BUILT&REVOLUTION
魔獣がいる世界なんてあり得ないとずっと思っていたけど、実際体験してみれば普通と何も変わらない。
確かに普通の動物よりは、気性が荒かったり、犬や猫なんかでも食べてしまうのは少し困る。
でも、魔獣には魔獣なりの可愛さも十分ある。
僕からすれば魔獣だからと言って、特に何かをするというわけでもないし、昔の誰かさんに似てて面白い。
レンレンに半強制的に自動採掘機みたいなものを造ってもらったら、あまりに性能が良すぎて、数日後から始める予定だったロボット製作がたったの一日で始められそうだ。
僕にはロボットのデザインだけなら、アニメの見過ぎでそれなりにできるけど、さすがに内部までとなると、僕には到底無理だ。
物理とかは苦手だし、数学も嫌いだ。
できることといえば、生物だけだと思う。
でも逆にレンレンは僕と違って、物理も数学もそれに英語もかなりできるし、うらやましい。
ということで、レンレンには僕がデザインをする代わりに、内部設計は任せることにした。
レンレンに教えられながらでもできなくはないと思うけど、レンレンが一人でやる方が、早くそして性能もよくなるだろうから。
「レンレン、僕は一人で新型のデザインを考えるから、あとは任せるよ」
「それはいいが、大丈夫か。最近無理をしすぎているようにも思うが」
「え、そんなことないよ。いつもあんまり仕事をしてないからそう思うだけ。僕はそばにレンレンがいればこの通り元気だよ」
確かに、いきなり生徒会役員になった分、疲労が増えたのは間違いない。
でも、この程度で疲れただなんて言えない、ましてやレンレンがそばにいるのに。
「かけるん、ちょっと話があるんだけど」
「いいけど、自室でもいい?部屋に忘れ物したから」
自室で話しをしたいのは、生徒会室じゃできないからじゃなくて、僕がかけるんと話が終わったら、少しだけ寝たいからだ。
生徒会役員?になって約一か月経つけど、みんなほどまだ慣れてないし、ここ数日は全く寝てない。
数年前なら、数日くらい寝なくてもなんてことなかったのに。
「前言ってた、黄金比に並んだゲートのことなんだけど、最近場所が変化してて、昨日の時点でこうなってた」
「これ、どういう配置?」
「黄金比に並べた状態から、奇数番目だけ残したもの。数が減った分、範囲が大きくなってる」
「ということは中心は相変わらず、ここか。向こうはいったい何がしたいんだろう」
「確かに、もう攻撃を受けていてもいいころなのに、魔獣も増えず、何も変化がないからね。一応、二十四時間第八惑星軌道上に敵か何かが通らないか監視してるんだけど、静かすぎるくらい何も通らないよ。どっちかというと、不気味だよ」
第八惑星軌道上監視機はもともと、超長距離天体観測望遠鏡だったから、肉眼で見えない距離を赤外線とかで見るだけのものだ。
だから、監視をするのに適したものとは言えないけど、ほかに代用ができるものがない今、それに頼るしかない。
でも、静かすぎるっていうのは、まさか...いや、そんなはずはない。
カイルから聞いた話じゃ、ここまで来るのに高性能ゲートを使っても三か月はかかるらしい。
さすがにそんな前から、来てるわけ...
「いっくん、レンレンとハルさんに伝えて。えっと、このロボットを最優先で製作。三日以内に」
「これを三日以内にできるとは思わないけど、どうして。まだ敵は来てないんでしょ」
「向こうがこっちより科学技術が発展していたら話は別。赤外線なんかじゃ、敵は見えてないかも。もしかしたら、もう来てるかも。とりあえず急いで...」
「大丈夫か、カケル。カケル...カケル...ケル」
ダメだ、今寝たらいっくんにも迷惑がかか...
「あれ、なんで僕ベッドなんかに」
「無理しすぎ。貧血気味だよ。夜中も寝ずに一人で仕事してるからそうなるんだよ」
「レンレンにはこのことは言わないで。言ったらなんていわれるか」
「大丈夫。言わないよ。それより、もう寝なくて大丈夫なのか」
「二時間も寝れば三日は動けるから、嘘だけど。ま、今日は早く寝るから何とかなる。頼んでたことは?」
「三日もいらないって。二日あれば全部できる。それと、量産型戦闘機を載積する空母も一緒に作っとくってよ。あとは、なんだったけな。そうそう、カケルの言う通り監視網を突破してるかもって」
あ、完全に忘れてた。量産型を造ることは覚えてたけど、それを宇宙に持っていく方法を考えてなかった。
多分敵は宇宙から攻撃してくるはずなのに、レンレンが気付いてくれなかったら、僕はどうするつもりだったんだろう。
やっぱ、レンレンがいないと何事も完璧にはできないんだな。
レンレンは一人じゃ、僕ができないことしかできないのに、なんで一緒にいるとなんでもできるんだろ。
僕とレンレンンは二人で一人。
今はそういうことにしとこう。
「カケル、大丈夫か。レンはお前のことよりも量産型製造に集中してる」
「それなら、よかった」
「かけるん、心配されなくて寂しくないの」
「だって、僕との約束を守って造ってくれてるんだから」
「カケルって単純。レンがカケルとの約束を破るわけないじゃん。もし破ったら、それはレンじゃないでしょ」
そりゃ、僕との約束をレンレンが破ったらその時は僕もどうしたらいいのかわからなくなる。
レンレンは僕がずっと探していた僕の鍵なんだから。
朝も起こしてって言ったら、絶対に毎日同じ時間に起こしてくれる。
僕は、いつもレンレンに起こしてもらうまで何があっても簡単には起きない。
前はいっくんによく起こしてもらったりしてたけど、最近はそれでも起きなくなってたから、レンレンがいてくれてとても助かってる。
寝坊をすることも一切なくなったし、僕はレンレンがいないときっと一人で生きていけないんだろう。
「そういえば、スバルは今なにしてる。最近あんまり見てないから気になったんだけど」
「多分、ハルさんと一緒にいると思うよ。いっつも一緒にいるから。まるで誰かさんみたいに」
「ちょっと呼んできてくれる。ドルガナについて知りたいことが一つあるって言ったら来てくれるはずだから。ハルさんも一緒でもいいから」
「自分で言った方が早いんじゃない。もう元気なんでしょ」
「えー、そんなこと言ってたら、ちょっと頭痛くなってきた。ま、冗談は置いといて、いっくんの方がハルさんも動いてくれるでしょ。僕が言ってもハルさんの領域下じゃ手を出せないし」
「はあ、今回だけはかけるんに騙されてあげる。かけるんなら、そんなこと気にせずに何でもするくせに」
さすがに、こういう嘘はばれるか。
確かに、ハルさんが止めようとしても無視して動くのが僕だけど、いっくんの言い方じゃ僕が誰にも構わず自由奔放に動いてるみたいじゃない。
さすがに僕だって、人のことは考えて...考えてないかもだけど、さすがに人には迷惑はかけないようにはしてる。
レンレンは二日で完成するって言ってたくせに、次の日にはもうできていた。
しかも、僕が提示していた性能を大幅に超えた最高の品を。
「かける、次は何を造ればいい」
「え、もう。んーじゃあ、これとこれ造って。どっちも二機ずつ」
「誰が乗るんだ。それに、なぜ二足歩行にしない」
「誰が乗るかは秘密として、二足歩行じゃ魔獣対策には不便でしょ。四足歩行の方がバランスがいいから。ちなみに、レンレンが造りたい機体があれば勝手に造ってもいいからね」
「いいのか。俺の機体は自分で造る」
「そういうと思って、今までレンの機体には何も言わなかったの。そうだ、完成したら僕の機体と勝負しようよ。僕が勝ったら、マクスウェルの悪魔を作って」
「俺が勝ったら、CH-402を造る。マクスウェルの悪魔よりかはましなものだろ」
そりゃ、マクスウェルの悪魔だなんていう、現実には存在しないであろうものを作れっていうのは、普通に無理がある。
かといって、CH-402もそう簡単な話ではない。
僕がレンレンに造ってと頼んでいるのはせいぜい高さ15メートル程度のものだが、CH-402は高さというより幅が百メートルを優に超える大型戦艦なのだ。
さすがにそんなものを造る資材があろうと、造らせられるわけがない。
「カケル、お前にいい忘れていたんだが 。いろんなへい...機体を造るのは別に制限はしたくない。ただ、あまりに大量に造られると、みんなが黙って見ているとも限らないからな。簡単に言えば、加減をしてくれということだ」
「兵器って言おうとしましたよね。それはまあいいですけど、確かにあれだけの数あれば、戦争をする気とも取れなくはないですからね」
「そうだ、お前の趣味の範囲を既に越えている。ここの今の戦力なら恐らく国内で最強だろう」
そりゃ、資源も機体も大量にあるんだからそうなるだろうな。
「なら、単体最強であれば良いんですよね」
「物は言い様だからダメだとは言わないけど…」
いつかそんな事を言われるだろうと思って、その辺の対策はもう出来てるんだよね。
「加減といっても、ハルと僕では全然違うかも知れないから、具体的に教えて」
「じゃあ…二足歩行が六機、四足歩行が十機って感じ」
そんな程度なら全然問題ない。
てっきり、二足歩行五機だけかと思ってた。
僕の計画では六機だけで全て解決するつもりだ。
理想道理に行けば良いんだけど、それはアニメの中だけだから無理だろうな。
「カケル、例の艦隊はどうなるんだ」
「例の艦隊とは何だ。また勝手に機体を造ってるんじゃ」
「造ってはいないけど、造ろうとしてるだけです。それに、防衛設備に関しては僕に一任されているはずですよ」
「確かに、そうは言ったが、艦隊レベルの物を造られると話は変わってくる」
「なら、カリストアが攻めて来たら、二足四足計十六機で相手をするんですか。国防総省が生きてるか分からないのに」
「広域レーダーに艦影複数確認。カリストアと思われます」
「イク、見せて。あ、あれは防衛力では誰にも劣らないと言われる、の艦隊です。向こうから攻撃を仕掛けてくる事はないと思いますが、何かを建造する可能性があります」
カケルが予想をしていなかった、カイルが参加してきた。
カイルはカリストアの軍隊には詳しく、すべての艦の情報を持っている。
だが、今回はカケルはカイルを呼ばなかったのにも関わらず、参加したため、とても驚いていいた。
「これでも艦隊を造るなと言いますか。このままだと負けるのも時間の問題かと思いますが」
「わかった。ただし、一隻ごとに詳細なデータを建造前に提出すること」
「了解です。では、まずこれを。主力五隻です」
前もって準備していたと言わんばかりに、すぐ出した。
これは、すべてカケルの策であった。
カケルは、機体や艦のこととなれば、どんな手段も辞さない。
今回も、郁や零々に手伝ってもらい、春を騙した。
そう、カリストアの艦隊接近という事実はないのだ。
「カケル、どういうことか説明してくれる?艦隊はもちろん、艦も一隻たりとも写ってなかったけど」
「そりゃ、艦隊を造るっていう無茶なことをするなら、無理してでも春さんにを騙さないといけないから」
「...どうだろうね、あの春が...」
「なんか言った?」
「いや、何も。それより今、嫌な予感がしてないわけでもないんだけど」
「どういうこと?」
「さっきレーダー見たとき、隅っこに一瞬ドルガナの艦が見えたから」
なんでカリストアじゃなくて、ドルガナなの。
ドルガナはカリストアと戦争してるはずなのに、カリストアとドルガナに攻められたら、何があっても勝てないだろう。
予定では、カリストアの兵器10に対し2で勝てるようにするつもりだった。
だが、ドルガナもとなれば、今のままでは到底勝つ見込みはない。
せめて、残りのレドニアだけでも味方になってくれればいいんだが。
「まさか、カイルを奪還するためとかじゃないよね」
「...」
「何、その沈黙。カイルは何でこっちに来たの?魔獣を理由にして、国から逃げてきたとかじゃないよね」
「違うとは言わない。だからといって、ドルガナまでもが攻めてくる理由にはならないだろ」
「こんなこと言い合っててもきりがない。さっさと、対策を練る方が先じゃないの?」
『言われなくてもわかってる』
カケルとカイルは仲が良いのか悪いのかよく分からない。
全く関係無かった二人なのに、魔獣の話で盛り上がるし、たまにどうでも良いことで揉めるし。
カケルもカイルと話してるときは、完全にレンレンの事を忘れてるようで、レンレンが可哀想にも見えてくる。
「かけるんとカイルってどういう関係なの」
「どうもこうも、ただの知り合いじゃん。カリストアの皇子と剣零の生徒会役員。それだけだけど、どうかした?」
「いや、ちょっと気になっただけ」
はあ、やっぱりこれと言う何かしらの関係は無さそうだし、二人の共通点は魔獣以外にはないと思う。
でも、何か別の二人も気付いていない何かが結びつけてると思えて仕方がない。
○Dorganna○
世界有数の軍事大国ドルガナ。
つい先日まではそうだと思われていたが、それはあくまでこの惑星ないでの話で、外に出れば話は別だ。
それに、ここ数年は戦争をしていなかったがために、軍備縮小化が進み、軍事大国から離れつつある。
そこで出た案が、都合が悪くない国と戦争を裏から仕掛け、戦争を仕掛けられたかのように装うというものだ。
その案の裏には別の目論みあることもこの場合否定はできないだろう。
『第一から第四艦隊は出撃準備。目的地はReath』
「やっと出番ですね。かなり遅いような気がしますが」
「チサトが上と揉めなければもう少し早く出撃できたんだよ」
「すみませんね。貴方の身に何かあったときは、必ず僕が助けます」
「時間に遅れてくる癖にそんな事できるのかな、チサトちゃん」
僕の本当の名前はセンリだ。
それを女の子っぽくチサトと言う。
僕からすればくだらない遊びだけど、彼にとってはたのしいのだろう。
「お前ら、喋ってねえでとっとと行け」
「怖い鬼のお出ましだ」
「僕にとっては地獄から救ってくれる神様です」
「誰が地獄だって?」
「ひっ!ぎゃー!」
何でいつもこいつらは騒がしいんだ。
もう16なんだから、大人しくしてくれればいいんだが。
「ひっ!ぎゃー!」
何でいつもこいつらは騒がしいんだ。
もう16なんだから、大人しくしてくれればいいんだが。
それにしても、出撃前だっていうのに、随分呑気なものだ。
「星、千里。Reathってどんなところか知ってるのか」
「知りません」
「そうだよね。チサトは知る必要ないよね」
「星、千里をチサトと呼ぶな。ちゃんとセンリと呼んでやれ」
「第四艦隊っていうことはアレもいるってことか」
「みんな揃ってんのか。待たせたな」
「何を考えてる、お前は千里以上に時間に遅れてくるな」
「別にいいじゃん、間に合ったんだしな」
「そうですよ...間に合ったんだから問題はないはずです..」
「千里は誰にに味方してるのかな」
「星さんに味方すると良いことがありませんから...」
「へえ、そんな事言ってて良いのかな」
「ぎゃー!」
「星と千里には罰を与えないとな。星には数学の問題、千里には化学の問題を百問解いてもらう。もちろん、間違えてたらやり直しだ」
「悪魔...鬼...死神...」
「何を言っても無駄。それより出撃五分間前だ」
僕の回りには鬼か悪魔かそんなのしかいないのか。
一人くらい天使でも何でもいいから僕も味方が欲しい。
大体、何で普通の人が知らないような国と戦争しないといけないんだ。
上は一体何を考えてるのか不思議だ。
今はどっかの得体の知れない国よりも、カリストアと戦う方が先なはずなのに。
「千里、星、夜、ボックスアウト!」
ボックスアウト、つまり出撃だ。
僕たちは初めてじゃないから、出撃時の衝撃にも慣れたけど、もう少し抑えられないのかな。
Reathまで約三時間。
何もなく無事について何もなく帰れますように。
○Kenrei○
先ほどレーダーに映ったように見えたというから、調べてみたら、そこには先発隊と思われるドルガナ機が30機以上いた。
もちろん、こっちにも対カリストアように造ったのがあるから対抗は出来る。
けど、ドルガナ本隊が来れば負けるのは確実だ。
どうすれば勝てるんだ。
有人機は原則出せないし、無人機だけじゃ相当な数がいる。
今あるだけで足りるのかどうか...
「ハル、有人機は出さないのか」
「生徒に危ないことはさせられないからね」
「かけるん、例の艦隊は?あれなら勝てるんじゃない?」
「三隻だけなら完成してるけど、どうする?」
「今出さないとどちらにせよ負けるのをただ見るだけになるかと思うけど」
「冬夏さん!」
「はあ、仕方ない。カケル、レン確実に無事で帰ってこれるのか。絶対にだ」
「前にも言いましたけど、僕とレンレンが二人でいれば最強ですよ。不死身です。誰にも負けません」
「帰ってきたら、機体の急造をする準備をしとく。絶対に無事に帰ってこい」
『はい!』
スバル型戦艦一隻、レン型戦艦一隻、コイ型重巡洋艦一隻の計三隻。
予定ではあと三隻造るつもりだったが、間に合わなかった。
普通、戦艦とか重巡洋艦で宇宙まで行こうとすると、かなりのエネルギーがいる。
でも、カイルに頼んで、超巨大な魔法スクリプトを書いてもらって、そのお陰で楽に飛べている。
今剣零内の発電施設は一ヶ所を除いてすべて魔法で行っている。
魔法を使えば、汚染物も出ないし、発電量は原子力並みだ。
「レンは僕とEー13区域、コイといっくんはCー24区域をお願い」
僕の艦は僕が戦うのが苦手なせいで、機銃まみれだ。
機銃の数は288。
かの太陽暦1940年代頃の大和型戦艦の機銃の数の倍だと聞いた。
数が多けりゃいいって物でもないだろうけど、少ないに越したことはないと思う。
それに人一人で動かせるように改良したから『艦=人』という状態だ。
もちろん、防御力も並みのものではない。
『敵、広域通信を展開。受信します』
『We consider you enemies and savages and declare war to you!』
「誰か何いってるか分かる?」
「全艦戦闘準備!敵から攻撃が来るまで待機」
そう、さっきの広域通信の内容は、宣戦布告。
人種が違うと聞いてたから、どんなのかと思えば、そんなに人間との違いはない。
言語は元々英語なのか、わざわざ勉強してくれたのか分からないが、まだ何を言っているのか分かるからありがたい。
それに『you are savages』ってどういうつもりだ。
野蛮だと言うならそっちの方だろ。
カリストアと何の関係もないのに襲撃してきてどの面でそれを言うんだ。
「敵ミサイル多数発射。目標カケルとレン」
「なら、機銃全門発射!主砲副砲も全門発射!」
最初、僕の計画では主砲と副砲はレーザー弾にしようとしていたんだけど、レンレンに実体弾の方がいいと言われた。
何か、安くてエネルギーも少なくてすむとかどうとか、あんまり言ってることがよく分からなかったけど、レンレンが言うことに間違いはないから、実体弾にした。
それに主砲副砲機銃を全部ぶっ放っても、まだまだ攻撃方法はあるし、敵に対策を打たれることは恐らくない。
大体、この惑星に宇宙空間をまともに攻撃できる武器があると思われてもいなかっただろう。
ドルガナと恐らく対等に戦えてるのも、先にカリストアがこっちに魔獣を放ったからだ。
魔獣対策の機体がまさかドルガナに役に立つとは。
何でも造っておくもんだな。
よし、この戦いが終わったらあれを造ろう。
「これ、今は対等に戦えてると思えるけど、敵の数が多すぎない?まだまだ出てくる気がするんだけど」
「そうだね。このままじゃ、持久戦になりそうだけど...レンレン!一応例の機体積んであるんだけど、使う?それともこのままで...」
「カケル、なぜ俺に機体に対して艦で戦わせた。機体と戦っていいのは機体だけだ」
「そりゃ、ごめん。でも、レンレンの艦なのに攻撃してたのはレンレンじゃないよね」
「カケル!勝手に艦に物を積むな」
「いいじゃん。念には念を、でしょ」
機体を積んでると言っても所詮、移動用機体に出力を上げて武器を付けたような代物だ。
まあ積んでる事をハルさんにはばれたくなかったんだけど。
ドルガナには通用するか分からないけど、この際そんなのはどうでも良い。
敵、二万の内、艦でなんとか15000弱まで減らせた。
あと二千くらい減れば問題ないし、最終敵を撹乱させれればいいんだし。
「鵤、鶻、鶉、鵠。全機発進!」
機体の名前を付けるのに、この僕のネーミングセンス零の脳ではこの程度が精一杯だ。
本来ならば、カタカナとかで格好良くしたかったけど、僕にそんなことを出来る技量はない。
レンレンに頼んだら、俺は造るのが専門だ、と言って全然考えてくれない。
正直、自分で付けた名前なのに、どれがどの機体か分からなくなる。
「旗艦はどれなの。旗艦さえ叩ければ簡単なのにさ」
「旗艦はDー15にいる。その近くにいるのは精鋭部隊だ。今の戦力では到底敵わない」
「じゃあさ、どうする?」
「1つだけ手がなくはないんだけど...」
それは本来使いたくは無かったけど、どうせ使うなら今使ったって、変わりない。
それに、使ったことで、敵がしばらくでもいいから、出来れば一生だけど、来なくなればいい。
その間に最強かつ、完璧な機体を造り上げる。
「鵤、手を貸してくれ。出力最大、敵陣に突っ込め。機雷発射、struggleキャノン装填。付いて来れるのは付いてきて」
「カケルは銃戦闘か。なら、俺は剣で戦う。カケル、満足するまで戦え。援護は俺がする」
本当に剣で援護出来るのか。
レンレンの事だから強引にでもするとは思うけど、その場合機体がもつか不安なんだけど。
「カケル、右41度!」
「くっ、弾が足りない」
『大丈夫だ。今そっちに援軍を送った。無人機だけどな』
よし、これなら勝てる。
やっぱり、機体も弾は全弾入れとかないとな。
使うことはないと思って、半分も入れてなかった。
「かけるん、このまま敵を殲滅する?それとも一旦引く?」
「このまま無人機で戦って、その間に装備を完璧にしても、多分敵は大量に来るだろうし、引けるうちに引く」
「カケル、その必要はない。こっちが引く前に先に向こうが動く。敵の目的はこっちの宇宙戦闘技術を知りに来ただけだ。これで、向こうもしばらくは黙るだろう」
ほんとだ、レンレンの言うとおり敵が引いていく。
この程度で諦めてくれればいいんだけど。
軍事大国であるなら、諦めはしないだろうな。
次来たときには簡単に追い返せるように何か策を用意しとかないと。
『火星軌道上に敵影無し。全機着艦後、帰還せよ』
はあ、初めてといえ、敵に真っ直ぐ突っ込んでいくなんて自分でもどうかしてると思う。
レンレンと一緒だったのもあるけど、イクやコイは二人でいたし、艦と機体の弾薬が同種だったから大丈夫と思えたけど、レンレンは僕が守らないとと思ってむきになってしまった。
防護壁内に防衛省に相当するものはあるけど、攻撃できるのはせいぜい、大気圏までだ。
そんなのは役に立たないけど、でも、そう簡単に兵器を持たせれる訳ではない。
なんとか、生徒会だけで解決したいものだが、どうすればいいんだろう。
「カイル!何、あの敵機。かっこいいじゃん、造れないの?」
「あれは特殊な機体やさかい、ドルガナ帝国民以外は使えへんのや」
「カイルはどうしたん。何でまた京都弁で話してるん」
「京都が気に入ったみたいだよ。近くだし今度連れていったらどう?」
「レンレン、行ってもいい?」
「なぜ俺に聞く。お前が決めることだろ」
「だってレンレン僕の保護者みたいな感じじゃない。僕の予定も全部分かってるしさ、レンレンに任せれば失敗することは絶対ないし」
絶対ないっていうのは一応明確な根拠が有って言っているの。
今までレンレンに任せたことは偶然にしても失敗したことがないし、何を言っても、このレンレンが失敗なんて事をするわけがない。
だって失敗するくらいなら、最初からしようとすらしないんだから。
「カケル、戦闘中に思い付いた機体だ。デザインとか気に入らないところがあるなら言ってくれ」
「レンレンが考えたものなのに、あるわけ無いじゃん。あ、でも、文句とかじゃないけど気になるのがある」
「なぜ、飛行不可機体なの。これじゃ、宇宙空間でも使い物にならないじゃん」
「これは地上戦闘用だ。ドルガナが地上まで来たときの対策だ」
「計画は艦を三隻、四足機体が六機 、二足機体が三機、レンがさっき言ってたのが六機で間違いないね」
「もちろん。でも、どうやって作るんだ。これだけの量、俺たちだけじゃ造れないけど」
「他校の工学科の生徒と、工学部の生徒 、あと重工の従業員を総動員する。もちろん自主性だから強制はしないから大丈夫」
そっか、ここには何でもあるんだもね。
人でも店でもすべて揃っている。
無いのは軍事技術だけだ。
「一週間後まで待ってて。それまで、カイルとドルガナとカリストア、あとなんだっけ」
「レドニアのことですか」
「そう、レドニアの三国の情勢を勉強して...もちろん普通の授業もだ。生徒会役員としてあらゆるテストで七割以下は禁ずる。余裕あったらドルガナの言語でも勉強したらいいと思うよ」
「あー、多分レンレンは喋れると思うよ。カイルにいろいろ仕込まれてるみたいだから」
「喋れるのは当たり前だ。カケルはともかく、他のやつは誰も話せないのか」
いや、普通話せたらそれこそ怖いし、大体そんな事できるのレンレンだけだから。
レンレン、英語はもちろん、フランス語イタリア語、それにスペイン語、あとロシア語も話せる。
それに、物理も生物、化学だって、数学でも、大学レベルまで出来るんだから。
僕だっていつか、いつかレンレンに追い付くんだから。
そのためにいつも一緒にいるんだから。
食事はもちろん、勉強も風呂に入るときも、寝るときだって一緒なんだから。
そろそろ、何か変化があってもいいと思うんだけどな。