチート能力を持つ可能性は十分高い。


「それ以上にアルフィード様の魔力の方がチートっぽいけどね」


私はふふふと笑った。


「スピティカル国王家の先祖は『光の使者』と言われていると書いてあったからクラウド様とクラリス様を結びつけようとした理由はそこかしら?」


『光の使者』と今の王家が結ばれればスピティカル国は安泰だろう。


「でもクラリス様クラウド様との婚約の話無くなっちゃったわよね。どうするんだろう」


私は唸りながら本を棚に戻した。

ふと気配を感じ振り向くとテーブルに食事が置いてあった。


「相変わらずすごい魔法ね。時間もぴったりだわ」


私はそう呟きながら席に着いた。


「運動してないからお腹もあまり空かないのよね。増えるのは独り言ばっかりだわ」


そう言いながらパンを口に運ぶ。

別に不味くはないけれど、何となく物足りない。

ミートさんのパンが懐かしい。


「そう言えばミートさんクラリス様にパン食べてもらえたのかな?」


あの日は夜は舞踏会だったし、朝か昼に振る舞ったんだろう。

もしかしたら皆に気に入られて王宮の専属パン職人とかになってるかもしれない。

マックスやジェフリー、ジェニーは元気かな。

まさかまだ私がスピティカル国にいるなんて思ってなどいないだろうし、知ったら驚くに違いない。

正直今まで色んな国に『シル』として訪れたけど、一番楽しかったのはここだ。

だからできれば今回の出来事でジャイル国とスピティカル国が険悪にならないことを祈るばかりだ。

ジャイル国は表向きは他国に比べ一番安定していそうに見えるけれど、内情はギリギリだ。


「あのバカ国王にバカ王子。お妃様とアルフィード様がいなければ今頃ジャイル国はとっくの昔に滅亡してるわ」


私はお皿の上のお肉にフォークをグサッと突き刺した。


「そう言えばお父様に何も連絡していないけれど大丈夫なのかしら?」


勝手にアルフィード様の婚約を受け音信不通とか、あの娘ラブな父親は発狂しているかもしれない。


「でも元は私に確認もせずお父様が勝手にアルフィード様に返事を出したわけだし文句は言えないわよね」


お父様が許可をしなければ私はアルフィード様と会うことも婚約の話を受けることも、こんなところにいることもなかったのだ。


「全ての元凶はお父様にありね」


私はお肉を口の中に頬張った。

食事を終えると自然に食器が消える。

見られてる訳ではないだろうけど、この絶妙なタイミングは怖いとしか言いようがなかった。

ただ、そのカラクリは次の食事ではっきりした。

お皿が空になったら回収するように魔法がかかっていたのだ。


「古代魔法ってすごいわ」


私はただただ感心した。

そんな事がありながら更に一週間私は一人で過ごした。

そろそろ耐えられなくなった時、事態が動いた。

この部屋に入ってから外の声は一切聞こえなかったのに、アルフィード様が怒る声が聞こえてきたのだ。

読んで頂き、ありがとうございます。

今回はシルヴィア一人しかいなかったので書いてて少し寂しかったです。

次はアルフィード達が出てきます。

良ければまたお付き合いください。

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