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隠しキャラ転生物語  作者: 瀬田 彰
二章
29/122

サーガVSマリエッタ

誤字報告ありがとうございます!


「さあ、聞かせてもらおうか?」


アルフィード様がニコニコしながら最後の書類をサーガさんに渡した。

沢山あった書類の山はたった二時間程で綺麗になくなってしまい、これには正直驚きしかない。


「お嬢様。お茶でございます」

「ありがとう」


マリエッタが出してくれたお茶を私はイッキ飲みした。

熱かった様な気がするけれどそんなのことを感じる余裕はなく、アルフィード様から出てくる妙な圧だけを感じる。

いや、それ意味がわかりませんから。

書類が片付いてからと仰ってたのに、マックスのことめちゃくちゃ聞いてきましたよね?

背の高さとか、顔つきとか、趣味とか、もうそれこそ根掘り葉掘り……。

殆ど知らなくて答えられませんでしたけど!

それなのにこれ以上聞くことあります?

マリエッタに視線で助けを求めたけれど、ガン無視された。

今の私に味方はいない。


「ですから、何度も言うように、マックスは私が勤めていたパン屋さんで修行をしている方で、別に親密な関係ではありせんし、特別な感情もありません!」

「パン屋?シルヴィア様が?」


サーガさんが初めて聞いたという顔つきになる。それもそのはず。サーガさんはずっとマリエッタと口論をしてたからだ。

サーガさんが『何故侯爵令嬢が……?』と聞きたそうだったけれど、アルフィード様がそれを制した。

私としても同じ事を何度も説明するのは面倒臭かったのでありがたい。


「続けて」


アルフィード様がにっこりと笑い促した。

うん、前言撤回。

全然ありがたくないです。

笑顔がめちゃくちゃ怖いです。


「マックスは気前のいいお兄ちゃん(・・・・・)という感じで本当にそれ以上の事はありません」


ここは敢えて『お兄様』とは言わなかった。実際マックスに対してお兄様というようなイメージは全く持てない。


「だが、プロポーズされたのだろう?」

「それはそうなんですけど、そもそも何でマックスが私にプロポーズ?をしたのかわかりません」


それを聞いたアルフィード様の顔が少し険しくなった。

何でそんな顔をするんだろう?

マリエッタの肩が小刻みに揺れている。

何?何なの?


「……、何故疑問系なんだ?」

「何故って、プロポーズって分からなかったんです。ジェニーっていう同僚から教えて頂いて初めて気がついたくらいで……。あんな遠回しな言い方、理解しろと言うのが難題ですわ」

「お嬢様、失礼ながらその告白はどの様な内容だったんですか?」

「えっと……、あの時私が頭を打って、それに対して『責任を取る』?だったかしら……」

「なるほど、それでお嬢様は何と?」


アルフィード様が「頭を打った?」と顔を歪めたけれど、そこは流石マリエッタ、アルフィード様に質問を言わせないペースで私に聞いてくる。

自分が興味を持っただけかもしれないけど……。


「改心して、仲間のジェフリーと仲良くするのねって感動したけど?だって、二人の喧嘩のせいで頭を打ったから……」

「お嬢様らしいですわね」

「どういう意味よ」

「いえ、別に何でもありませんわ」


マリエッタはニコニコと微笑むだけだった。

アルフィード様はすごく複雑そうな顔をしている。


「それにしても、そこまで鈍い貴女がアルフィード殿下の婚約を受け入れるとはどんな心境の変化があったのでしょう?」


サーガさんが眼鏡を光らせながら私に問う。

鈍いってどう言うこと?


「狙いは殿下の権力と言ったところでしょうか?」

「サーガ、お嬢様はそんなものに興味は持ちませんよ」

「どうだか……」


ああ、サーガさんは私が玉の輿を狙っていると思ってるわけか。そう考えるのは当然と言えば当然かもしれない。私とアルフィード様は出会ったばかりだもの。

でも、どうやって説明をすればいいんだろう。まさか真実をそのまま言うわけにはいかないし……。


「勘……、とか?」

「は?」

「何でもないわ、ごめんなさい。続けて」


私はうっかり声に出してしまったので笑って誤魔化した。

疑いの眼差しでサーガさんは私を見てくるけど、見逃してもらえた。

私はホッと胸を撫で下ろす。

 

『もしかしたら私は悪役令嬢になる運命なのかもしれないキャラクターなんです!そういう運命ならば想う相手はアルフィード様がいいと思いました!』

 

なーんて、口が避けても言えない。言えるわけがない。

大体、「キャラクターって何だ?」と聞かれたらこれまた説明が必要になるし、そうなるといやがおうにも前世の記憶のことを話す必要がでてくる。

(前世)の世界ではここは乙女ゲームの世界。しかもアルフィード様はゲーム内で攻略される人なのだと。

そんな事を言えば私を敬っているマリエッタでさえ頭がおかしくなったと怪訝な顔をするだろう。

それはできれば避けたい。でも、避けかたがわからない。

だから、『勘』ということにしようかと思ったけど、駄目そうだ……。

ふと、騒がしい気がして顔を上げると、また二人が言い合いをしていた。


「だから、お嬢様が権力に惹かれることなんて万が一にもあり得ません!」

「そんなのはわかるまい?何か証拠でも?」

「お嬢様は宰相の娘ですよ?」

「だからなんだというのだ?権力に魅入られていないとは言い切れない。実際、病弱でないのに病弱と偽ってるではないか」

「何ですって!」


この二人、本当に付き合ってるのかしら。

付き合うって、もっとお花が飛んでない?無駄にこう、ブワッと……。幸せオーラ的な。

どう見ても二人にはお花よりも落雷や稲妻が似合う気がするんだけど……。


「いいですかサーガ。色恋沙汰に関してのみ、お嬢様にははっきりと言わないと伝わらないんです!」


どや顔のマリエッタ。固まるサーガさん。

ちょっと待って、さっきから私のことを鈍いって言ってるけど、私ってそんなに鈍いの?前世は花の女子高生だよ?

恋愛に興味はなかったけど、人並みには理解しているつもりだよ?


「それは、先程の会話でよくわかったつもりだ。あの台詞でわからない女性がいるのかと逆に驚きしかない」


サーガさんの言葉がグサリと胸に刺さる。

アルフィード様も軽く頷きながらお茶を口に運んでいるのを見て更に胸に刺さる。


「それがお嬢様のいいところですわ!お陰で変な男には騙されておりません!」


マリエッタ。

そこ、威張るところじゃない。

 

「私がアルフィード様を認める一つの要因は、お嬢様に分かりやすくお伝えになったところです!」

「どういう意味だ?」

「いいですか?アルフィード様は『どうか私と婚約してほしい。今すぐ。ここで』と告白なさったんですよ!」


それを聞いた途端、私はソファーから滑り落ちアルフィード様はお茶を吹き出した。


「……、それで理解できなかったらシルヴィア様は色々と終わりだと思うぞ?」


サーガさんが哀れな者を見るような目で私を見る。

だから、私はそんなに鈍くありません!


「何よ!初対面でここまでお嬢様を見抜くアルフィード様を素晴らしいとは思わないの!貴方、アルフィード様の側近でしょ!」

「うるさい!それとこれは話が別だ!大体お前はいつから殿下のファンになった」

「失礼ね!ファンなんかじゃないわよ!私、お嬢様以外の年下には興味ないんだから!」

「ならば何故そんなに殿下とシルヴィア様の仲を取り持とうとする!」

「そんなの当然でしょ!私が常に気にかけるのはお嬢様だけなんだから!」


二人がヒートアップしてきて私は焦る。

これは止めなければいけない。これが原因で二人が別れてしまったら明日から目覚めが悪くなる。


「ちょっと、二人ともやめなさ……」

「お嬢様は黙っててください!これは私とサーガの戦いです!」

「そうですシルヴィア様、これは私とマリエッタの戦いです!」


いつから二人の戦いになったんだ。

二人はすごい剣幕で私の言葉を遮り睨み合う。

 

「貴方はあの場にいなかったらわからないのよ!あの時のお嬢様のお顔。そしてアルフィード様との雰囲気。あの素晴らしい光景を見てたら絶対にお嬢様達を疑ったりしないはずよ!!」

「それがどうした?見たからといってもそんな事で私は騙されたりはしない」


サーガさんが眼鏡をくいっと上げた。その内眼鏡から光線が出そうな位光っている。

騙すって何を?と聞きたかったけど、もはや言葉を突っ込むタイミングがわからない。


「何よ!そこまでお嬢様とアルフィード様の婚約に異議があるならはっきりと理由をいいなさいよ!理由を!まさか貴方も執事長の様に『クラリス様が〜』なんていうんじゃないでしょうね!」

「何処の馬の骨かもわからない薄気味悪い小娘など、勧めるものか!」


酷い言い様である。

仮にも主人公(ヒロイン)に薄気味悪いは言い過ぎの様な気がする。

中身はともかく、外見は本当に可愛らしい人だったのに……。


「だから、私はシルヴィア様が殿下の申し出を簡単に受けたのが納得いかないと言いたいのだ!」


サーガさんが私に向かって叫んだ。

その場の空気がしんと静まり返る。

マリエッタでさえ意味が分からないと立ち尽くしている。


「要するに(わたくし)にアルフィード様からの婚約の申し出を断ってほしかった。ということですか?」


私がそう言いながらサーガさんをじっと見る。今回は遮られることなく、聞くことができた。

 

「そういうところの察知能力は優れているようですね。ええ、そう捉えていただいて結構です」

「理由を聞いてもよろしくて?」

「拒否します」


その答えがマリエッタを怒らせるには十分だった。けれど私はマリエッタを止める。

 

「お嬢様、どうして……」

「ここからは第二ラウンドだからよ」

「第二、ラウンド?」


私は黙って頷く。

そう。マリエッタとではただの言い合いになってしまう。

いや、そもそもサーガさんは元々私を標的にしていたのだ。

それなのにマリエッタが割り込んでややこしくなったと言える。

私はチラリとアルフィード様を見た。アルフィード様は何も答えない。

マックスの事を納得して満足してのだろうか。

いや、違う。きっとサーガさんと私とのやり取りを見ているのだ。

だってほら、口元が笑っている。サーガさんを打ち負かせてみろと言っている。

私はサーガさんをまっすぐに見た。令嬢らしく、強かに、まっすぐに……。


「いいわ。サーガスト・クラウン。貴方の望みを叶えてあげましょう」


読んで頂きありがとうございます!

サーガとマリエッタは仲かいいのか悪いのか……。

二人の言い合いが止まらなくて話がほぼ進みませんでした。

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