アルフィード様は秘密主義
閲覧ありがとうございます。
今回は早めの更新ができました。
サーガさんは大きなため息をついた。そしてとんでもなく鋭い眼光をアルフィード様に向ける。
普通でも目付きが悪いのに睨んだら更に目付きが悪い。
正直、怖すぎる。
「アルフィード様、アンリの事はお話してなかったのですか?」
「……、悪い。忘れてた」
アルフィード様は慣れているのか恐れることなく普通に返事をした。
いやいやアルフィード様、サーガさんから殺気が飛んでますよ。
「アルフィード様。貴方はシルヴィア様に一体何をお伝えしたのですか?」
駄目だ。サーガさんの目付きが怖すぎて、もう直視できない。
私はサーガさんから目線を外した。
「お前の非道の行動の謝罪と婚約解消についての説明。黒薔薇のカードとリュークのことだな」
アルフィード様はスラスラと答える。
サーガさんはプルプル震えだした。
「今の滞在城が異常なことは?」
「言ってない」
「髭のことは?」
「言ってない」
髭って誰?って思ったけどアルフィード様はサーガさんへの返事をした後にこそっと「少し前の話だけどサーガは執事長を『髭』って呼ぶことにしたそうなんだ」と耳打ちしてくれた。そんなアルフィード様を見て随分と余裕で素晴らしいと尊敬する気持ちを通り越して最早羨ましいと私は思った。
「では、アンリのことは?」
「サーガ、聞くだけ無駄だって。どう見ても言ってるわけないじゃん」
アンリ様が呆れ顔でサーガさんの肩に手を乗せて言う。
サーガさんはプルプルしたまま眼鏡に手を当てた。
怒りを抑えているのだろう。
「ほんっとうに毎回毎回、私がどれだけ苦労していると思っているのですか……」
「その苦労のせいでお前は隙を作ったと言いたいのか?」
アルフィード様の意味深な発言と共にブチっと何かがキレた様な音がした。
「アルフィード様。少しよろしいですか?別室でお話をする必要があるかと思います」
「いいだろう。付き合ってやる。シルヴィア嬢はマリエッタとアンリとお茶でも飲んで待っててくれ」
そう言ってアルフィード様は笑顔でサーガさんに引っ張られて寝室へと連れていかれる。
その様子を私とマリエッタはポカンと見ていた。
アンリ様は見慣れているのか動じることなく、むしろアルフィード様に言われる前にお茶とビスケットを用意して持ってきていた。
そのままソファーに腰を降ろしたアンリ様はマリエッタにも座るよう促しビスケットに手を伸ばす。
「ほんっとアルは性格悪いよね。さっきもああやってサーガをわざと怒らせて俺達から遠ざけたんだから」
「何故そんなことを?」
「知らない。昔からアルは自分で勝手に決めて勝手に動くからね」
何故だろう私の事じゃないのに胸が痛い。
「俺とサーガはよく意見がぶつかるんだけど、アルの勝手な行動に対してだけは意見が一致するんだよね。大体アルは一人で何でもやり過ぎるんだよ!」
「アンリ様!そのお気持ち痛いほどわかりますわ!」
マリエッタがズイっと、迫ってきて私は驚いた。
危なくお茶を溢すところだったわ。
「私のお嬢様もアルフィード様と同様、勝手に決めて勝手に行動してしまうんです」
相変わらずマリエッタの主張が凄い……。
アンリ様はそれを聞いて若干顔をひきつらせ「流石おっさんの娘なわけだ」と呟いた。
「そっか!そう言えばアルもおっさんに教育されたからああなったのか。それなら納得できるかも……」
何やら一人で解決した顔をするアンリ様。
『おっさん』って、話の流れからまさかお父様の事?
お父様をおっさん呼ばわりとは、アンリ様も中々凄い人なのかもしれない。
ううん、アルフィード様の御友人だからそれは当然かもしれない……。
「それで、ヴィーちゃんは実際のところどうなの?」
「どう……とは?」
「さっきサーガが言ってたこと」
サーガさんが言っていたこととは滞在城と執事長のことかしら?
私は首を横に振った。
「アルフィード様の仰った通りです。私は他の事は聞いておりません」
「女神に誓って?」
「はい。女神に誓って」
アンリ様は私をじっと見つめて息を吐き、ソファーにもたれかかった。
その姿はまさしく男性そのものなのに、メイド姿というのが何とも言えない。
とりあえず足を閉じてほしい。
「アルが話してない事を俺が勝手に話すわけにはいかないよな」
「そうなのですか?」
てっきりアンリ様から話してくれるんだと思っていたので少し拍子抜けしてしまう。
「言ったろ?あいつは勝手に決めて勝手に行動するって。俺がヴィーちゃんに話さなくなるのもアルの計算のうちさ」
「でもこっそり話したらバレないのでは?」
「知ったらヴィーちゃんも勝手に行動するでしょ?」
アンリ様に言われて私は一瞬ドキリとする。
私の表情を見てアンリ様はケラケラ笑った。
「ヴィーちゃんは分かりやす過ぎだね」
「そうですか?知らないことを知る為の探求心による行動は大事だと思いますけど?」
にっこり笑って返すとアンリ様は口に運びかけていたビスケットをポロリと落とした。
「アンリ様?」
「ヴぃーちゃん、その笑顔超怖い……」
「はい?」
「おっさんに超似てるってこと……」
何の事?私が疑問に思いマリエッタを見ると、にっこりと笑顔を返された。
「お嬢様、ご自覚ありませんでしたか?お嬢様の笑顔は時折旦那様が威圧するときの笑顔にそっくりなんですよ」
知らなかった……。
もしかしてサーガさんと話をしてる時にサーガさんの顔色が変わったのはそのせい?
だとしたら今後気を付けなければいけない。
何故ならお父様の満面な笑みは超が付くほど怖いのだ。
「そ、そう言えばヴィーちゃんのイメージって初めて滞在城に来たときと随分違うけど、魔法か何か使ってるの?」
必死に話題を変えようとするアンリ様に私は再びにっこりと笑い、マリエッタに目配せをした。
それを見たマリエッタは頷いてどこからか例のベールを出してくる。
「理由はこちらですわ」
そう答えてからマリエッタはアンリ様に『病弱令嬢』のタネを説明をし始めた。
マリエッタの話しを聞いたアンリ様は呆れるやら感心するやらと忙しく表情を変えた。
そしてアルフィード様とサーガさんが戻るまで他愛ない雑談をしながら私達は時間を潰すこととなる。
何故なら、二人が戻ってきたのはその後一時間くらい経ってからだったのだ――。
読んでいただきありがとうございます。
こういう回は個人的に好きです。
次もよければよろしくお願いします。
追記
こちらの操作ミスで完結と一度出してしまいました。
すぐに訂正しましたが、もし完結と出ていてもまだ続きます。
ご迷惑をおかけしました。
これからもよろしくお願いいたします。




