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隠しキャラ転生物語  作者: 瀬田 彰
二章
41/122

危険な訪問者

毎回閲覧ありがとうございます。

ブックマークもありがとうございます。

今回もシルヴィア視点です。


「お嬢様、今悲鳴みたいなのが聞こえましたが……」


マリエッタが部屋から箒と塵取りを持って慌てて出てきた。

どうやらさっきの悲鳴は私の幻聴ではなかったらしい。


「どうなさりますか?」

「どうって?」


私が首を傾げると、マリエッタは呆れた顔になる。


「何か起きたのなら逃げた方がいいのではないかと思いまして、というか普通のご令嬢はもっと慌てふためくものです」

「あら?私が普通の令嬢の様に振る舞ったら、貴女はその武器(・・)で私を助けてくれるわけね?」


私が笑みを浮かべながらマリエッタの箒と塵取りを指差した。

 

「……、三人くらいなら倒せますよ」


真顔で答えるマリエッタに私はさらに笑う。

そして手のひらをヒラヒラさせた。


「アルフィード様が出るなと言ったんですもの。勝手に出るのはよくないわ。それに……」

「それに?」

()の私に何かできる?」

「でしたら……」


マリエッタが何かをいいかけたけど私は人差し指を口の前で立てる。

マリエッタは少し目を見開いて扉の方を見た。


「大丈夫。まだ(・・)誰もいないわ」


私の言葉にマリエッタは胸を撫で下ろしたが、すぐに私の方をキッと睨む。


「お嬢様、誰もいないのならば別にいいじゃないですか」

「でも念のためっていうのは大事なのよ。余計なことは言わない方がいいわ」


私があっけらかんと答えるとマリエッタは私を睨んだ。

そう、独り言と会話は声の大きさが違う。

他の会話はともかく、『シル』のことだけは言わない方がいい。そう感じていた。


「実際、どこかの誰かさんは私を監視しようとしてたでしょ?」


私の言葉にそれが誰だか察したマリエッタは私を睨むのを止めた。

そう、この城に来たときに喧嘩を売ってきたあの人の事だ。

勿論そのことはアルフィード様も書いていた。

『今の執事長は普通じゃない。気を付けるように』と……。


「アルフィード様って意外と過保護よね……」

「私は嫌いです」


マリエッタの答えに私は驚いて彼女を見る。


「アルフィード様はお嬢様を泣かせました。絶対に許せません」

「マリエッタ……」

「ですが、悪い人間ではないと言うこともわかります。あの方は不器用ですが、お嬢様を確かに愛しておられます」


なるほど、マリエッタは今葛藤してるわけね。

別に貴女が悩むことじゃないと思うんだけど……。


「まあ、何はともあれアルフィード様の出方を待ちましょう」


そう言って私はアルフィード様からの書類を燃やした。


「お、お嬢様!?」

「いいのよ。内容は全部覚えたし、こんなもの他の人間が見たら面倒なだけだわ」


私がそう言うとマリエッタはすごく複雑そうな顔をした。

何?何か文句あるの?

そして私に近づき、小声で告げる。


「あの、申し上げにくいのですが、それを燃やしてしまったら正式に婚約解消ができないのですが……」

「どういうこと?」


マリエッタの言っている意味がわからず私は慌てる。


「私がサーガから受け取ったときに内容を読んで確認したんです。お嬢様の不利になることがないかどうかを見るために」

「そ、それで?」

「問題はありませんでした。最後の一文を除いて」

「最後の一文?」

「はい。『以上この婚約に関して双方は解消したと見なす。ただし、もし()の手で用紙自体が消滅された場合、全てのことを白紙に戻し婚約解消はなかった事とする。』とありました」

「な、な、な………」


何だそれーーー!!!


心の声で叫んだ私は偉いと誉めてほしい。

というか、この場合の乙は私だ。というか、何よその契約書みたいな文章!!

 

「申し訳ございません。まさかお嬢様が自ら燃やしてしまう事なんてないだろうと思って……」

「い、いいのよ。マリエッタのせいじゃないわ……」


私のせいだ。

でも普通は燃やすでしょ。だって書いている内容は外に絶対に漏れたらヤバイやつじゃん!


「まさかアルフィード様ここまで予測してたってこと?」


私がハッとして呟くと、マリエッタは笑いながら「まさか」と言ったけど、段々顔色が変わっていく。


「お嬢様。もしかして私達、アルフィード様に踊らされてます?」

「もしかしなくても、そうだと思うわよ?」


私とマリエッタは大きなため息をついた。


「あのお方、初めからお嬢様と婚約破棄をなさるつもりじゃなかったんですね」

「あくまで私とアルフィード様が婚約解消したようにみせかけた演技……」

「お嬢様が書類を燃やすであろうことも計算の内とは……」

「そこまでして私と婚約してアルフィード様に何か得なことがあるのかしら?」

「流石アルフィード様、中々侮れませんね」

「ちょっと待ってマリエッタ。何だか最後の方会話が成り立ってないわ」


そんな話をしている時だった。誰かが扉を叩く音が聞こえる。


「どなたですか?」


マリエッタが扉の方へ声をかけた。

何だろう。複数の気配がして私は自然と『シル』の荷物に手が伸びる。

こういう状況はヤバイ事が起こる前触れなのが世のセオリーよね。


「私です!メイドのリリィです!緊急事態ですので部屋から出てきてください!」


リリィ?リリィって執事長が私の世話係ということで直接つけようとしたメイドよね?

そんなメイドが大人数を連れて侯爵令嬢の所へ来るかしら?

ますます怪しい。


「何があったのですか?」


マリエッタが扉越しに訊ねた。

するとリリィは扉を叩くのを止め、こちらの気配を確認するかのように黙る。


「リリィ?答えなさい」


マリエッタが声を張り上げた。

そして聞こえる複数の呪文のような声……。

詠唱魔法?

まさかこの魔法は……っ!


「リリィ!黙っていないで答えなさい!」


答えないリリィ。

マリエッタが扉に手をかけようとした時、私は彼女の手を取った。


「お、お嬢様!?」

「黙って!舌を噛むわよ!」


私は防御魔法(ガード)を繰り出し驚くマリエッタを連れて寝室へと駆け込んだ。

それと同時に部屋の扉が壊される音が聞こえた。

だが、防御魔法(ガード)のお陰で部屋の中に入れないのか、戸惑いの声が聞こえる。


「お嬢様、一体これは何なのですか?!」

「私に聞かれてもわかんないわよ。少なくとも侯爵令嬢のいる部屋の扉を壊すだなんて、普通の思考を持つ人じゃないのは確かね」


今は呑気に考えている場合じゃない。この部屋から逃げる方が先決だ。


「窓から飛び降りますか?」

「病弱なシルヴィアがそんな事をしたらアルフィード様がとった行動が水の泡になるわ」


その時、私の視界にアルフィード様が仕掛けた転送魔法陣が目に入った。


「ねえ、マリエッタ。貴女、私と一緒に地獄へ行く気ある?」


私の言葉に目を一瞬丸くしたマリエッタだったけど、フッと笑う。

 

「私はお嬢様となら地獄の果てまでもお供致しますわ」

「上等!」


私は魔力を魔法陣に注ぎ魔法を発動させた。


「まさかアルフィード様、ここまで考えていたのかしら?」


だとしたらお父様以上に恐ろしいお方ね。

私はそう思いながらマリエッタと共にそこへ飛び込んだ。

行き先なんて知らない。

でもこの部屋よりはずっとましだろう。

ただの直感だけど、私はアルフィード様を信じる方を選んだ。

さて、それが吉と出るか凶と出るのか……。

私とマリエッタの着いた場所、そこは――。

読んで頂きありがとうございます。

少しでもお楽しみいただければ嬉しいです。

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