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隠しキャラ転生物語  作者: 瀬田 彰
二章
44/122

アンリ・ジャンク

閲覧ありがとうございます。

※今回表現がちょっと悪いところがあるかもしれません。苦手な方は閲覧をご遠慮ください。


「アル!大変だよ!さっきの爆発はシルヴィア嬢の部屋だった!……って、あれ?」


勢いよく入ってきたのは誰だろう。アルフィード様がもたれてるからよく見えない。

でもアルフィード様の事を『アル』って呼んだと言うことは仲がいい人なのだろう。

そんな事を考えていると、アルフィード様の頭ががゆっくりと私から離れた。

そしてアルフィード様が離れたから相手の姿がよく見えた。


「メイド……?」


私の胸がざわつく。

メイドがアルフィード様を『アル』って呼んだということは、二人の関係は普通じゃないんじゃない?

何だろう、凄くモヤモヤする。


「あ、あれ?もしかして()、お邪魔しちゃった?」


お、俺?!

何?この人は前世で聞いた僕っ()?あれ?でも『俺』って言うことは違う?

私は頭の処理が追いつかずよろけた。

マリエッタが「お嬢様、お気を確かに」と私を支えてくれたのは凄く助かった。


「アンリ、さっきも言ったよな?身をわきまえろと……」


アルフィード様が低い声でメイドを呼ぶ。

メイドはアンリと言うらしい。

アンリ?

どこかで聞いたことがある名前。どこだったかしら?


「あ、いや。ですからこれは……、オホホホ……」

「誤魔化すな!」


アルフィード様がメイドに向かって氷の魔法を放つ。

 

「ひゃぁ!」


と声をあげながらも、躱す姿はまるで妖精のようにステップがいい。

しかし、アルフィード様もゆっくりとメイドに近づいている。

メイドが完全に優勢というわけではないらしい。


「誰が避けていいと言った?」

「だって、当たったら死ぬじゃん!」

「死ね……」

「キャー!恐ろしい子!!誰か助けてー!」


そう言ったが早いか、メイドは宙に舞い一回転して私の目の前に着地した。まるで体操選手だ。

メイドは私の手を取り、にっこりと微笑む。


「この城内でお会いするのは二度目(・・・)ですわね」

「あ、貴女は一体誰?」


私の言葉にメイドは目をぱちくりさせて私をまじまじと見た。

何だろう、この人少し苦手かもしれない。

 

「改めて、アンリ・ジャンクと申します。シルヴィア様がこんなに可愛らしい姿と声をしていた方なんて、知りませんでしたわ」


その言葉に私はベールをしていないことに今頃気がついた。

しまった!

完全に油断していてすっかり忘れてた!


「うん、予想以上に可愛いし好みかも。以後、お見知り置きを、愛しのお嬢様♡」


そう言って私の手に口づけをしようとした時だった。


「今すぐ私のお嬢様からその汚い手をお離しください」


マリエッタの殺気と共に風の気配を感じて私は手を引っ込める。

間一髪、それは通り抜ける。もし手を引っ込めてなければ今頃床にどちらかの手が落ちていたかもしれない。


「何?!これ、ヤバくない?」


焦るアンリに「ヤバイのは貴女です」と言う目で見ると、手を振っていた。


「いやいや、これ一歩間違えたらお嬢様を傷つけちゃうからね?危ないからね?」

「心配無用です。私のお嬢様はこのくらいの魔法などいとも簡単に避けます」


ううん、マリエッタ。実際避けたけど、ヤバかったからね。

私は心の中で突っ込んだ。


「それはそれは、とんだ失礼を致しました」


そう言ってアンリが肩を透かす。


「執事長より貴女を紹介された時、何処と無く気にくわない気がしたのは私の気のせいではなかったようですね」


マリエッタのその言葉で思い出した。そうだ。この人初めて滞在城に来たときに執事長から紹介を受けた人だわ!

でもそれにしても何だかイメージが変わりすぎじゃない?


「覚えておいてください。お嬢様に触れていのはご家族様と侍女であるこのわたくしとアルフィード様だけです」


堂々とマリエッタは言ってるけど、貴女さっきアルフィード様を見損なったって頬を叩いてなかった?

というか、貴女はアルフィード様を認めるの?認めないの?

マリエッタの心は難しいわね。


「おやおや、お嬢様の侍女さんは随分と怖いですこと」

「お前が調子に乗ってるからだろ!」


アルフィード様がメイドにチョップを下す。

あー、あれは痛そう。


「ちょっとアル!親友に酷くない?!」

「誰が親友だ。それにどちらかというとお前は悪友だ」

「ひっど!!」


そんなやり取りを見ていると、マリエッタが「まさか……」と呟いた。


「あれ?もしかして侍女さんは俺のこと気がついちゃった?ま、俺も有名だからね〜」

「始めにお名前を聞いた時点で気つくべきでした」


マリエッタは冷や汗をかいながら一歩下がり頭を下げる。

マリエッタがこんなことをするなんて、このメイド、アンリは何者なの?


「マリエッタ、貴女この人を何か知ってるの?」

「直接は知りませんが、旦那様より聞いたことがございます。アルフィード様のご友人で、とても優秀で嘘が得意な方がいると。まさか女装がお得意とは知りませんでしたが……」

「嘘が得意って、宰相さんも厳しいなあ。てか、別に女装が趣味なわけじゃないよ。俺は何を着ても似合うだけ♡」


そう言ってケラケラと笑った。

女装と言うことは、やっぱりこの人は男ってことだ。

あれ?男と言うことはもしかしてこの人も……。

私はメイドの顔をよく見てみる。

緑の髪に緑の瞳。確かそんな特徴のキャラクターいたような……。

そうだ!この人もその一人だわ!

そう思ったら誰かに肩を掴まれ、引き寄せられた。

驚いて顔を上げると、アルフィード様が複雑そうな顔で私を見ていた。

あれ?何でそんな顔をしているの?


「シルヴィア嬢、熱心にアンリを見ているがアンリが好みなのか?」

 

はい?

私はアルフィード様の言われた事が分からず固まる。

どういうこと?どっからそうなったの?


「じっと、見てるから……」


アルフィード様が少し拗ねた様な顔をしたのを見て、私は「あ!」と思った。

そうか、アルフィード様は私があの人を観察してたのを見惚れていると勘違いしてたのね。

どうしよう。まさかあの人も攻略キャラクターかもしれないから見てたなんて言えないし……。

でもアルフィード様に誤解はされたくないしなあ……。


「アルフィード様、心配は無用ですわ。はっきりと申し上げて、彼は全く私の好みではございません。物珍しかったので見てただけです!」


そう言うとアルフィード様はホッとしたように笑う。

思わずドキッとしてしまったのは仕方がない。

アンリ……、ううんアルフィード様のお友達なら呼び捨てはまずいよね。一方アンリ様は「何?俺は見せ物か何かなの?」と悲しそうに呟いている。


「そうか、いくら俺でもメイドの姿に扮するのは無理だからな……」


えっと……、アルフィード様のメイド姿はあまり見たくないかな?どちらかというと……。


「アルフィード様でしたら、メイド姿より執事の姿の方が断然似合うし、格好いいと思いますよ」

「え?執事?」

「はい!アルフィード様は背筋がピンとしてますし、顔立ちも綺麗ですし!」


そう言うと、アルフィード様は少し頬を赤らめながら考え始めた。

あれ?何でそんな反応?


「シルヴィア嬢はそういうのが好き、なのか?」


ちょっと困ったような、嬉しそうな顔で『好き』って、見られても困ります!

えっとこの場合、好きって言ったらしてくれるの?そういうイベント?

だとしたら見たい!絶対に格好いい!

でも、でも……。

 

「アルフィード様の執事姿は目立ち過ぎるので、他の人に見せるのは絶対に駄目です!!」


私がそう言うと、そこにいた全員がポカーンとして固まった。

けれどアルフィード様はちょっと間を開けてからはにかむ。


「そうか、それなら俺とシルヴィア嬢、二人っきり(・・・・・)の時に存分に楽しもうな?」


アルフィード様の言葉に私は恥ずかしくなって顔を手で覆う。

本当にアルフィード様を前にするとダメだ。何かペースが乱れてしまう。

そしてそれと同時に今まで作り上げてきた貴族令嬢としての私のイメージがガラガラと崩れていく音が聞こえた気がした。


「ちぇー。何だよ見せつけちゃってさー」

「お嬢様、本当にアルフィード様をお慕いしているのですね……」


完全に蚊帳の外になっていた二人は息を吐いた。


「折角だし、美人の侍女さんは俺にしとかない?」


そう言ってマリエッタの手を取る。


スパーン!


いい音が部屋に響き渡った。


「ったーー!」


アンリ様は頭を押さえてしゃがみ込んだ。

アンリ様の頭を叩いたのはサーガさんだ。


「全く、油断も隙もないとはこのことですね」


サーガさんの眼鏡が物凄く光っている。

相当お怒りのご様子だ。

私とアルフィード様は乾いた笑いをする。


「あの、アルフィード様」

「何だい、シルヴィア嬢」

「サーガさん、いつの間にここに来られたのでしょうか?」

「奇遇だな、俺も同じ事を疑問に思っていた」

「奇遇ですね」

「奇遇だな」


私とアルフィード様はにっこりと笑いあった。

そんな私達の間にアンリ様が割り込んでくる。


「もうっ!こうなったらさ、意見交換しよ!」

「意見交換?」


サーガさんが眼鏡に手を当てながら聞き返した。

アンリ様は「そう!」といいながらウインクをする。


「折角揃ったんだから、一回皆の情報開示と洒落こもうじゃない?ね?アル!」

「まあ、いいだろう。俺も今からシルヴィア嬢と話をするつもりだったからな」

 

そう言ってアルフィード様は私をソファーへと優しく導いてくれる。


「サーガ、首尾は?」

「はい。既に整っております。念のため部屋の外にも騎士を数名配置しております」

「わかった。では会議(ミーティング)を始めようか」


こうして私達の会議(ミーティング)が始まった。

読んで頂きありがとうございました。

何だか若干ギャグ回になってる気もしますが、気にせず読んでいただけると有難いです。

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