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隠しキャラ転生物語  作者: 瀬田 彰
一章

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23/123

6年前のお茶会その後で(シルヴィア視点)

そこまで濃い描写はしてませんが、ちょっと「ん?」という場面があります。

ご了承ください。


「何なんですかあのお茶会は!!」


 私はお母様とマリエッタに抱えられながら叫んでいた。

 どさくさに紛れて離れたものの、私の怒りが収まることはなかった。


「まあ、シルヴィアちゃんたら、そんなにアルフィード様がいいの?」

「!?」

「ついに、お嬢様にもラブの予感でございますか!?」


 お母様もマリエッタも違う方向へと話を持っていく。

 それが更に私を苛立たせた。


「何でそうなるのよ!」

「だって、シルヴィアちゃんがアルフィード様、アルフィード様って言うから」

「言ってません!!」


 私はお母様とマリエッタを振りほどき自分の足で立った。


「大体、あのお妃様が気に入りません!」

「あら?どうして?」

「とぼけたって無駄です!お母様は気づいていたでしょう?」


 私がお母様に聞くと「うふふ」と笑った。

 そう、お母様は気がついていたのだ。

 どちらも無能と言っていい王子達。そんな王子達をそれぞれ支持する貴婦人達をあざけ笑っているお妃様の事を……。


「悪趣味です。非常に悪趣味です!」

「そこは私も否定できないわね」


 お母様がウンウンと頷きながら私に答えた。

 お母様に言われるお妃様が少し可愛そうな気もするけれど、そこは敢えて黙っておく。


「それで?シルヴィアちゃんがアルフィード様の名前を出したのは何故かしら?」

「何故って、お父様がよく話に出すから……」

「でもシルヴィアちゃんとアルフィード殿下は関わった事はないわよね?」

「でもお父様が……」


 その言葉にお母様の顔つきが変わった。

 さっきまでののほほんとした空気は消えて、ピリピリと痛い。

 

「いつも言ってるわよね?人に聞いたことだけでなく、自分の目で見て、相手を知った上で発言しなさいと」

「う……」

「貴女がアルフィード殿下を知った上であの言葉が出てきたのなら構わない。でも、そうでなければ貴女もあそこにいた婦人達と同じよ」

「!」


 私は全く反論できなくなった。

 確かに、お父様から聞いて一番マシだろうと勝手に思い込み、アルフィード様の名前を上げた。でもそれはあそこにいたあの貴婦人達も同じだ。

 貴婦人達はフィリップ様のことも、ロード様のことも深くは知らない。知ってたらあんな会話にはならないはずなのだ。

 そう、彼女達にとって二人の王子は『己にとって利益があるかないか』でしかない。

 そしてアルフィード様は彼女達にとって『利益がない王子』なのだ。

 だからお妃様は私の事をあんな風に笑ったのだ。

 私は自分の発言に後悔の念に駆られる。

 私のせいで無関係なアルフィード様の顔に泥を塗ったかもしれない。


「流石シルヴィアちゃんね!理解が早くて助かるわ〜!」

「お、お母様?」


 普段のお母様に戻り、ニコニコ顔で私の頭を撫でる。

 私は突然の変わり身にどういう反応をすればいいかわからない。

 

「ヴァイやエレナの時はね、理解させるのに一日かかったのよ?もう、それこそお父様とデイヴィスとルーイズまで駆り出して!」


 お母様が当時の事を思い出したようで熱く語り始める。


「奥様!その話グリードから私も聞きました!今回の為の予備知識として知っておくようにと!」

「あら、そう言えばヴァイとエレナのデビューの付き添いはグリードだったわね。それで貴女はシルヴィアちゃんが暴走しても落ち着いていたのね」

「はい!グリードのお陰です!」

「マリエッタちょっと待って!お母様も何の話?私にはさっぱり訳がわからないんだけど……」


 盛り上がる二人の間に入り私はお母様とマリエッタを交互に見た。すると二人はクスクス笑いだす。

 何となくのけ者にされたみたいでいい気分ではない。

 

「つまりですね、問題を起こしたのはお嬢様だけではないということです」

「?」

「双子である次女エレナ様、次男のヴァイ様は勿論。長男のデイヴィス様や長女のルイーズ様、三女のマリア様に三男のケイン坊ちゃんと四女のイザベラお嬢様も例外なく皆何かしら起こしているんですよ」

「何それ……」

「エレナとヴァイはそれぞれ庭と離れの塔を破壊した挙げ句複数の怪我人を出したし、デイヴィスは当時の財務担当を拳で殴って病院送り。ルイーズは直接的な人被害は無かったんだけど、蛙の解体ショーをして婦人達が失神してたわね。マリアとイサベラちゃんの二人は理由は違うんだけど魔法で会場をめちゃくちゃにして、ケインちゃんはどこかの侯爵家に喧嘩を吹っ掛けてたわ」


 お母様が「懐かしいわ〜」と頬を赤く染めながら言うけど、私は顔がひきつっていた。


「その点、お嬢様はテーブル一つです!素晴らしいですわ!」


 いや、全く素晴らしくないから。

 マリエッタの思考回路の謎はこの頃から既に存在していたかもしれない。


「さ、話がまとまったところで私はお父様の所へ行ってくるわね。一応後始末をお願いしなくちゃ!シルヴィアちゃん、マリエッタ。ここで待ってて頂戴」


 そう言ってお母様は機嫌よく去っていく。

 いやいや、あのステップおかしくない?

 何でウキウキしてるの!?


「奥様にとっても旦那様にとっても、今回の騒動は他のご兄妹に比べると大した問題ではないかもしれないですね」


 確かに私で八回目となるこの騒動。もしかしたらお母様やお父様にとっては無くてはならない行事になっているのかもしれない。

 その為に私をお茶会に誘ったというのなら、お母様もお妃様に負けないくらい趣味が悪い。


「それよりもマリエッタはお嬢様のアルフィード様推し、いいと思いますわ!」

「お、推し??」


 突然の言葉に私は声が裏返る。

 マリエッタは目をキラキラさせ「推し」について熱心に説明し始めようとした時だった。


「そこにいるのは病弱令嬢のシルヴィアか?」

「!」


 声をかけられ私は驚いてビクッと体を震わせる。

 そこには派手な服に派手な装飾をつけた美少年、ロード様がいた。

 金色の髪に、黄色の目。年が同じだから昔から知ってはいるけれど、正直、ピカピカ光って凄く鬱陶しい。


「病弱のくせに相変わらず可愛くないな」


 ほっといてほしい。

 逆に「あんたは派手すぎて気持ち悪いのよ!」と言ってやりたいのをグッと堪えた。

 偉いぞ私!

 ちゃんと学習してる!


「今日はお一人ですか?」


 マリエッタがニッコリと笑いながらロード様に尋ねる。

 確かにいつもは誰かを側につけて騒がしいのだが、今日はいない?私がふとロード様の近くにある柱を見ると女の人の生足が見えた。

 まさかこいつ……。


王宮(ここ)は俺の家だぜ?必要ないって!」


 ロードは笑いながら答え、そしてマリエッタをじっと見る。

 私は生足のこともあり、嫌な予感がしてマリエッタを後ろへ下げるような行動を取った。


「お前、邪魔」


 ロード様が私を睨むけど、怖くも何ともない。

 無論それは向こうも同じで私の事など気にすることはない。

 

「前から思ってたんだけど、マリエッタだっけ?お前俺の専属メイドにならないか?」

「私が、ですか?」


 ロード様の誘いにマリエッタは眉間にシワを寄せた。

 ロード様は自分の気に入った女の子達を身分も位も関係なく平等に側に置く。

 それは一部の人間にとってとてもいいことである。身分が関係ないのは素晴らしい。

 ただし、一つ問題がある。飽きたら捨てられるのだ。

 そう、身分など関係なしに……。


「そんな病弱な奴の面倒よりもさ、俺の側にいる方が幸せになれるよ?いいだろ?」


 私は唇を噛んだ。

 以前からロード様はマリエッタの事をチラチラ見てはいたのは知っている。

 直接近寄らなかったのはマリエッタが私のお供で出てくる際は必ず近くにお父様やお母様がいたからだ。

 そして今、その二人はここにいない。


「ロード様、恐れいりますが私は後にも先にもグレイス家のみに仕える身でございます。例えロード様のご命令でも御断り致しますわ」


 マリエッタ、よく言った。

 でも甘い。ロード様にはそれは通用しない。

 勿論マリエッタもそれはわかっているだろう。


「ならばグレイス家を失脚せようか」

「は?」


 マリエッタが固まった。

 ほらね、この王子がそんな事くらいで納得してくれる訳がない。

 失脚とか言い出してるし……。

 ん?

 失脚?

 グレイス家を?


「最近宰相の目が厳しくなって自由にお金を使えないんだよね」


 いやいや、そんな理由で失脚させるの?我が家を?

 グレイス家が失脚したら誰がこの国を支えるの?

 この王子は他の貴族に宰相のお父様の代わりが勤まると思っているの?


「よし、決めた。父上に言ってグレイス家を失脚させよう。そしてお前は俺の所へ仕えろ!」


 いい案だと言わんばかりにロード様は胸を張るけれど、私から言わせれば「愚か」でしかない。


「申し訳ございません。例えグレイス家が失脚しようとも、没落しようとも、私のお嬢様への忠誠心は揺るぎません」

「ならば、病弱(そいつ)を消せば問題あるまい?」

「!?」


 そう言ってロード様は後ろへ下がり魔法を放つ準備をし始めた。

 長い詠唱をしているところを見ると、ロード様はまだ魔法陣は扱えないらしい。

 いや、ちょっと待て。

 そもそもこんな王宮のど真ん中で魔法など放てばどうなるかわかってないわけ?

 昔から何となく思ってはいたけど私は今確信する。

 ロード様(こいつ)はバカだ。

 愚かとかの問題じゃない。バカなのだ。

 私は慌てて防御魔法(ガード)をマリエッタ、そしてついでなので柱の向こうに見えている生足の人物にもかけてあげた。


「お嬢様!?」

「大丈夫。私の魔法の方が上だから!」


 叫ぶマリエッタを後ろに、私はロード様……、いや、バカロードの魔法を止めるべく彼に向かって走った。

 しかし、それが仇となる。


「なっ!来るなっ!」


 バカロードは驚いて詠唱を途中で止めるのではなく他の言葉を挟んだ。

 その瞬間、辺りは光に包まれる。

 詠唱魔法の最中に他の言葉を挟む行為。

 それは魔法によってはとても危険だという事を彼はわかっていなかったのだ。

 私は慌ててバカロードに向かって魔法を放った。

 大きな光が辺りを包み込んだ。

読んで頂きありがとうございます。

この後またアルフィードの視点で展開しますが、そちらは少しお待ち下さい。

できるだけ早くしあげます。

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