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隠しキャラ転生物語  作者: 瀬田 彰
二章
40/122

募る疑問

閲覧ありがとうございます。


「マリエッタごめん、お茶を淹れて頂戴。頭がすっきりするやつで」

「かしこまりました」


私の普通じゃない顔色にマリエッタは少し動揺しながらお茶を淹れに行く。


「芋づる式とはこういうことを言うのかしら」


冷や汗をかきながら私は頭を抱えた。

サーガさんが攻略キャラの一人だと思い出した途端に他の攻略キャラクターの()が一斉に頭の中に流れ込んできたのだ。

 

「そうよ、イラストだけ(・・)は綺麗だったから特典でついてた攻略キャラクター一覧の本を見せてもらったんだわ」


前世の私。どうせなら顔だけでなく、名前も一緒に覚えてて欲しかった。

でも数が多くて無理な話よね。こんなことになるなんて当時は思わなかったんだから。


「でもこれじゃシルヴィア()が会った事のある人しかわからないじゃない……」


いや、突っ込むのはそこじゃない。と自分に突っ込みを入れる。

どうしよう、かなりヤバイかもしれない。

それくらい頭の中に流れた攻略対象キャラクターの数と驚きがすごかった。

対象のキャラクターは王族、貴族、庶民と幅広く何人かなんて数えられない。


「というか何でその中にマックスやジェフリーがいるの?」


全くもって意味がわからない。

ゲームタイトルからてっきり攻略キャラクターは王子様だけだと思い込んでいた。だからせいぜい五、六人。多くて十人程度だろうと思っていた。

そして、それと同時に全員を攻略した親友に恐怖した。

私なら無理。絶対に無理……。

そしてもう一つ理解できないことがあった。

 

「どうしてジャイル国のフィリップ殿下やバカロードもその中にいるのよ……」


私ががっくりと肩を落としているところへマリエッタがお茶を持って戻ってきた。

私はお茶を受け取りながらマリエッタの顔を見た。


「ねえマリエッタ、アルフィード様ってどう思う?」

「はあ?いえ、何ですか急に」

「アルフィード様ってモテるのかなって思って……」


私の言葉にマリエッタは少し考えてから口を開いた。

 

「正直に申し上げて、お妃様の影響で表だっては受けていないようですけど、裏ではかなり人気があると聞いております」

「そうよね、素敵だものね……」


お茶を一口だけ飲んだら自然とため息が出た。

その理由はアルフィード様だけが攻略キャラクターじゃないからだ。

何で?どうして?

フィリップ殿下やバカロードは攻略対象なのに、アルフィード様だけ違うの?

おかしくない?

逆ならわかる。でもこれはおかしい。

可能なら販売会社にクレームを入れたい。

というか、フィリップ殿下は顔はいいし想われれば一筋だから百歩譲って誰かが選択するかもしれない。でもあのバカロードを選択する女性なんている?

 

ないわ〜……。


私が遠い目をしていると、マリエッタが神妙な顔で迫ってきた。


「お嬢様、そんなにもアルフィード様を愛してしまわれたのですね」

「へ?」


マリエッタの言葉で我に戻った私はその言葉の意味を理解するのに時間がかかった。

どうしようマリエッタはもしかして誤解している?

いやちょっと、ううん、かなりかっこいいなとか素敵だなとか思っているけど、これを『愛』と呼ぶのは違う気がする。

まだ(・・)そこまではいってない。

私は慌ててカップを置いて否定する。


「違うのよ。そういう意味じゃなくてね、今の私はアルフィード様の力になりたいだけなの!」


必死に訴えるけれど、マリエッタには聞こえてない。

「なるほど」や「それならば」とかブツブツ言ってる……。


「わかりました。そこまでお嬢様がアルフィード様をお慕いしているのなら私はもう何も言いません。お嬢様の初恋を全力で応援いたします!」

「だから違うってば!」


私は全力で否定するけどマリエッタは「隠す必要などございません!」と聞く耳を持ってくれない。

私はマリエッタの誤解を解くのを諦め、一人盛り上がるマリエッタを横目にため息をついた。

こうなってはマリエッタの暴走を止められないことはよく知っている。

しばらくしたら我に返るでしょう。

でも、やっぱりアルフィード様が攻略キャラクターじゃないっていうのは納得できない。

何故ならば主人公(ヒロイン)であるクラリス様がアルフィード様を狙っていたからだ。

そう思いながら私は再びお茶のカップを手に取り口へと運んだ。

そして違和感にかられる。


あれ?狙う?

おかしくない?

何でクラリス様はアルフィード様に乗り換えようとしたの?


そう思った途端に思わずカップを落としてしまった。


「お嬢様!大丈夫でございますか!?」


マリエッタが慌てて落としたカップから私を遠ざけ、怪我をしていないか確認をする。

幸い怪我もしていないし、ドレスにもかかっていなかった。

それでも私は呆然としていた。

何をどうしたらいいかわからない。


「お嬢様?」

「……え?」

「どうかされましたか?味がおかしかったですか?」

「ううん、違うの。ちょっと思い出した事があって……」


私がそう言うとマリエッタが「もしかして……」と呟やいた。まるで何か思い当たるふしがあるかのようだ。

まさか、何か気がついた?!


「さてはお嬢様。そんな顔をなさるなんて、旦那様の書類の件ですね?実は終わっていないんでしょ?」

「え?」


全然違う言葉に私は思わず驚いてしまった。

マリエッタは「違うんですか?」と首を傾げた。

私は慌てて誤魔化す。ちょうどいい便乗してしまおう。


「え、ええ。実はマリエッタの言うとおりなの。流石にアルフィード様に全部お手伝い頂くのは申し訳ないでしょ?だから何枚か隠してたんだけど、お父様にバレたらどうしようってなっちゃって……。あ!そうだ。マリエッタがここを片付けている間に片してくるわ!」

「かしこまりました」


私はアルフィード様のからの書類を持ち、そそくさと部屋から出た。

マリエッタが斜め右上思考の人間でよかったとつくづく思う。

とりあえず適当に書類をでっち上げお父様に送り、アルフィード様からの書類を改めて読み直した。

私への謝罪、黒薔薇のカード、そしてその内容。


「やっぱり……。黒薔薇のカードの送り主はアルフィード様とクラリス様を無理矢理にでも結ばせようとしている」


初めはただ『黒薔薇のカード』という知らない言葉に対して驚いただけで害のない内容はあまり気にしてなかった。

むしろアルフィード様にはこういうイベントがあるのかしら?という程度だ。

それにどちらかと言えば婚約解消の理由の方に目を奪われていた。

でも今は違う。

アルフィード様は攻略キャラクターじゃないとわかった今、見るところは変わってくる。

そして黒薔薇のカードの主はアルフィード様を攻略対象外キャラクターだと思っていない。

勿論クラリス様もだ。

そこから出される答え。

それは……。


「隠しキャラクター……」


そう、RPGゲームなどでよくあるじゃない?ある条件を満たしたら手に入れられるアイテムとか、本来は仲間にならないキャラクターが仲間になるとか。

それならばアルフィード様は攻略キャラクター一覧には載らないし、前世の記憶になくてもおかしくない。

親友が自慢げに話してきた記憶がないということは、彼女ですらその条件を満たすことができなかったということじゃない?

つまりアルフィード様はレアキャラ。しかも『超』がつくやつだ。

うん、多分それよ!

それならアルフィード様の計り知れない魔力とか、情報とかにも納得がいく。

そんな素敵な人が攻略キャラクター対象外になるわけがないし、逆に簡単に攻略キャラクターになるはずがない。

そしてそこからもう一つ導き出されたことがある。


「クラリス様は前世の記憶を持っている。しかもこの世界を知っているということになるわ」


親友と比べてどのくらいのハマり具合はわからない。わからないけど、アルフィード様を知っているということは、それなりにやっていたと推測していいかもしれない。

それにそう考えれば私がどんなキャラクターなのか知っていてもおかしくない。

勿論その分私が悪役令嬢の可能性が高くなるけど、あんな無理矢理な断罪イベントを起こしたと言うことは違うとも言える。

私が本当に悪役令嬢なら焦らなくても勝手に回りがそう仕立てるはずだもの。

それにクラリス様が前世の記憶保持者と言う根拠はまだある。無自覚の魔法のはずなのにクラウド様でなく、国王陛下達に魅了魔法(チャーム)をかけていたこと。

あの類いの魔法は自覚さえしてしまえばコントロール可能な魔法なのだ。

だから今のクラリス様は隔離されている。

近づけば魅了魔法(チャーム)にかかる可能性があるからだ。


「そして彼女が本当に前世の記憶を持っているとするならば、このまま引き下がるとは思えない」


この後一体何が起こるのだろう。

そして、前世の私が言っていたあの言葉。


『でも全てが狂い始めている。あの人のせいで……』


『あの人』とは一体誰?

もしかしてクラリス様のこと?


「何だろう嫌な予感がする……」


私はアルフィード様からの書類を胸に抱いた。

その時、離れた所から悲鳴が聞こえたような気がした。

読んで頂きありがとうございます。

何だか乙女ゲームではなくミステリーになりつつあるような気もしますが、気のせい……ということでお願いします。

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