アルフィード様と舞踏会
閲覧ありがとうございます
気をつけてはいますが、たまに誤字等あります
何かあればお知らせください
きらびやかな装飾、華やかな音楽。人々は綺麗に着飾って我こそはと主張しあっている。
その中でも一際目立っているのは私の隣に立つアルフィード様だった。
白を基調とした正装がとても格好いい。こうして立っているだけでも皆の注目の的だ。
「惚れ直した?」
「!!」
私の視線に気がついたアルフィード様が私にウインクをしながら聞いてきた。
慌てて目を反らすけど、心臓がバクバク言うのが聞こえる。
『ダメだ。アルフィード様は格好良すぎる……』
こんな人が私に婚約を申し込んだなんて夢じゃないかと疑ってしまう。
そう思う度に頬をつねって夢じゃないと確かめていたお陰で頬が少し痛い。
今もそうしようかと手を伸ばしたらアルフィード様に止められた。
「シルヴィア嬢はとても美しい。他の男に見せたくないくらいだ。ほら、皆シルヴィア嬢に釘付けだ」
私は恥ずかしさが限界になって顔を隠すように扇子を広げた。
違います。その視線は皆アルフィード様を見てるんです!!
「もし……」
私はアルフィード様に小声で話しかける。
アルフィード様は首を傾げた。
「もし、皆様が私を見ていると言うのならそれは私ではなく、この素敵なドレスをですわ」
私のドレスは透き通るような青色で作られている。
普段ドレスに興味を持たない私ですらうっとりしてしまうくらいだ。他の令嬢達が見ない訳がない。
また、ベールもそれに合わせて青色で作られていてそれがまたドレスを美しく引き立てていた。
色一つでここまで変わるものかと鏡を前に驚いてクルクル回ったことはアルフィード様には内緒だ。
「そんなことはない。そのベールの下に隠された君の美しさはどんな女性も敵わない。本心を言うとそのベールを取ってほしいくらいさ。黒髪のシルヴィア嬢も素敵だけど金色に近い黄土色が私は好きだ」
アルフィード様が何気なく言った言葉に私は驚いてアルフィード様を見上げた。
『好きだ』に反応したわけじゃない。その前の言葉に驚いたのだ。
黒髪の私。それはシルヴィアではなく、『シル』を指す。
シルヴィアが『シル』という事は家族と一部の使用人しか知らない。留学が多いアルフィード様なら尚更知るわけがないのだ。
それに、黄土色の髪のことを知ってるのは何故?
確かにアルフィード様の前では普通に会話をしてしまったけどこのベールは外さなかなったし、アルフィード様に『シル』のことなど一切話していない
隙間から見えるかもしれないけど、余程目を凝らさないとわからないはずだ。
そういえば、昨日庭でジョージが来たときに言ったあのセリフ。
『心配はいらない。君は今目眩で倒れかけたと言う事で問題ない』
何であんなセリフがでてきたんだろう。あれではまるで私が病弱でないと知っているかのようだ。
「シルヴィア嬢?」
「!!」
アルフィード様に話しかけられハッとした。
曲が終わったらしい。
「すまない。言い方を間違えたな……」
「え?」
「いや、その、さっきのは合っているんだ。ただ、口が滑ったというか……」
「?」
「ま、待て。今言い直す。俺、いや私は……」
何やら一人でオロオロするアルフィード様を見ていると何だか可笑しくなってきて私はクスクスと笑いが込み上げてきた。
「そこ、笑うとこ?」
「だって、アルフィード様ったら一人でオロオロしてるんですもの」
「するだろ普通」
「ならば後程お話してくださいませ。ご存知のこと全て。でないと婚約の話は無しでございます」
本心ではないけれど、そのくらい言わないといけない気がした。
それに、さっきから要所要所でのアルフィード様の言葉が気になっている。
何だろう。ちょっと雰囲気が違う?
「わかった。後できちんと全部話すから、婚約を反故しないでほしい」
「それは内容によりけりですわ」
次の曲が流れ始めた。軽やかなステップの舞踏会らしい曲だ
遠巻きに令嬢達がアルフィード様をチラチラ見ている。
多分、ダンスの申し込みの隙を狙っているのだろう。
「シルヴィア嬢。ダンスの経験は?」
「え?両方とも一通りはできますけど?」
「なら問題ないな」
「?」
「私と踊っていただけますか?」
「!」
そう言ってアルフィード様は私にお辞儀をした。
途端に視線が集まるのがわかった。令嬢達からは断れオーラが半端ない。しかし、譲ってあげる気は起こらない。
病弱と通してはいるけれど、ここは他国だしダンスの一曲くらい平気だろう。
私は黙って了解のお辞儀をした。
ザワ……。
私とアルフィード様が踊る姿を見て人々が更にざわめいた。
それだけ今の私達は目立っている。
「どこでダンスを?」
「母から仕込まれました。両方踊れますわ」
「そうか、お母上の教えが上手いのだな。とても踊りやすい」
「いいえ、アルフィード様のリードがお上手なのですわ。流石慣れていらっしゃいますね」
「いや、舞踏会で踊るのは初めてだ」
「え?」
「いつも職務が忙しいと顔を少しだけ出して帰るか、初めから出席しないからな」
「……、私と一緒ですわね」
「俺達は似た者同士だな」
アルフィード様はにっこりと微笑んだ。
何だろう。顔も声も全然違うのに彼に雰囲気が似ている。
彼とは前世で私が好きだった人。気づくのが遅すぎて想いを伝えられなかった人……。
そんな恋はもうしたくない。
でも、今はアルフィード様と一緒にいたい。もっとアルフィード様を知りたい。そう思った。
「アルフィード様」
「ん?」
「先程から素が出てますよ?」
「!?」
アルフィード様は私の言葉に驚いたようで足がもつれて転けそうになったけど、上手く回避した。
「もしかして、いままでのは王子様っぽく振る舞ってただけですか?」
「……」
「あ、いえ。アルフィード様は王子様なんですけど、そういう意味ではなくて…」
王子様が王子様っぽくとか私は何て失礼なことを言ってしまったのだろう。
私は恥ずかしくて下を向いた。
「令嬢は……」
「!」
「令嬢は皆爽やかで優しい男性が好みと聞いた」
「!?」
「シルヴィア嬢もそうかと思い。それに努めた。本当の俺はそんな人間じゃない」
それを聞いた私は吹き出しそうになった。
必死で耐えた私は偉かったと思う。けれど肩が小刻みに揺れていた事にアルフィード様は気がついたのだろう。顔が段々曇っていく。
「シルヴィア嬢。笑うな。色々とバレるぞ」
「別に笑ってなどおりませんわ」
「じゃあ、何故震えている」
「その、アルフィード様が可愛くて……」
「!?!?」
「痛っ!」
「す、すまない」
今度は完全にアルフィード様がリズムを崩し私は足を踏まれてしまった。
アルフィード様は直ぐに私を抱え、近くの椅子まで運ぶ。
「だ、大丈夫です」
「大丈夫なものか!俺は靴だかシルヴィア嬢はヒールなんだぞ」
そう言って靴を強引に脱がされた。
少し赤くはなっているが、大した事はない。
「冷やすか?」
「このくらい平気ですわ」
「後で腫れてくるかもしれない。今冷やす物を……」
アルフィード様が立ち上がった時だった。
バシッとタオルが飛んできてアルフィード様がそれを受けとめる。
「随分と見せつけてくれるじゃないか、アルフィード」
「クラウド!」
現れたのは赤い髪と目をした青年だった。
やっとこさ、クラウドを出せました
一番早く名前だけ出てきた攻略キャラなのにここまで出番無しという(何と哀れな……)