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ぽっと出女王の恋愛奇譚  作者: ジウ
もうすぐ春ですね
1/16

女王の来歴と始まり

初投稿なのかな?

よろしくお願いします!



──十年前のあの日は、朝から雨が強い日だった。



窓ガラスに打ち付ける雨粒が作る滝を、ぼーっと眺めていたのをよく覚えている。


その日、父様は遅くに帰ってきて、疲れた顔で居間のソファに倒れ込んだ。


その頃は先王が暗殺される前で、まだこの国は平和だった。


雨のせいで寒い日だったから、夜は父様と二人で暖炉の前で勉強をしていた。


もう寝る時間、という頃になって、屋敷の扉が勢いよく叩かれたのだったか。


対応した執事が困った顔で帰ってきたのを覚えている。


今思えば、父様もよくあの子を家にいれたな、と思う。


だが、あの父様の気まぐれがなければ、私は今こうして生きていないかもしれなかった。




✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤




「キャシィ様、おはよー!」



部屋に元気な声が響き渡る。

今日も子供たちが遊ぼうと誘いに来たようだ。



「おはようみんな。今日も天気がいいねぇ、春だ」


「うん!あったかいから、丘の上でなわとびをしようと思うんだ!キャシィ様も行こうよ!」


「よし、乗った。なんなら、大縄跳びをしようか?私が回し手をやろう」


「やるやる!」



子供たちと一緒に走って丘を登り、大きな縄で遊び始める。


こんな生活を始めて、今日で十年。


あの日9歳だった私は、この間19歳になった。


結婚適齢期真っ只中、花も羨む乙女。


そんな私は今日も男の子のようなズボンを履き、村の子供と遊び呆ける。


それは全て、私が待っているもののせいだった。



「カトレア様」



ただ一人私についてきている侍女のサラが、音もなく近寄ってきていた。



「……どうしたの、サラ」


「村長が情報を手に入れました。王宮はあなたを探しているそうです」


「そう。遅かったわね」


「ええ、想定より一ヶ月ほど遅いですね。しかし、十年待ってやっと彼女の予言が本物になります」


「ええ、そうね……今日当たり来るかしら?」


「どうでしょう。新しい宰相は若くして有能と聞きますから、もしかしたらもしかするかもしれませんね」



ああ、待ち焦がれた時がやっと来る。


あの子と私の約束が、やっと果たされるのだ。




私が暮らすレインディア王国は、嘗て『獅子の王』と呼ばれる王が治めていた。


彼は自らの醜い容姿を疎んで常に獅子の仮面を被っていたが、そのカリスマ性で国を一つにまとめ、様々な政策によって国力を増幅した。


国民からの支持は絶大で、外国との仲も良く、本当に良い時代だった。



しかし、転機が訪れる。



直轄領で狩りの最中、何者かによって獅子の王は射殺された。


もらったばかりの王妃はまだ世継ぎを産む前で、強力な指導者を失った国は荒れに荒れた。


後継者争い、政権争い、貴族達はいくつもの派閥に分かれ、くっついては離れを繰り返して血みどろの政争を繰り返し、国力は地に落ちた。


この時他国に攻められなかったのは本当に幸運、奇跡に近いが、実際は獅子の王に心酔していた友好国の王たちが粉骨砕身守ってくれていたのだった。


その後政争は数年にわたって続くが、最後まで足掻いていた権力者が互いに毒を贈り共倒れしたことによって終結を見る。



それが一年前の話だ。



それからは生き残った猛者達が四苦八苦しながら国をなんとか立て直し、嘗ての栄光を取り戻そうとするが、気づけば正当な王族は皆墓の下だった。


近親の者は権力争いで暗殺され、どうしたものかと途方に暮れた時……



時の宰相が、さる人物が未だ生きていることを知る。



さる人物とはこの私のことで、私は故王弟アレクサンドル公の一人娘、カトレア·イヴォンヌ·ド·アレクサンドル。


正当なる王族とは、私のようなもののことを言う。


王族の証は銀髪に青い瞳、私の髪は美しい銀髪で、瞳は夜空の色だった。


この十年間暗殺もされず村の子供と遊び呆けていられたのはひとえに父の友人のおかげで、この村もただの村ではなかったからだ。


本来ならば国外へ亡命すべき私が、国内でのうのうと隠遁生活をしている理由は、やはりあの子のおかげ、なのだけれど……


恨みつらみも感謝の言葉も、全ては彼女と再会してから言うべきなのだろう。




✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤





「キャシィ様、村の外に変な奴がいる」



翌日、例のように遊んでいると、子供のひとりが私に言った。



「どんな人?」


「なんかね、きれいな服を着たひと、でも隠れてこそこそしてる。こっちを見てるよ、どうする?」


「大丈夫だ、きっと私を見に来たんだ。偵察が来るってことは、私もそろそろこの村とはお別れってことだな」


「えっ、キャシィ様お別れ?!」


「そうだね、祝ってくれる?」



もちろん!と笑った子供たちは、本当に嬉しそうに笑った。


村ぐるみで私を守ってくれた彼らは、すごくいい人達だと思う。


それから二日続けて偵察がやってきて、三日目、王宮から使いが来た。


宰相様からのお手紙で御座います、と綺麗な封筒を渡され、中を見れば『貴女がカトレア様でよろしいのか』だの、『女王になってもらえないか』だのしちめんどうくさいことが書いてあったので、便箋に大きく二重丸を書いて送り返した。


たかが19歳の小娘が女王。


たが、安心してほしい。


私は、前世も合わせれば80過ぎのババァである。




あの子と相対した時、私はすべてを思い出した。


そう、前世の記憶を。


その記憶はとても大きく多く重く、私は衝撃でぶっ倒れた。


三日三晩眠っていたそうな。


あの子も己が前世を思い出した時は同じくらい寝込んだらしく、大変だったねと二人で言い合った。


私が転生したのは、前世で私がやっていた乙女ゲームの世界と酷似した世界。


私はそれを知った時、狂喜乱舞した。


前世の私はカタブツで、真面目で、勉強だけが友達だった。


しかし人から信頼されることだけはとても得意で、指揮を執るのもうまかった。


そんな私は政治に興味を持って女性政治家となり、クリーンな政治で国民の方々の支持を得たが、……長年の不摂生が祟ってガンになり、あっけなく死んだ。


けれど死ぬ時はいろんな人から感謝されたり泣かれたりして、とても幸せだったのを覚えている。



だからこの転生は、神様がくれた奇跡なのだと、今でも信じている。



案ずることなかれ、そういうわけで私は政治には精通していて、ぽっと出の小娘がやっと落ち着いた国をぶち壊す、なーんてことは絶対にありえないのだ。



政治家として生きていた私は、出会いなんてなかった。


悲しいかな、政治の世界は7割がオジサンなのだ。


私がオジサン好きならば良かったのか、いやそんなことはないだろう。


私は2次元に走り、一日に合計30分あるかないかの自由時間で女子の萌え要素を極限まで詰め込んだ『乙女ゲーム』をプレイしていた。


中でもハマっていたのが、今私がいる世界とそっくりの『ぽっと出女王の恋愛奇譚』。


いきなり女王になった主人公が政治と恋に翻弄される、まさに政治家な私TUEEEEなゲーム。


もう、神様ったら!I LOVE YOU!!!


私は決めた。


この世界において、最高の女王になってやる。


そして国を大国に仕立てあげ国民に愛され、ついでに神がかった美しさのイケメン達と結婚してやるのだ。


私の野望は大きいぞ。


その為ならば、私は改革でも何でもしてやろうじゃないか!


その夢を胸に、私は十年間暮らしてきた。


とうとうその夢に向かって第一歩を踏み出す日。


それが、今日だ。




✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤✤




今日も朝から子供たちと、丘の上で遊んでいた。


麗らかな日和、小鳥の鳴き声がくすぐったい。


子供たちはどことなくそわそわしていて、時折チラッと村の入口を見ていた。



昼前、それはやって来た。


村の入口に繋がる道をやって来る四頭立ての立派な馬車、お付きの者か、馬に乗った仮面の男が村へ入って来る。


村長に案内され仮面の男が私の前に現れた。


遅かったなぁと思いながら、私はフッと笑った。





僕はその日、宰相からの密命を帯びていた。


『カトレア·レインディアが女王に相応しくない者だったならば、その場で殺せ。』


王族は既におらず、探して探してやっと見つかった正当な王族。


彼女以外には2人ほどしか見つかっていないのに、相応しくなければ殺せときた。


どうかまともな人であってくれ、秀才でなくていいからせめて普通の人であってくれ。


冷や汗をかきながら丘を登り、待っていたのは子供に囲まれた青年。


……青年?



「やぁ、遅かったね」



彼?はそう言って、ニコリと笑った。


……いや、違う。


髪を結っているだけで、完全に女性だ。


陽の光を浴びて眩しく輝く銀髪、双眸はサファイアの輝き。


キリッとした眉とちょっとつり上がった目は、気が強そうな雰囲気を醸し出す。


滲み出る覇気、王者の風格。


嗚呼、彼女こそ王に相応しい者。


僕は宰相が小躍りする夢想をして、心の底からほっとした。



「……カトレア·イヴォンヌ·ド·アレクサンドル様で、宜しいですね」


「ああ、そうだよ」


「…あの、」


「言っておくけど、私は正真正銘女だよ。動きやすいからこんな格好なだけで」


「そうですか…」



正直言って驚きだ。


国内の、しかもこんなのどかでしかない村に隠遁とは。


あの異常なほどまでに隠されていた王女が、こんなところにいるとは。


驚きが隠せない僕の心情を察したのか、彼女は話し始めた。



「父はヴァリエール公と仲良しでね。この村は、ヴァリエール公が手塩にかけて育てた、最強の村なんだ」



さっ、と子供たちが動く。


手には、隠し持っていたらしい暗器。



「一見普通の村だろう。でもその実、女子供までが護衛と暗殺に長けたアサッシン。

ほんとはフリューゲルにでも亡命しようかと思っていたけれど、父が話をつけてくれてよかったよ」



さっと彼女が手を上げると、子供たちが彼女の前に跪いた。


ゆっくりと、僕と彼女の距離が縮まる。



「私はカトレア·イヴォンヌ·ド·アレクサンドル。レインディアの女王になる者です」



そうして、美しい顔でふわりと微笑んだ。



「やっと迎えに来てくれたのね」




頑張って書くぞ……

こんな感じで進めていきます、次回次々回あたりはカトレアちゃんがもっと可愛くなってくれるはずです。

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