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隠しキャラ転生物語  作者: 瀬田 彰
一章
2/122

私、転生してました

そう言えば女の子の主人公って初めて書きます

読みづらいところがあるかもしれませんが、ながーい目でごらんください


 「あー……――」

 

 私はうっすらと目を開いた。

 すると、見慣れない天井が視界に入ってきた。

 コンクリートじゃない。

 木、だけでもない。

 そもそも、天井に照明がついていない。

 私は病院にいるんじゃないの?

 

「ここは……?」


 聞きなれない女性の声が聞こえた。

 誰?

 誰の声?

 

「看護師さん?私、生きてるの?」

 

 でも今のは私が声を出したつもりなのに私の声は聞こえなかった。

 どういうこと?


「シル!目が覚めた!?」


 ショートヘアーで黄緑の髪と目をした知らない外国人が私の顔を覗き込んでいる。

 私は驚いて彼女から離れて壁を背に張り付いた。

 貴女だれ?

 何でコスプレしてるの?

 私はシルじゃない。

 シルって誰の事?

 そう言いたかったけど、声が上手く出せなかった。

 彼女は不安そうに私を見ている。


「私の、名前は――」


 ズキン!


 やっとの思いで名前を言おうとしたのに、頭に激痛が走り私は頭を押さえた。


「シル!大丈夫?!」


 彼女は私に迫る。

 知ってる。

 彼女の事を私は知ってる。

 彼女は……――。


「大丈夫よ、ジェニー。ちょっと混乱しただけ……」

 

 私はジェニーの肩に手を置いて答えた。

 ジェニーはそれを聞いて安堵の息を吐いた。

 そう、彼女の名前はジェニー・ワット。

 そしてこの知らない声は私の声。


「もう、私の事を忘れちゃったのかと心配しちゃったじゃない!」


 そう言ってジェニーはそのまま私に飛び付ついてきた。

 頭をぎゅっとされてまた激痛が走る。


「ちょっ!ジェニー、痛い…」

「あ、ごめんなさい!鉄板が頭に当たってたものね!でも少し頭を切っただけで済んだなんて奇跡よ!あ、顔は大丈夫よ!無傷だから!ほら、鏡!」


 そう言ってジェニーはニコニコしながら鏡を渡してくれた。

 私が恐る恐る鏡を見てみると、そこには私の顔ではない顔が映っていた。

 頭に包帯が巻かれているけれど、私の知ってる私はこんなにサラサラな長い黒髪じゃなかった。

 こんなに澄んだ黒い瞳でもなかった。

 そして何よりこんな美人じゃなかった!

 いや、これは言い過ぎか……。


「ちょっと、シル?本当に大丈夫?」


 私が黙ったまま鏡を見ていたので心配したのだろう。ジェニーがまた心配そうに私を見ている。

 

「ごめん、大怪我とかじゃなくてよかったなあって思って……」

「うん、本当そうよね!顔は女の命だし!お医者様も頭は切れてても傷口は小さいし、大怪我じゃないって言ってたわ!」

「ジェニー、ありがとう。心配かけちゃってごめんね」

「何言ってるのよ、シルのせいじゃないって!悪いのはあの二人……」


 ドターン!

 ガタガタ!

 ガシャーン!


 ジェニーが何か言いかけた時、下の方で何やら大きな音が聞こえた。

 誰か暴れてる?


「な、何?!」

「あー、また始まっちゃったか……。シルちょっとこのまま待ってて、様子見てくる!」


 そう言ってジェニーはバタバタと部屋を出ていった。

 残された私は笑顔でジェニーを見送ったけれど、笑っている心境じゃない。

 

「つまり、この状況からして、私は転生しちゃったってことよね?」


 ジェニーの前では冷静を装っていたが、正直な所、私の頭はパニックの寸前だった。

 それなのに取り乱さなかった自分を誉めてあげたい。


「大丈夫よ。落ち着いて、落ち着くのよ」


 私は自分に必死に言い聞かせる。

 ジェニーが戻ってくる前に今の私をちゃんと思い出さなければいけない。

 でも、やっぱり自分が死んだとはどうしても思いたくない。

 

「そうよ。これは夢、これはリアルな夢なのよ」


 そう呟いて私は思いっきり自分の頬をつねった。夢かどうかの確認はこれをするのがどこの世界でもお約束である。


「痛っ!」


『パンパカパーン!おめでとうございます。これは夢じゃないと証明されました!』


 と言うテロップが流れた気がした。……って、ちっがーう!!

 そもそもこの方法って、夢じゃないと信じたい時にする行動じゃない?

 頬をつねっちゃダメじゃん私!

 ダメだ、まだ色々と動揺している……。


「落ち着け、落ち着け。深呼吸よ!深呼吸……」


 私は大きく深呼吸をした。

 よし、落ち着いてきた!


「前世の私は短い人生だったけど、今の私はしっかりと生きていくのよ!」


 改めて声を出すことにより少し気持ちが前を向く。

 前世で後悔が全くないわけじゃない。やりたいことはまだまだあった。やり残したことだって沢山ある。

 入院している親友の事だって気がかりだし、私の家族はどう思ったのだろうとかどうしても思ってしまう。

 ただ転生した先が人間の女性なのはとてもありがたかった。

 違うものへの転生だったりしたら精神的ダメージが計り知れない。


「でも欲を言えばせめて同じ年か年下がよかったかも……」


 私は「ははは……」と力なく笑った。少しずつ今の私の記憶が流れてきて自分が何者かわかってきたのだ。

 前世の私は十六歳の女子高生だった。それが今の私は十八歳なのだ。

 なんだか二歳分損をした気がする……。見た目は大人、中身は子ども……いやいや、二歳差だからまだ何とかなるわよね。

 目が覚めたら九十歳越えたおばあちゃんだった……とかじゃないんだから。

 今度は頬をパチパチと叩いた。


「落ち込んでても仕方がない!状況を把握しとかなきゃ!」

 

私はもう一度大きく深呼吸をして、今どういう状態なのかを改めて思い返す。

 ここは外国、私が生まれた国じゃない。

 この国の名前は……。


「スピティカル国……」


 よし、ちゃんと思い出せる。ここの世界の知識だって大丈夫。これなら第二の人生もそれなりに生きれるはずだ。

 そして一度思い出すと芋づる式に記憶が流れてくる。

 少し頭が痛いけど、一個ずつ思い出す必要がなくなって逆に助かると言うものだ。

 

「ここはスピティカル国。私はミートさんのパン屋さんに勤めている。さっきの彼女はジェニーで、このお店の従業員。彼女は私の友達」


 声に出して言うことによりより確実に記憶が甦る。

 

「他にマックスやジェフリーという修行中のパン職人がいて……っ!」


 ズキンと頭に激痛が走って思わず頭を押さえた。

 甦る光景は喧嘩をしているマックスとジェフリーを止めようとしたこと。

 マックスに押された衝撃。

 そして、よろけてぶつかった所に落ちてきた黒い鉄板。

 それがあの前世の私が最期に目にした光景と重なって――。


「なるほど、そういうことか……」


 同じような光景で前の記憶を思い出す。

 何とお約束な展開なんだろう。けれど、自分がどうやって死んだかなんて思い出してもいい気分にはなれない。


「別に前世なんて思い出さなくてもよかったのに……」


 そう、今の私も楽しくそれなりに生きてきている。

 別に不自由なんてしていない。不満もない。


「そういえば、前世でも『スピティカル』って言葉を聞いたことがあるような……?」


 私が思い出そうと考えているとドアをノックする音がした。

長いのに読んで頂き、ありがとうございます

分断しようかと思いましたが、一気にまとめました

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