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隠しキャラ転生物語  作者: 瀬田 彰
二章
45/122

自己紹介から始めよう!

閲覧ありがとうございます!

楽しんでいただければと思います。


「じゃあまずは自己紹介をしよう!名前、年齢、呼び名と、それから一言何か言う感じでさ」


何故今さら自己紹介?しかも年齢とか呼び名とかいる?

アンリ様の言葉にこの場にいる全員が呆然とし、固まった。

その沈黙を破るようにアルフィード様はため息をつく。それはまるで考えていても仕方がないといわんばかりだった。


「アルフィード・キルス・フォルゼリア、年は21。呼び名は好きに呼べばいい。以上だ」

「仕方がありませんね。私はサーガスト・クラウン。年は28です。アルフィード様の側近をしています。気軽にサーガとお呼びください」

「さあ、次はシルヴィア嬢の番だよ」


アンリ様は私を見てにっこりと笑った。

今更慌てても仕方がない。

メイドのアンリがまさかアルフィード様の友人でしかも男性だったなんてまだ信じられないけど、マリエッタが嘘をつくわけもないしアルフィード様も否定していないのだからここは大人しく従うしかない。


(わたくし)はシルヴィア・キー・グレイスです。年は18で、呼び名は特に拘ったものはありません。どうぞ呼びやすい様にお呼びください」

「じゃあ、シルヴィアっていう名前だから、ヴィーちゃんね」


アンリ様が待ってました!と言わんばかりに発言する。

勿論「嫌です」とは言えない。

今自由に呼んでいいって言ったのはこちらだし、変な呼び名じゃないからだ。


「どうぞ、アンリ様のご自由に」

「やった!」


本気で嬉しそうな姿を見て流石攻略キャラクターの一人だと関心した。

目があってしまったので、誤魔化す為に社交辞令の笑顔をアンリ様に向ける。

するとアンリ様は私の手を取り軽く口づけをした。


「よろしくね、ヴィーちゃん!」


うわ、アンリ様って見た目以上に軽いかも……。

私がちょっと引き気味に笑っているとパンと誰かに手を払われる。


「アンリ、近い」


手を払ったのはアルフィード様だった。

アンリ様は手を擦りながらアルフィード様に冷たい目線を送る。


「不機嫌みたいだけど、払うことないんじゃない?」

「悪いな、目障りな虫がついていたんだ」

「ふーん、虫ねえ……」


険悪な雰囲気が漂う中、マリエッタがわざとらしい咳払いをした。

二人の視線がマリエッタに注がれる。


「お取り込み中申し訳ございません。わたくしの自己紹介をしてもよろしいでしょうか?」


威圧的に微笑むマリエッタに二人は無言で頷いた。

この中で一番怖いのは恐らくマリエッタだ。


「マリエッタ・グレード。25歳です。お嬢様の侍女をしております。それから……」


マリエッタの周りがヒュウーっと寒くなる。


「先ほどは()という事で大目に見ますが、今後は不用意にお嬢様に触れないようにお願いいたします」

「ええ、何で俺だけが悪いみたいになってるの?俺、お姉さんに何もしてないんだけどー?」

「そういう軽いところがダメなんですよ……」


アンリ様の言葉にマリエッタは眉毛をピクピク震わせる。

アンリ様は誤魔化す様に手を再び叩いた。

 

「さ、全員終わったし最後は言い出しっぺの俺の番だね!」


アンリ様はマリエッタに敵わない。その場にいる誰もがそう思った。


「俺はアンリ・ジャンク。年は25歳!こんな格好だけどれっきとした男だよ。アンリって気軽に呼んでね!」


パチンとウインクをし、私を見る。


「そして、可愛い彼女絶賛募集中!」


……、気まずい。

どのくらい気まずいかというと、漫才で自信満々に出したネタが滑ったくらいに気まずい。


「アンリ、その格好でそれはどうかと思いますよ?」


サーガさんが哀れそうな顔でアンリ様を見て肩に手を置いた。

そうよね、メイド姿の女性にしか見えない人から「彼女絶賛募集中!」と言われても困るだけだ。

それにしてもアンリ様とサーガさんのやり取りを見てると、どことなくアンリ様の位置がマリエッタに被る。もしかしたらアンリ様がマリエッタと同い年だからかもしれない。

私がそんな事を考えた時、違和感を感じた。

あれ?私、今何を思った?

マリエッタとアンリ様が同い年?

同い年……。と言うことは……。

私はマリエッタの顔を見た。

マリエッタは私の視線に気がついて「どうかしましたか?」とにっこりと笑う。

私の顔から血の気が引いた。


「マリエッタとアンリ様が同い年!?嘘!信じられない!!」


気がついたら叫んでいた。

皆が驚いて私の方を見るのがわかる。

勿論マリエッタも驚いている。


「お嬢様、今何と……?」

「ア、アンリ様と貴女が同い年って……」

「まあ、お嬢様ったらご冗談がお上手ですね」


いやいや、こんな時に冗談を言う私じゃないから。


「あ、そうか!お姉さんと俺は同い年なのか!」


アンリ様の言葉にピシッとマリエッタが固まったのがわかった。

それを見たアルフィード様とサーガさんはアンリ様を呆れた顔で見る。


「アンリ、お前この反応が見たくて自己紹介をしようと言ったのか?」

「何て悪趣味な……」

「んなわけないでしょ!流石にこのリアクションは俺でも傷つくからね!」


それはしょうがない。

最早これは本当に詐欺レベルと言ってもいい。

年齢を十代と詐称したって誰も疑わない。むしろ25歳と言うのが信じられない。


「25歳で女装趣味……、変態ですね」

「お姉さん、そこ違うから!これは変装!へ・ん・そ・う!」

「いや、アンリは変態でしょう?」

「ちっがーう!サーガそこは否定して!」


私は三人のやり取りを見つつ、改めてアンリ様をじっと見た。

年齢もだけど、姿だって男性と言われてもピンとこない。


「アンリ様は本当に男なのかしら?」

「ぶっ!」


私の呟きが聞こえたようでアルフィード様が吹き出した。


「ひどっ!ヴィーちゃんが一番酷い!!」

 

あら。アンリ様にも聞こえてたのね……。

 

「だってその姿があまりにも違和感ありませんし……」


そう言うとサーガさんが眼鏡を光らせた。


「流石シルヴィア様。突っ込む所が違いますね。私も見習わなければ」


サーガさんの言葉にマリエッタは「当然です」と鼻高く答える。

ああ二人ともどや顔してるけどそんな事をしたらアンリ様が拗ね……。


「もう!いいよ!俺拗ねちゃうからね!」


ほら拗ねた……。


「こうなったらヴィーちゃんに『アンリくん♡』って可愛く呼ばれない限り俺は会議に参加しないから!」

「……、はい?」


何でそうなるの?

私の発言が原因だから?

でもそれって私だけのせい?

 

「何を勝手な事を言ってるんですか。真面目にしなさい」

「俺はいつでも真面目だよ!それに俺だってヴィーちゃんって呼んでるんだから、俺を『アンリくん♡』って呼んでくれたっていいじゃん!」


私は顔をひきつかせた。

いくらなんでもそれは言えない。

アンリ様がアルフィード様の友人だからってのもあるけど、それ以上に私とアンリ様はそこまで親しい仲じゃない。

でもこのまま話が脱線するのは良くないし……。

私が悩んでいると頭をポンと優しく撫でられる。

顔を上げるとアルフィード様が私を見ていた。

その顔に胸がドキンと鳴る。


「大丈夫だ」


たった一言。

それだけなのにすごく安心するのは何でだろう。

 

「うわ、アル!何その点数稼ぎ!ずるい!」


アンリ様の言葉にアルフィード様の顔が険しくなった。

 

「シルヴィア嬢は俺の婚約者だ。お前の好き勝手はさせない」

「え?別れたんじゃないの?」

「そんなもの、嘘に決まっているだろう」


アンリ様は「ふーん……」と疑いの眼差しをするけれど、サーガさんが「アルフィード様の仰る通りです」と肯定する。

更には眼鏡がこうなると思っていましたと語っている。


「ねえヴィーちゃん、俺に乗り換える気はない?」

「はい?」

「だって、アルは不器用だし、言葉足らずだし、これからもきっとヴィーちゃんを傷つけるよ?」


アンリ様の言葉にアルフィード様は舌打ちをした。多分昼間の事を気にしてるんだろう。

そして今まで黙っていたサーガさんが頷く。


「確かに、今後も同じことが起こらないとは断言できませんね」


サーガさん、そこはアルフィード様の味方をするべきでは?


「でしょ?その点俺は絶対にヴィーちゃんを傷つけない。俺はこう見えて想えば一途だからね♡」


そう言ってアンリ様はウインクをしながら私の手を握った。

マリエッタにすぐ叩かれるけど、アンリ様は私から視線を外さない。


「それにさ、俺に乗り換えたら俺が正真正銘のいい()だってしっかりみせてあげるよ?」


今度は触れずにとびきり素敵な笑顔を見せてくれた。けれど残念かな、私の心はときめかなかった。綺麗とは思ったけどね。

別にアンリ様が嫌いというわけじゃない。でも、ダメだと私の心が叫んでいる。

この感じは体験したことがある。そう、前世で……。


「アンリ様、申し訳ございません。(わたくし)はアンリ様の気持ちに答えることはできませんわ」

「えー、どうして?アルの婚約者だから?」

「ええ、その通りですわ」


そういってアルフィード様の腕に手を回した。

アルフィード様がビクッと反応する。

思わずやり過ぎたかしらとアルフィード様を見た。

するとアルフィード様は頬と耳が真っ赤になっていた。


「アルフィード様、もしかして照れてます?」

「……、悪いか?」


ばつが悪そうに言うアルフィード様。


「言うのは簡単だが、言われるのは来るものがあるな……」


私はアルフィード様の顔を見て自分も熱くなる。

そう、今初めて自らアルフィード様の婚約者だと宣言したのだ。

これがどういう意味なのかわからない年齢じゃない。

つまり、合意の上の婚約。

場所が場所ならトントン拍子に結婚式まで到達してしまう。


会議(ミーティング)、再開しようか……」


アンリ様がそう言ってから「これじゃ俺ただの当て馬じゃん」と呟いたのを私は聞き逃さなかった。

読んで頂きありがとうございました。

また、ブックマークもありがとうございます。

とても励みになります!

次も良ければまたよろしくお願いします!

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