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隠しキャラ転生物語  作者: 瀬田 彰
二章

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32/123

闇の中で

今回はまたシルヴィアサイドです。


暗い暗い闇の中。

目を開けると私は一人で立っていた。


『ここは、どこ?確か私は……』


そこまで呟いてアルフィード様に眠らされた事を思い出した。

そうだ、私は婚約を自ら反故にしたにも関わらず、辛くて泣いたんだ。

そしたらアルフィード様が私を眠らせて……。


『……、何という醜態』


私は頭を抱えた。

一度ならず二度も三度もアルフィード様の前で格好悪い姿をさらけ出している。

もう『病弱令嬢』とは言えない。むしろ今の私は『どんくさい令嬢』とか『面倒令嬢』とか『泣き虫令嬢』などの方がお似合いだ。


『ダメよシルヴィア。マイナスに考えても状況は変わらないわ』


ネガティブになりそうな自分の頬をペチペチと叩く。


『あれ?頬が痛い……』


夢なのに何で痛いんだろう?

私は恐る恐る頬をつねってみた。


『痛っ』


やっぱり痛い。

と言うことはこれは夢じゃない?どうなってるの?

もしかしてバッドエンド?


『嘘!』


私は間違えてない。間違えてないはずよ。

だってどう考えてもあのままアルフィード様との婚約にすがるのが正解だなんて思えない。

そりゃあ、泣いたよ。泣きましたよ。

でも泣いたからってバッドエンドになるなんて聞いた事がない。あんまりだ。


『前世でこの乙女ゲームと相性最悪だったけど、そんな展開が実際に起こり得るなんて……』


そこまで言って首を横に振る。

違う。

これは前世とゲームの相性などは関係ない。それならばこの世界に私が転生できるわけがない。

これは前世の私の人生じゃない。シルヴィア・キー・グレイスの人生なのだ。

ゲームの知識は親友に聞いた事、しかもそれは断片的にしか思い出せない。そんな前世の記憶が役立つどころか足を引っ張る可能性はかなり高いだろう。

 

『でも第二の人生をこんな形で終わらせるわけにはいかないわ』


初対面の使用人に敵視され、主人公(ヒロイン)から一方的に悪役令嬢扱いを受け、婚約も自ら破棄した。

これ以上何がある?

家からの勘当?

国からの追放?

私は普通の令嬢と違う。自慢じゃないけどそれなりにこの世界の者としての知識はあるし、魔力もある。おまけに庶民になってもやっていける自信があるのだ。


『それで十分じゃない』


悪役令嬢にはなりたくない。

だからといって主人公(ヒロイン)になりたいわけじゃない。

私は私らしくこの世界で生きていければいいのだ。

私は目を閉じて大きく深呼吸をした。

そしてゆっくりと目を開ける。


『私はシルヴィア・キー・グレイスよ』


その言葉を口にした途端闇が一気に引いていき、現れたのは見覚えのある白い建物の中。

前世で私が親友をお見舞いに通っていた病院の廊下だった。

窓の外には沢山の桜の花びらが舞っている。


『何これ……』


私は窓に駆け寄り外を見た。

沢山の桜の木が見える。

間違いない。この景色は病院だ。

私は何かに取りつかれたかのように階段を駆け上がった。

途中見覚えがある人達とすれ違った気がするけれどそんな事を気にする余裕はなかった。

相手も私に気がついてないようだった。

すれ違う人達の中をすり抜けるように私はある病室へと向かった。

そこへ行ってどうするのかわからない。

ドレスとヒールで思うように動けないけど私はそこへ向かっていた。

向かわないといけない。


『着いた……』


私は肩で大きく息を揺らしながらある個室の前に立っていた。

名前を確認しなくても誰の部屋かは前世の私がよく知っている。

私は覚悟を決めて扉を開けた。

読んでいただきありがとうございます。

次もよければまたお付き合いください。

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