Robot&Fleet
今日も元気に機械製造頑張るぞー!
って言っても、これだけ量はしんどいな。
ハルさんには任せておけば大丈夫と言ってたけど、安心は少しもできない。
アニメの見すぎか、ここにドルガナかカリストアのスパイでもいないかと心配してしまう。
でも、確実にまた攻めに来るだろう。
軍事大国と言うなら相当な戦力を持っているはずだし。
出来ればドルガナの戦力がどの程度か知りたいもんだけど、カイルですらほとんど知らない。
この前のがほんの小隊規模なら、全勢力で攻め込まれたら、全世界の軍隊を持ってしても勝てないだけの数はあるだろう。
今一番必要なのは、一機で敵を何千機も倒せる機械だ。
でも、これから勝手に機械を造るのが難しくなるかも知れない。
普通に考えて、あれだけ大きな艦を三隻も飛ばせばいくら離れたところでも見える。
戦いが終わって帰ってみれば、ハルさんが、あの艦は何だったんだ、何があったのか、どうやって飛んでいるんだ、と多々質問攻めにあっていた。
何を聞かれてもその場に適したことを正確に答えれるのはハルさんだけだし 、僕たちが近づくと余計な事を言いそうだったから、その日は近づかないようにした。
防護壁内には旧国軍の小規模な駐屯地がある。
そこから何人か人が来て、機械を寄こせだの、仕組みを教えろだの言ってきた。
確かに国の軍隊だから渡すのが通りなのだろうけど、どうせ渡したところで動かせるものではない。
動かし方を知らないんじゃなくて、全機個別の鍵を付けているからどうやっても動かせない
その鍵は、操縦士そのものだ。
もちろん、最新機ぐらいしにかそれは搭載してないから、一番性能の悪い旧型の機械を渡した。
あの機械なら、現存する兵器ですら余裕で勝てるだろう。
だが、こちら側で隠すている約数十機では相手にもならないだろう。
現時点でさえ、一番性能のいいものだと、その辺の戦艦の主砲弾や徹甲弾でも歯が立たないし、ICBM程度でも軽々と避けられ、もちろん止めようと思えば簡単に止められるほどだ。
ただ、それだけ表向き性能がいいと、いろいろ不具合が生じてくる。
最初は、装備を持たせると関節がぶっ壊れたり、出力が強すぎて機体が持たないこともある。
実際、この前のドルガナとの戦いの時も僕が一人で突っ込んでいった結果、敵は引いとけど、もう少し遅かったら機体が壊れて負けていただろう。
機械改良は何かと難しいと気づかされる。
どこか改良すれば他の場所に不具合が出て、そこを改良すればまたどこかに不具合が、というふうに繰り返す。
この改良具合と不具合の調整が難しい。
不具合だってあれば使い道はきちんとあるんだから。
「かけるん!一番から八番まで完成したけどどうす...」
「やっぱりレンレンは髪を切った方が良いって。こうなるんだよ、誰がどう見てもかわいいじゃん。あ、でもこれ以上可愛さが増したら、誰かに取られるかもしれない。でもやっぱレンレンは可愛くないとレンレンじゃ...」
「可愛いって言うな。それにお前のものみたいに言ってるがいつ俺がお前のものだといった。大体、こんなに変なのはお前だけだ。イクやコイはお前みたいなことをするわけがない」
また朝からじゃれあってる。
いつも朝はこんな感じだ。
かけるんもなかなか懲りないなとは思うけど、レンレンも嫌なら嫌でもっといやがればいいのに。
「朝から騒がしいね。かけるん、心配しなくても誰もレンをとったりしないから。少なくとも俺とイクは大丈夫」
え、どういうこと?
いっくんは幼馴染だからその辺は分かってくれてるとしても、なんでコイもなんだ。
多分レンレンが好きになることはないと思うけど、言い切れる理由なんてないはずだ。
現状、一番ライバルになりそうなのはハルさんだけど。
生徒会長になるだけあって、勉強はもちろん、運動神経抜群で周りのことも気にかけてるし、それでいて気取らないし。
大体は僕と真反対だから、勉強も運動もろくにできない僕なんか、レンレンにいつ捨てられるかわからない。
「で、さっきいっくん何か言おうとしてたみたいだけど、何の用だったの」
「えっと何だったけ。そうそう、かけるんが造れって言ってた、機械が完成したって言いに来たの。かけるんってば朝からレンレンといちゃついてばっかでろくに何もしないんだから。僕なんか...」
「ごめん、ごめん。ちゃんと言ったとおりにしてくれた?」
「することないんだしするに決まってるじゃん」
いった通りにというのは、次のドルガナとの戦いに備えての装備についてだ。
僕たちの見解では、あれはあくまでここの防衛レベルの偵察だとして、本隊はもっと変わった機体やこちらの機械の性能を凌駕するような機械が出てくると見ている。
せめて、旧国軍や何か他の部隊が生きていればいいのだが、魔獣のせいでなかなか連絡が取れず、生きているかすら分からない。
生きていれば、支援に来てくれてるはずだからあまり期待はしてないけど。
「カイル、カリストアならまだしもドルガナに攻められてるの」
「確実なことは分からへん。やけど、一つ確かなのは、ドルガナとカリストアは敵対しとるってことだけやで」
「その微妙な京都弁まだ続けるの?」
「楽しいさかいよろしおすやろ」
「そう。京都に友達いるさかい何言いたいのか分かる。そやかて、何で大阪弁やのうて京都弁なんや」
ああ、しんどい。
京都弁なんか今まで使ったことがあるわけないし、適当にいってるけど、合ってるのかな。
アニメとかで良く聞く風に言ってるだけだから多分所々おかしいだろうな。
僕はおもいっきり大阪生まれだし、京都なんて記憶にあるかぎり行ったことはない。
京都なんて道が狭くて観光しにくいというイメージしかないので、行こうとも思ったことがない。
という訳で、京都には一切興味がないわけだ。
と、京都弁等々に関する話は置いといて。
この前のドルガナが地上まで来たときのために、色々設備を急いで整えた。
各防護壁上には、対空機関銃を多数設置し、無人戦闘機を近くの池から発進出来るようにした。
他にも色々設置したが、防衛施設としての機能はさほど期待していない。
設置したから分かることだが、対空機関銃に関しては、今ある機械でも避けられるほどの性能で、無人戦闘機は攻撃さえ防げれば何てことはない程度だ。
ではなぜ設置したのかというと、あくまで住民と生徒会の気休めだ。
あれば大丈夫だろうと思えるし、『分かっていたはずなのになぜ設置しなかったんだ』とか言われずに済む。
恐らく効果がなくても言い訳は、敵の期待の性能が予想以上だった、とか言うんだろうし。
そういうわけで設置したが、もちろん本当の防衛装備は機械だ。
一応、宇宙母艦と言えそうなものもあるにはあるが、攻撃手段はビームライフルとかしかない。
ドルガナの素早い機体には当たらないだろうし、攻撃されたら防御力皆無の母艦にはひとたまりもない。
一番大事な問題は、いくら魔法があるから言って、物理法則に逆らう可能性があるものは、レンレンには造れないことだ。
確かに魔法を使えば造れないわけではないが、レンレンがそれを嫌がる。
僕にはレンレンの嫌がることをさせるのは無理だ。
他の人なら、イクやコイでも外装の組み立てくらいは出来るが、さすがにメインエンジンまでには手を出せない。
でもレンレンなら新しい原動力を作り出せるほどの技術を持ってる。
次はどんな性能の機械を造ってくれるのか楽しみだ。
無論、デザインは僕がしなきゃいけないんだけど。
いつまで、ドルガナは僕たちを平和にして置いてくれるのかな。
「緊急!緊急!火星軌道上に隕石2接近中。大きさ2.5×5.0。衝突予想地は、剣零第一防護区画中央部」
嘘だろ、あそこには第一区画には特魔対の生徒が数千人いるというのに。
「ハルさん、生徒と教職員に避難指示。第二区画の地下シェルターに避難させて」
「了解!かける、シェルター耐えるのか」
「大丈夫。耐久性に問題はないから。衝突後の学校をどうするかが問題だけど」
「一個聞いてなかったんだけど、衝突予想時刻はいつ」
「あと10分だね。かなりの高速だと思うけど」
「ドルガナかカリストアの攻撃じゃないの?」
そうか、その考えもあったな。
普通に隕石がドルガナかカリストアと一緒にワープしてきたのかと思ってた。
本来この程度のサイズの隕石なら焦る必要はないのだが。
「隕石は正体不明の生命体と確認。大気圏ないで燃え尽きる確率1パーセント以下」
隕石が落ちてもあのサイズなら第一区画に落ちれば防護壁は耐えられる。
防護壁はそう簡単に壊れるものじゃない。
短距離ミサイルや大陸間弾道ミサイルですら傷一つ付かない代物だ。
墜落まであと一分か。
正直言って、すべてシュミレーションでしか分からないし、実際どうなるかはなんとも言えない。
死傷者がゼロであることしか祈れない。
隕石が堕ちてくるのが良く見える。
少しも曲がらず真っ直ぐこっちに向かってきている。
「かけるん、レドニアから通信。繋げるよ」
『連絡が遅くなりました、レドニア大統領オースティン・カーソンです』
「それどころじゃないんであとにしてもらえますか」
『今堕ちてきてるものなら大丈夫です。墜落寸前にちゃんと浮遊して止まります』
は?
かなりの速度で堕ちてきてるのにどうやって止まるっていうんだ。
「墜まで10秒。9、8、7、6、5、4、3、2、1」
わあっ、すごい暴風。
さすがに飛ばされそうだ。
ってあれ、本来来るはずの振動が来てない。
まさか本当に浮遊してるのか。
「全員大丈夫?怪我ないね」
「ハルさん、レドニア大統領との通信を任せます。僕たちは墜落物の調査してきます」
「いいんですか」
「何がですか」
「貴方だって、ああいうのには興味があるんでしょ」
「どうでしょうね、貴方みたいに自由奔放な人間ではないですからね」
「そっちの方は楽しんでるか」
「貴方に心配される覚えはありませんが、父さん」
父とは別れてもう10年ぐらいになる。
小さいときに俺を施設に預けて消えてしまった。
まさか、何百光年も離れた星にいるだなんて思っても見なかったが。
でも、どうやってそっちに行ったんだ。
まさか逆なのか。
○第一区画○
一体何が落ちたんだ。
危険なものでなければいいんだけど。
結構なサイズの穴が空いてるな。
恐らく、一旦浮遊してたけど、時間がたって落ちたんだんだろうけど、それにしても大きすぎる。
半径五百メートル位の穴が開いている。
第一区画は直径一キロあるから四分の一が穴になっている状態だ。
もちろん、学校も生徒寮も教員寮も何もかも暴風で壊れてなくなっている。
明日から学校どうするんだよ。
幸い居住区に落ちなかったから、なんとか避難は間に合って怪我人はいないようだ。
「かけるん、あれ見て。かけるんとレンレンが好きそうなものが見えるよ」
「わあ、なにこれ、何でこんなものが落ちてきたの。ねえ、いっくんこれもらってもいいよね。見つけたの僕達だし」
「そうだ、見つけたのは俺とカケルだ。俺がこっちでカケルがあれだ」
「えー、こっちが欲しい。レンレンあれでいいじゃん」
「それより、これの安全確認が先じゃない?レンレンもカケルと一緒にはしゃがないの」
「ヒャッホー!テンション上がる!よし、とりあえず機械に対する礼儀はきちんとね」
(僕たちの所に来てくれてありがとう。これからよろしく)
「おいカケル、どうやって運ぶつもりなんだ。ここに置いてても邪魔だから、第四区画に移動させないといけないんだぞ」
「それはレンレーー」
「俺は知らない。カケルが考えてると思ってた」
そこだけ放置なの。
ちょっとひどくない!
「ねえ、機械が都合良く変型してくれないかな。しなくてもさせるとかさ」
「カケルこんな金属が加工できると思ってるのか。そう簡単に曲がるものじゃない」
「ならどうやっーーなっ、何なんだいきなり動き出した!」
機械がいきなり立ち上がったと思えば、変型した。
これはいいな、変型というアイデアは無かった。
変型させれば収納場所にも困らないし便利だな。
変型するのはいいんだけど、ヘリコプターに変型されても誰も操縦できないんだけど。
ここにいるのはみんな18未満だし、まあ車だったら不可能じゃないんだけど。
「君たち、私の事を忘れたんじゃないだろうね。あらゆる資格と免許を取得したこの私を忘れたとは言わせないよ」
「何だ、冬夏さんか。今は用はないから別にいいよ」
「カケル、あいつなら動かせるんじゃないのか。どうせヘリコプターの操縦免許も持ってるだろ」
「冬夏、そうなのか」
「ヘリコプターなんか簡単だぜ。コイが君たちを迎えに行ったときの操縦は誰がしてたと思ってるんだ?」
「それで良く揺れたのか。納得、納得」
「あいつが操縦しても良いのか?嫌なら他のやつを探すけど」
「......」
当たり前だが、機械が喋るわけがない。
だが、いっくんにはそれができる。
よく、その辺の自動掃除機話してる。
何が楽しいのか分からないし、端から見れば異様な光景だけど、本人は楽しそうだし、本当に話してるのかもしれないから、どうこう言えない。
動物とは話せないけど、機械とは話せるんだ。
動物と話せるやつもいたような気はするが、今はいいか。
(ふうん、そうか。分かった)
「操縦は冬夏さん、任せます。第四各区画第二ヘリポートが空いてます。そこに停めてください。くれぐれも気をつけて」
「で、君はどう変型するの」
「......」
うぉう、戦闘機か。
いや、こんなとこで飛べないし他のにできないのかな。
「貨物機とかに変型できないのかな」
「......」
「さっすがいっくん。てか何で機械と話せるの。話し方教えてよ」
「話してるんじゃないよ。なんとなく気持ちを伝えてるの。それに方法も何も、勘だから無理だよ」
何だ、勘だったのか。
勘だからって、かなり凄すぎるとも思えるんだけど。
って、あ。
一つ大事な事を忘れてた。
「これ、誰が操縦するの?」
『あ......!』
誰も操縦できないし、冬夏さんはもう行っちゃったし。
「みんな、何を相談してるの」
「ハルさん!この機械の運び方です。誰も貨物機とか航空機全般運転できないんですよ」
「何だ、そんな事か。結局は航空機が運転できればいいんだろ。家のプライベート機があるから大丈夫。操縦方法は習ったし」
うわ、さすが生徒会長。
だからって金持ちにも程があるだろ。
俺なんか今自家用車の費用を集めるのに必死なのに。
「ハルさん操縦お願いします」
「おう、任せろ。場所は第四ヘリポートだろ。間違えないから大丈夫だって」
「KOBから貨物機が来るから第三には停まるなよ」
「はいはーい!」
○Dorganna○
ドルガナでは、余裕で攻略できる予定だった惑星が、予想以上に手強く、損害も大きくなった事を受け、会議が開かれていた。
もう一度攻め込むか、しばらく時を空けるか。
いずれにしても、諦めることはないのだが。
「何を今さら。これだけの準備をしておきながら、諦めるというのか、君は」
「諦めるとは言いませんが、対策を練らないと勝てないと申しているのです」
「私では勝てないというのか」
「防御では勝るものがいないものでも手強いのです。あなたでは到底力が及ばないでしょ」
「では、私が出よう。私の機体なら、あの速度にも追い付ける」
ドルガナ最速の機体である、ノアの機体なら、速度は本気を出さずとも剣零の特魔対には勝てる。
もちろん、武器でも同様のことが言える。
ノアは王族の血を引く者であり、ドルガナ国内で最強の騎士であると言われている。
ノアの艦隊は、国力ではレドニアに圧倒的に劣るドルガナが互角以上に戦える理由である。
「必要とあらば、我々もご同行しますが、如何なさいますか」
「必要ない。私一人で充分だ」
魔獣の進攻で思うように動けないはずの剣零に攻め込むのは今しかない絶好の機会だ。
これを逃すと、剣零の魔獣の対策は完璧になり、そう安易に攻められなくなる。
「ノア、ヘルツェン、アークアウト」
アークアウトとは、ヘルツェンの待機場所をアーク(=方舟)と考え、そこから出るという意味だ。
簡単に言えば、単なる出撃だ。
○第四区画○
運んで来たのはいいんだけど、どうにも簡単に分解出来そうにもない。
素材的にも無理だし、出来たとしても確実に機械に変型して近づけない。
まだ、この機械が来るのは早かったのかもしれない。
数ヶ月経てば皆にも扱えるようになるかもしれないし、今はここに置いといて、普通に輸送機として使うしかない。
後で分かった事だけど、操縦士がいなくても、目的地さえ決めれば、自動で飛んでくれた。
今はあの機体の開発に専念しないとな。
あれは僕とレンレンの二人のためだけの機体だから。
僕とレンレン、二人が一緒に操縦しないと動かせない機体だ。
普通なら不便きまわりないが、僕とレンレンなら、とてつもなく強力になる。
レンレンと二人ならどんな機体でも強いけど、専用機ならその数十倍の性能を発揮できる。
どんな二人組よりも、双子のコイとイクよりも、レンレンと僕の二人組が強いと断言できる。
「レンレンー、例の機体はどうなった?」
「どうって、複雑過ぎて造りにくい。完成はするだろうが、本当にこんなのを動かせるのか」
「それは、レンレンと一緒に乗るから大丈夫だって。二人でやれば出来無い事は何も無い、でしょ」
「俺とお前が乗るのか。そんな事聞いてないぞ。俺はイクとコイが乗るんだと思っていた」
「あー、今言ったかな。ごめん、レンレンに伝えてるの忘れてた」
「ちょっと良い?またなんか変な機体が来てるよ。今度は前よりも速いやつ」
「それは恐らくノアじゃないかな。あいつ、まだ生きてたんだ」
な、カイル、お前はどこから出てくるんだ。
最近、いろんな所から出てくるから大体は慣れたけど、整備中の機体から出てくるのはまだ無かった。
いつもは、勝手に僕の部屋や生徒会室に入ってたり、倉庫の機械を触ってたり、整備中の機械には触れることはなかった。
整備班がいるってのにどうやって入ったんだ。
「おい、整備中の機械に入るな。機械が壊れたらどうするんだ」
レンレン、機械の心配も大事だけど、カイルの心配もしてあげて。
カイルが怪我をするなんてあり得ないけど。
レンレンが機械の心配をするのもよく分かる。
過去に、カイルが興味本意で機械を触って一機壊したことがある。
それから、レンレンは特にカイルが機械に近づくのを嫌う。
カイルが機械に触れば、レンレンが魔法でカイルをよく攻撃していた。
レンレンの魔法は高出力な割に正確で、僕も時々受けるけど、避けるなんて不可能だ。
「で、ノアにも前みたいに勝てるの?」
「無理だな。あれはカケルの機体が五十倍速くなれば追い付けるほどの物だ。ドルガナ最強の騎士だからな」
「じゃあ、剣零最強の騎士なら勝てない訳じゃないかもね。よし、無人機を前と同じように、有人機は旧国軍の旧型が出てくるのを待って、いつでも出撃準備」
「カイル、一ついいかな。敵が強いなら新しい武器もいるでしょ。こんなのも勝手にだけど造ってみたから良かったら使ってみて」
「さっすがハルさん。やっぱり役に立つ男はいいね」
「カケルが役に立ち無さすぎなだけじゃないのか」
「それは言えてる。指示を守らずに勝手に動くからね」
「カケル、俺と約束しろ。絶対に死ぬな。怪我を一つでもしたら、出撃はもちろん、機械に触れることも禁止だ。たとえ、俺が死にそうになってもだ」
そんなのことレンレンに言われたら守るしかないけど、守れる自信がない。
「それはかけるんには無理じゃない?レンレンとの約束を破ってでもレンレンを助ける。それが大切なものを守る人ってもんじゃない?」
「いっくん...じゃあ、レンレンのために全部ぶっ壊して、全部もらって、僕のものにしてから、レンレンにあげる。それで文句無い?」
「お前が何をしようが俺には関係ない。だが、お前が死ねば俺は居場所がなくなる。そんなことにはするな。死ぬときは俺もお前も一緒だ」
レンレン...
やっぱり、こういう所好きになる。
いつも無愛想な癖に、時々喜ばしてくれる。
何があっても離せない大切な者だ。
僕にとっても、レンレンがいなくなれば、この世で生きる意味がなくなったのと同じ、いやそれ以上だ。
最近はあんまり無いけど、レンレンがいっくんかコイの所に一晩だけでも泊まると、その日の晩全く寝れなくなる。
まあ、今じゃ離れて寝るなんてあり得ないし、お互いそんな事出来ないのも分かってるから、泊まることは無くなった。
「君らさっさと準備したらどう?本当、旧国軍の連中は単純で助かるわ。この前の機体で出撃するみたい。援軍要請来てるけど、どうする?」
「聞くまでもない。レンレン、新型機の技を見せてやろう。僕と」
「俺は」
『二人で一つ!』
○Dorganna○
最近、カリストアとどっかの星とも戦ってるせいで、休みがあんまり無い。
僕だって...暇さえあれば恋愛くらい...
相変わらず、そんな余裕すら無いんだけど。
でも、一応好きな人はいることにはいる。
よくある『叶わない恋』なんだけど。
初恋なんだから、そういうのも悪くはないとは思ってる。
どうせ僕なんかにまともな恋なんて出来やしないんだから。
せいぜい出来ても、一方的な片想いで終わるだろう。
「また...あの変な星に行くんですか...」
「もちろん。上は侵略のつもりみたいだけど、誰があんな機体を造ったのか知りたくない?」
「僕は...他人が何をしても気にしません...僕の事もほっといてください...」
「千里が良くても、俺が良くないんだ。そうだね、彼女でもいるんだったら話は別だけどさ」
「それは無理です...」
だっているからって、星にいうなんて出来ない。
言ったら絶対にからかってくるし、鬱陶しいし。
「今回は侵略はしないみたいだから、楽に行っておいで。機は抜かないでね」
「夜は何してるんだ」
「俺は上と論争してくるだけだが」
「なら、給料あげるなり、何か対応をよくしろと言っといてもらわないとね」
「星、別行動をしてください。決して貴方と一緒にいたい訳じゃないです。ただ、少しも向こうでしたいことがあるだけです」
「そうだなー、千里が行くまで大人しく言うことを聞いてくれたら、千里の事も聞いてあげようかな」
う、なんか嫌な予感がする。
星が語尾に『かな』を付けるときは、いつも良いことがない。
かといって、何を言っても僕の負けは決まっている。
「貴方の望みは何ですか」
「剣零の機体を一機もらってきてくれる?それだけ。あ、でも盗んだらダメだから。それと傷一つ付いててもダメだからね」
ひどい、近づくだけで精一杯なのに、機体を盗めって。
盗むんじゃない、もらうんだ。
そう簡単に戦争の敵対国に機体をあげるものかな。
僕なんかに誰かを騙すなんて出来ないわけだし、だからと言って拒否権はない。
拒否すれば、どうなることやら、考えるだけで恐ろしい。
まあ、王族の妨害をすれば大変なことになるだけだから、極力ばれないようにしないといけないわけだし、自分のためだと思って言うことを聞くしかない。