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隠しキャラ転生物語  作者: 瀬田 彰
一章

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14/123

クラリス様は主人公


 クラリス・アヌシー。それが皆が言うクラリス様の名前だった。

 彼女はスピティカル国の町娘らしい。

 クラウド様との出会いはたまたま町の様子を見にいていた陛下の馬が暴走しその馬に跳ねられそうになった所をクラウド様が助けたのがはじまりだそうだ。

 その後、町娘とは思えぬ美しさと不思議な力を秘めていることが判明し王宮にそのまま暮らすことになったらしい。

 そのうちクラウド様ともいい雰囲気になり周囲からは婚約者候補という扱いへ変わって現在に至るそうだ。

 それを聞いた時、私の中でクラリス様は主人公(ヒロイン)だと確信した。

 何故もっと早く気がつかなかったのだろう。

 婚約者候補と言うからてっきりどこかの令嬢だと思い込んでいた。

 ジェニーの話を流さずにちゃんと聞いておけばよかった。

 前世と同じ過ちに私は頭を抱えた。


「けれどアルフィード(こいつ)と会ってからクラリスは人が変わったかのようにもう夢中。俺はもう蚊帳の外扱いだよ」


 クラウド様はそう言ってため息をついた。

 あれ?私は首を傾げた。

 そう言えばさっきから話を聞く限りクラウド様はクラリス様に振られた様なことばかり言っている。

 私が町で聞いた話はクラウド様と婚約者候補はかなり良い雰囲気だったはずだ。

 仮に情報の行き違いがあったとしてもクラウド様の態度やアルフィード様の顔からしてクラリス様の心変わりが数日前の出来事とは思えない。

 私が聞き逃した?

 ううん、いくら私がこの手の話を聞き流しをするのが常であっても、そんな大きなスキャンダルを全く耳にしてないというのはあり得ない。

 それにそんな状態ならマリエッタがあんなにアルフィード様を私に勧めるわけがないのだ。

 私が悶々と考えているとふと視界が暗くなる。

 顔を上げるとアルフィード様が心配そうに私を見ていた。


「どうした?」


 そう言いながら私の顔に近づける。

 (はた)から見ればただのイチャつきカップルに見えるかもしれない。

 ドキドキとする鼓動を必死に抑えようと努めるけれど、鼓動は大きくなるばかりだ。


「今の話で何か気になることでもあったか?」

「!」


 アルフィード様が私の耳元で囁いた。

 アルフィード様は『病弱シルヴィア』の為にこうしてくれているのだとわかる。

 それでも早い鼓動を悟られない様に私はそっとアルフィード様の耳に唇を近づけた。


「失礼ながら、クラウド様の婚約者候補は他にもいらっしゃるのですか?」

「!?」


 予想外の言葉だったのだろう。アルフィード様の目が見開いた。

 そして少し考えてからベール越しだけど、私の額にキスをする。


「!!」


 顔から火が出そうになる私をクスクス笑いながらアルフィード様は耳元で答えてくれる。


「クラウドの婚約者候補は今のところクラリス嬢だけだ」


 その言葉に私は顔を上げた。

 やっぱりジェニーやミートさんが言う婚約者候補はクラリス様で間違いないわけだ。


「そんなにクラウドが気になる?」

「え?」

「クラウドの事ばかり考えているのは妬けるな」


 そう言って今度は私の頬にベール越しにキスをした。


「!?」


 声にならない声を必死で抑え、アルフィード様の胸を軽くポカポカと叩いて首を振り抗議する。


「じゃあ、誰の事を考えていたの?」

「クラリス様と、アルフィード様のことです」


 それを聞くとアルフィード様は眉間にシワを寄せた。

 その顔はとても不服そうだ。


「俺とクラリス嬢とは何の関係もない」


 そう言って私のおでこに自分のおでこをコツンとぶつける。

 顔が近くてベール越しであっても中々の破壊力に私は目を瞑った。

 するとベールの中に手を入れられ、直接頬にアルフィード様の手が触れる。

 思わず体を震わせた。

 これって、まさかキスしようとしてる!?

 ドキドキと心臓の音が聞こえてきて、今にも破裂しそうだ。


「おい!そこ!いい加減にしろ!!」


 クラウド様の声が近くで聞こえ、私は驚いてアルフィード様を突き放した。

 アルフィード様はムッとした顔つきになり、クラウド様を睨む。

 

「クラウド、邪魔するな」

「いやいや、場所を考えろ場所を!!せめて俺の視界に入らないところでやってくれ!」

「僻むな。お前には絶対にやらん」

「僻んでなどいない!いいか、この手の令嬢は誰にでもときめくものだ!」


 クラウド様はそう言って私の顔をぐいっと自分の方へ向けた

クラウド様の真っ赤な瞳が私を捉える。

 何なんなの一体……。

 さっきのドキドキはどこへやら、すっかり冷めてしまった……。

 すると、クラウド様が怪訝そうな顔になる。


「お前、何も感じないのか?」

「?」


 意味がわからなくて首を傾げようとしたが、クラウド様にがっちり顔を抑えられてて動けない。クラウド様の手を離そうと手をペチペチ叩いたがクラウド様は私を見たまま固まっているのか、離してくれない。


「クラウド……」

「!!」


 アルフィード様の低い声にクラウド様はハッとして私から手を離した。

 私は「ふー」と息を吐いて、アルフィード様を見て目を見開く。

 誰だ。彼を鉄仮面などと表現したのは……。

 めちゃくちゃわかりやすいくらい怒ってるじゃん!!

 私はクラウド様からそっと距離を取った。


「あ!こら、シルヴィア!待て!」


 クラウド様が私を止めようとするけれど、アルフィード様がそれを許さなかった。

 

「クラウド。彼女は俺の(・・)婚約者だ」

「それはさっき聞いたから知ってる!というか待て、アルフィード!さっきのは誤解だ!」

「誤解?誤解でお前はシルヴィア嬢を呼び捨てにするのか?」

「怒ってるとこそこ!?」


 何だろう、もはやコントのような光景をどう扱っていいのかわからない。でも放っておくわけにもいかず二人に声をかけようとした時だった。


「アルフィード様ぁ、クラウド様ぁ!」


 二人を呼ぶ声がして視線が自然と声の主へと移動する。

 すると、ウエディングドレスかと突っ込みたくなるようなフワフワとした白いドレスに、金色のクルクルした髪をした美しい女性が嬉しそうにこちらへ駆けてきていた。

 そして迷う事なくアルフィード様に飛び付く。


「アルフィード様ぁ。お会いしとうございました!」

「クラリス嬢……、離してくれ……」


 アルフィード様は困ったように答えるが、クラリス様は離れようとしない。

 私は突然アルフィード様に飛び付かれたショックよりも、何故アルフィード様は彼女を選ばなかったのだろうかという疑問が私の頭の中を支配した。

読んで頂きありがとうございます!

ついに乙女ゲーム内の主人公が出てきました

次もまたお付き合いしていただけたらと思います

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