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Another World On-line  作者: 乙女恋
START&GAME
4/8

QUARK&LEPTON

【生徒寮】

「へえ、魔獣と一緒にね」


「よかったじゃん。だって、魔獣が食べれるってことは人間でも食べれるかもしれないってことでしょ。」


「植物ならいっくん得意じゃなかったけ。見たら食べたら危険か分かるんじゃなかったけ」


「もちろん植物なら、多分異世界植物でも大丈夫だと思う」


「じゃあ、明日は植物メインで探索しよう」


【生徒会室】

「外に出てはいけないってどういうことですか。外出許可はありますよ」


「いや、正確には出てもいいんだが、カケルとレンにお願いしたいことがあって、そのためには今日は外には出ないでほしいんだ」


「お願いとは何ですか。その内容によっては、出れないのを我慢することもできますが」


「カイル皇子のだな、歓迎会をまだしていないからしようかと思ってな。いいだろ」


「カイルか。仕方ない、一日くらいなら我慢する。で、歓迎会って何するの」


歓迎なんてしたことないし、されたこともない。僕にはする人もされる人もいないんだ。


「あ、そうかカケルは歓迎会って初めてか。まあ、パーティみたいなものだよ」


「Farewell Party の逆みたいなやつか。大体わかったよ」


「パーティの内容は自由だ。皇子には内緒でなら基本何でもいい。」


「パーティの場所を僕に決めさせてくれませんか」


「ちゃんとした場所があるんだな」


「僕の家ですけど大丈夫です」


【防護壁内第二区画】

「カケル、家なんて持ってないだろ。さっきのはどういう意味だ」


「昨日までは持ってなかったけど、今朝買ってきた。この前の師団級魔獣討伐で稼いだ金で」


もともとそれなりにお金は持っていたが、この前の師団級討伐でどっさり不要なほどに稼いでしまったからな。どっかで使わなきゃ持っているだけじゃもったいない。で、お金を十分減らせるものを探したら、この大きな家だった。今の所持金一千百万余りで、この家は一千万だ。大きさの割に安いなと思ったら、もともと冬夏の家だったそうだ。無駄に広いから寮に引っ越してこの家を売りに出したそうだ。まさか、高校生なんかに買われるとは思ってなかったみたいだけど。


「ほらここ。大きいけどこれで一千万」


「ここ良いな。俺らもここ住んでいい」


「ああ、もともとそのつもりだったし。全然問題ないよ」


「なあ、この家さ隣にちっさい建物あるじゃん。そこで何か店でもしない。」


「店って何をするんだよ」


「例えばカフェとか。恋とならケーキとかパイとか作れるよ」


「じゃあさ、いっくん。レンと僕は何をするの」


「接客くらいできるよね」


「そりゃもちろん。」


「カケル、この家のどこでパーティするつもり」


「それはこっち」


生徒会メンバー十人と冬夏、カイル皇子、外科医の先生だけだから、この広さなら十分だ。多分本来はキッチンとリビングがつながってるはずなんだけど、何にも物がなかったらかなり広く感じる。テーブルとイスを並べても十分余裕はあるだろう。


「それでさ、まさかケーキだけじゃないよね。何か皇子にあげるんでしょ」


「僕からは魔獣をあげるつもり。ちゃんと飼えるやつ」


「その魔獣ってどうやって捕まえるの。大概の魔獣ってすぐに襲ってくるから捕まえる余裕なんてないし、捕まえれたところで飼えるような状態じゃないだろう」


「ほら、前に深夜に勝手に外に出て魔獣と戦ってたって言ったじゃん。あの時にこっちに気付いても全然襲わないし、それどころか懐かれたぐらいの魔獣がいたんだよ」


「で、それどこ?」


「防護壁外北十八区の所」


「そこまで魔獣と戦いに行ってたのかよ。そこって歩いて三時間くらいかかるんじゃなかったっけ。しかも完全に山の中だし。」


一回くらい遠いとこに行ってみようと思っていったことがあった。まあ、遠いくせにそれだけ価値のある魔獣にも出会えなかったし、もう行くことはないと思ってたけど。


「恋くん、ここ行きます!」


「恋が行くなら僕も行きます」


「それなら一応チームのリーダーとして僕も行かないとね」


「俺も行くが、恋も空もカケルも行くって言ってるんだ。ハルさんも行くんだろ」


「分かった。生徒会長としてなら行くよ」


【防護壁外北十八区】

うわ、寒い。前来たときはまだ夏だったから涼しかったけど、冬になってから来たら寒い。コートでも持ってきたらよかった。


「カケル、はいこれ。体が震えてるぞ。バカなら風邪をひかないだろうが、万が一ってこともあるしちゃんと防寒着くらい着ろ」


えっ、今のって心配しながらバカ扱いしたよね。相変わらず、レンは可愛げが無いな。そのくせになんで女子には気に入られてたんだろう。生意気で可愛げの全く無いレンのどこが女子を引き付けるんだろう。いくら考えたところで、男子である僕には絶対に分からないんだろうけど。


「ほんとにこんな寒いところに魔獣が、それも友好的な魔獣がいるのか。さっきから一体たりとも魔獣が出てこないんだが」


「さあな、前来たときはまだ夏だったし。もしかいたら今は冬眠でもしてるんじゃ――」


「そこの草むらに何かいる。」


「じゃあさっさと捕まえて帰ろ。こんな寒いところずっと居たくないし」


だが、草むらから出てきたのは、友好的な魔獣ではなく、好戦的それもかなり狂暴的な超級魔『黒狼』だ。


「ハル、今すぐ離れろ。そいつは危険な超級魔獣だ。」


飛び出すや否やハルに嚙むみつこうとした。あいつに嚙まれれば、腕を丸ごと持っていかれるほど危険だ。だが、嚙みつかれるとしても、嚙まれるのはあのハルだ。きっとハルなら。


「お、おう。そのようだな。たく、そういうことはもっと早く言え」


いや、勝手にあんたが行くからだろ、と思ったが言わないでおこう。さすがハルさんだ。あの一瞬で、狼が嚙みつくのを剣で防いだ。普通の人なら無理だろう。知っている人の中であれだけ速く動けるのは、僕とレンぐらいだ。


「あの、お二人さん、囲まれてますけどこれって大丈夫なんですか」


気づかないうちに、狼が一体から十数体に増えて周りを囲んでいた。今まで一切魔獣が出てこなかったのは、ここがあいつらの縄張りになってたからなのか。また面倒くさいところに入ってしまったな。何でいつもついてないんだろう。この前だって師団級魔獣に出会うし、どうなってるんだ。


「念のためにって武器の手入れをちゃんとしといて良かったな。ただ、銃の弾は百発しかない。できたら使わないようにしてくれ。今回は俺も剣を使う」


あれ、確かレンって剣の腕がかなりすごいんじゃなかったっけ。どっかで剣道の全国大会で優勝したとか聞いたんだが、あれは本当なんだろうか。


「空、大丈夫か。お前魔獣と戦うの怖いんじゃなかったっけ」


「あ、うん。でもハルと一緒なら大丈夫。一回くらい超級魔獣を倒してみたいし」


魔獣と戦うのが嫌いなのに、戦ってみたいって言うのを聞いたら本当に魔獣と戦うのが怖いんだろうかと思えてくる。


「レンは僕と一緒に十二時の方向のやつを、いっくんと恋は三時の方向、ハルさんと空は六時の方向の魔獣を倒して」


ある意味今回は左側が崖でよかった。六人しかいないし、絶対に二人でしか戦えないから、もう一箇所から魔獣が来たら手に負えなくなるところだった。


「レン剣で戦ったことあったっけ。使ってるとこ見たことないんだけど」


「ああ、カケルと一緒に戦うときに剣を使ったことはないからな。銃は不便ではないんだが、銃弾が消耗品だから金がかかって元があんまり取れない。だから、大量に出てきた時しか使ってない。たまたまカケルと一緒にいるときは大量にしか魔獣が出てこないがな」


悪かったな、非効率な銃を使わせてしまって。レンも剣で戦えるなら、どっかで一度どっちが強いか勝負してみたいな。


「戦いながらで悪いんだが、この黒狼と友好的な方の狼との違いって色以外に何かあるのか」


「色以外だったら、もしかしたら匂いで分かるかもしれない。匂いで魔獣のクラスが分かる人がいるみたいだし」


「どうせこの前の師団級よりはすぐに片付くだろうし、魔獣の名前を考えておいた方が良いんじゃないのか。」


「そこはもう決めてある。レンには秘密だけど」


「だって、レンに言ったらその名前変だからこっちの方が良いとか言うにきまってるもん」


「この前の師団級である程度強さが分かってたけど、こいつら超級のくせに弱めの師団級くらいの強さだな。師団級じゃないだけましかもしれないけど、黒狼がもっと来たら手に負えなくなりそうだな」


「超級だからある程度強いはずなんだけど、ここの魔獣はランクが一つ上かと思うぐらい強くなってる。どっかに良質な餌でもあるのかもね」


「なあ、今気づいたんだけど、こいつら倒した後に食べれるよな。名前にも見た目にも狼ってあるし」


そうか、その発想はなかった。じゃあこれは魔獣討伐というより、狩りに近いのか。できれば狩りをするより魔獣と戦うのを楽しみたいんだがな。まあ、今のところ最終的な目的は変わってないから良しとしよう。


「あと何体残ってるんだ」


「三体だけだよ。途中で気づいたんだけど、この魔獣の肉は食えないよ。生はもちろん、焼いても何をしても食えない。だって、見た目は狼でも中身は狼じゃないみたいだし」


えっ、こいつら狼じゃないのか。狼だと思って名前も黒狼にしたのに。


「やっぱ普通の動物と魔獣は見た目は似てても、中身は違うか。てか、なんで食べれないってわかったんだ」


「なんかさ、ちょっと前から、匂いで食べれるかどうかわかるようになったみたい。当分使うことないと思ってたけど、意外と役立つんだね」


―数分後―

超級魔獣なだけあって、確実に剣零の防護壁付近の魔獣より強い。でもその分、超級でも倒せたら、少しでも今のこの世界に慣れて、みんなの腕も上がってきてるってよく分かる。その証拠に、前の師団級の時に、周りにいた超級上級魔獣に苦戦したが、今回は前ほど苦戦しなかった。もちろん師団級がいないというのもあるだろうが、それでもかなり変わった。二人で二体の超級を相手するのも無理なことではなくなったし、気付いたら魔獣の動きを読めるまでになっていた。もちろん魔獣であってもあくまで人と同じ動物なので一体一体に何かしら癖がある。その癖が何か分かれば大体の攻撃は予測できるのだが、今までは攻撃と防御でそんなことをしている暇はなかった。


「こんな暗い山の中に本当にカケルの言ってる魔獣はいるのか。今のところ出てきてる魔獣は全部黒系ばっかだけど」


「そりゃもちろんいるよ。神聖な感じが出てる所いるから、そこに行けば絶対にいる」


「で、その場所はどこなの」


「えっ、えっとね、多分あっちだったような気が...いやこっちだったかな」


「覚えてないんだ。一応チームリーダなんだからもっとしっかりしてよ。これじゃ往復の時間より魔獣を探す方が時間かかるじゃん」


「神聖なるもの、三つの試練を与えそれを乗り越えし者を導くだろう」


「そこに書いてある。試練ってなんだ、神聖なるものって今探してる魔獣のことなのか」


「神聖なるもの、それは神級魔獣だ。」


うわ、だれ。神級魔獣って何。師団級が一番上のクラスじゃないの。


「本来はそうなんだけどね。こっちの世界にも宗教上神がいるように、カリストアの方にも神がいるんだよ。ただし、こっちのように空想などではなく、ちゃんと現実にいるけど。その神たちの一部がが、こっちの世界に興味をもって何人か来てる。それが、神級魔獣ってやつ」


「じゃあ、その神に会えれば何か知りたいことも教えてくれるって事」


「まあ、そうだけど、簡単に出会えないし、出会えたところで話を聞いてくれない。もし神から来てくれれば話は...」


「てか、だれこの人?」


「俺らに聞かれてもわかるわけないし」


「神級魔獣第十二階位、所謂神です」


この異世界にならどこにでも居そうな格好のこの人が神か。なんか無駄に期待したな。でも、見た目がこんなんでも一応神だから、敬わないといけないのか。いや、僕には絶対無理だ。


「第十二階位の神、名前は何と言うんだ。神とか、第十二階位の神って呼ぶの面倒臭いしダサいしな。」


「ああ、そういえば自己紹介がまだだっわね。シャロンと申します。あんまり敬語に慣れていないので敬語を使わないようにお願いします」


「じゃあ、言葉に甘えて。神というからには何か特別に出来る事でもあるの。例えば、魔獣に対する強力な武器を持ってたりとか」


「よくそのように言われるけど、何もないよ。ただ、形上の神なだけ。神は各国に一人ずついるんだけど、なんていうのかな。各国の象徴みたいな感じってところ」


「じゃあ、カリストアの象徴の神が、シャロンって事?」


「違うよ。レドニアの方の神なんだけど、今カリストアとレドニアとドルガナで百年戦争中だから、こっちにいるだけ。このままだと、いつこっちに影響が出るかわかんないけど」


はあ、どこの国でも戦争はするんだな。てか、その戦争をまったく関係ないこっちの世界に持ってこないで欲しいんだけど。魔獣なんかを使われたら、陸海空軍総出でも手におえなくてあっという間に負ける気しかしないし。それか、今のうちから魔獣に簡単に、せめて上級魔獣ぐらいまで倒せる武器を作っておかないと。いや、それはまたその時でいいか。今からやって、来なかったら意味ないし。もっと正確な情報ならまだしも、こっちの世界も巻き込まれるかもってだけじゃ、生徒会自体も動けないだろうな。


「カリストア以外にも、レドニアとなんだっけ。ほかにも国があるの」


「ドルガナね。もともとレドニアとドルガナは仲が悪くて、十年に一回はそれなりに大きな戦争をしていたんだ。今起こってる百年戦争はそこにほかのいろんな国が宣戦したから起こってる。でも数ある国でも珍しく、唯一カリストアだけはいまだに中立を謳っている。この三国についてもう少し細かく話すと...」


まず一つ目、軍事力でいろんな国をまとめ上げているレドニア軍事盟約連邦。大体は発展途上国や開発途上国と呼ばれる国だ。

二つ目は、レドニアに対抗するために作られたドルガナ北半球経済連携協定。こっちは、すべて金で動いている。もちろんある程度軍事力は持っているが、一応レドニア対抗策だというところだ。金だけで動いているので、金持ちの先進国ばっかだ。

そして、どちらにも属さず中立を謳っている、カリストア帝国。軍事兵器が嫌いというのと、争い事に巻き込まれたくないから、らしい。もちろん中立を謳っているだけあって、防衛設備以外一切の兵器を持っていないと表向きはなっている。正確にはよく分かっていない。


「これじゃあ、皇族も大変だな。よくこんなんで国の政治ができるもんだな」


「どうだろ。今はよく分からない。一応、逃げてきたにも近い状態だから。」


「おい、シャロン。百年戦争は神の話し合いで何とかならないのか」


「それは無理。政治も経済も全く口出しできないから。さっきも言ったでしょ、あくまで象徴だって」


そりゃ残念だな。まっ、そんな簡単に出来るなら戦争が百年も続くわけないだろうし。


「なあ、シャロンのせいでっていうと語弊があるかもしれないけど、完全に今どこにいるか忘れてないか。それにここに来た目的も」


あっ、そうだった。いっくんのおかげで思い出したけど、カイルのための魔獣を捕まえに来たんだった。三つの試練か。もし、一つ目が黒狼の群れ、二つ目が神との出会いなら三つめはなんだ。とりあえず師団級魔獣とかじゃなければいいんだけど。


「カケル、三つの試練なんてもともと何にもないよ。大体、こんな山に神聖なるものはいないし、カケルの探してるのは神聖なるものでもない」


「じゃあ、どこにいるんだ」


「さあ、とりあえず一つ言えるのは今魔獣が二体こっちに向かってきてるって事。狼型のやつ」


また、黒狼か。もう飽きたぞ。ってあれ、この足音黒狼とは違う、この足音どっかで聞いたことがあるような。


「カケル、まさかこいつが例の魔獣なのか」


「もちろん、どこからどう見てもそいつだ。まだ名前が無いんだがどうする。名前って、黒狼とかってことだからな」


「それなら、白いから白狼でいいんじゃない」


そのままだ。ネーミングセンス無いな。


「シャロン、神として何かないか。一応原則漢字なんだが」


「銀狼、懐狼、牙狼とかかな」


銀狼にした場合、もしフェンリル的な魔獣が出てきた時に困るし、牙狼ならそれはそれで狂暴的に聞こえてくる。懐狼なら、おとなしそうだし、おかしな点はなさそうだ。


「よし、懐狼だ」


「決まったなら、それはいいんだが、せっかく飼うなら一体ずつ別の名前があった方がよくない?」


「それはもう決めてある。二体いるから、もちろん片方僕がもらうけど、もらう方がクウォーク、カイルにあげるのがレプトンだ。一応英語表記にしてある。」


原則分類上では漢字を用いるが、私的に個々の命名は英語系のカタカナとしている。


「さっさと帰らないと、歓迎会に遅れるぞ」


やば、いろいろ予定外のことが起こりすぎて一時間多くとっていたはずなのに、気付けばもう時間ぎりぎりだ。


【新居一階】

はあ、何とか間に合った。やっぱあんまりなれないところに行くのはやめた方が良いな。帰ってくるだけで何回も迷ってたし。何でだろうね、行きは簡単に行けたのに帰りはなかなか帰れなくなるのって。


「カケル、ちゃんと魔獣を捕まえてきたんだろうな。こんなところで暴れられたら、大変だからな」


「もちろんです。ちゃんと二体捕まえてきました。正確にはついて来たっていう方が正しいのかもしれませんが」


「よく分からんが、詳しいことはあとで聞く。」


『カイル第二皇子、剣零にようこそ!』


「ほら、カイルの歓迎会まだだったでしょ。せっかくここに来たんだから歓迎会くらいしてあげないと。一応みんなからプレゼントあるから。僕からは、僕のおすすめ魔獣懐狼リプトン」


「俺とレンから、手作りの歯車時計」


「恋くん、郁と上質の剣作ったから見てみて」


「恋といっくんにそんな技術があったんだ」


恋たちが作った剣は見ただけで分かるほど性能が良い。空にもらった、あの剣よりも数倍以上強いだろう。見た目だけで判断しても数千万はするだろう。次に剣を作るときは恋たちに頼もう。


「そういえば、この魔獣たちどうやって連れてきたの。防護壁内は簡単に魔獣は入れないだろ。いくら友好的で人を襲うことがないって分かってても」


「そりゃもちろんハルさんに頼んで入れてもらったんだもん」


一応、防護壁内では剣零の校長がトップだが、事実上は生徒会長だ。大人には魔獣を倒す武器は作れないのだ。もちろんその武器を持つこともできない。なぜか、大人以外には重すぎて持つことができないらしい。嘘のように聞こえるが、その証拠に大人は子供が学校に払った税金で暮らしているのだ。最初は消費税程度だったのだが、今では魔獣税といって魔獣を倒した数に応じて税金を取られるほどだ。生徒会のメンバーは全員税金を余裕で払えるほどの金を持っているので困らないが、あまり金のない人はかなり苦労しているそうだ。別に消費税以外は払う義務はないのだが、税金を全額払っていれば、毎月消耗品のどれかをもらえるのだ。確か生徒会長のハルさんは税金と別に寄付までしているそうだ。ある意味生徒会長としてなのかもしれないが。


「カイル、ケーキもあるし、他にもいろいろあるから食べて」


「そうそう、不器用なカケルが頑張って作ったんだ。さすがにまずいってことはないだろう」


レン、相変わらずだな。確かに料理が苦手なのは分かってるけど、まずいかもみたいなことは言わないでよ。別に焦がしたり材料を間違えたりはしてないんだから。まあ、ちょっと見た目がひどいかなってくらいだし。何を言っても、見た目より味が大事なの。それくらいカイルならわかるよね。


「不思議な食べ物だな。こんなにおいしいものを食べたことなかった」


えっ、別に作ったのって、そんな珍しいものでもないし。それにそんなに高級な食材も使ってない。確かに物価は急上昇してるけど、それでも特にこれといったことはしてない。


「今までどんなもの食べてきたの。一応これでも庶民的な料理しか作ってないんだけど」


「黒狼の肉を使ったシチューのようなやつとか、何かの植物の葉で作ったサラダとかだ」


「何かの植物ってのはよく分からないけど、黒狼っておいしい肉じゃないし、もともと食べれるような魔獣でもないし」


「どんな国なんだろうね、カリストアって」


「魔獣がそれなりに落ち着いてきた時に招待するよ」


【生徒寮】

新しい家を買ったものの、まだ寮の方にもものがいっぱい残ってるし、今月末までまだ一週間ほどある。ここに未練を残さないように毎日寝るときだけ帰っている。僕の部屋は四階なので階段を登る必要があるのだが、ここの階段は少し傾いていて普通の階段より登るのがしんどい。今日もいろいろあって疲れたな。いつかここにも師団級魔獣が来たりするんだろうな。さっさと部屋に入ってゆっくりやす...


「誰だ!そこに隠れてるのは」


「さすが、各国の諜報機関から招待されただけあるな」


何度か諜報機関から来ないかと誘いを受けたことはあるが、全部断った。だって、国民の知らないところで何をしているか分からない職業になんて関わりたくないもん。


「冬夏か。しばらく見ないと思ったらこんなとこにいたか。何してたの」


僕と同じように冬夏も諜報機関から誘いを受けていた。冬夏は代々諜報機関で働く家計だったので誘いいに乗ったが、二年目に自分には向いていないと思ってやめたらしい。


「最近、妙な噂を耳にしてな。剣零の中にレドニアのやつがいて、ここの先生と手を組んで何かをしているらしい」


「軍事大国のレドニアがどうして。てかどうやって来たんだ」


「そう、そこなんだよ。子供には魔獣を倒して金を稼ぎ税金を納めるという大事な仕事があるからな。こういう情報集は暇な大人に任せとけ」


「そういいながら僕なんかにばれてて大丈夫なのか。いつどこでどれだけの人数のレドニア人が紛れ込んでるか分からないんだぞ」


「大丈夫だ。今回はカケルだから見つかっただけだし。いくら軍事大国だからってカケルを超えるようなのはいないだろ」


「どうだろうな。だって、こういろいろ話している間に。そこ!」


ベットの横にあるクローゼットに超鋭いナイフを飛ばした。この部屋のそこにはもともと同じようなクローゼットがあったが、前に置いていたやつは数ミリ高さが低かったはずだ。それにこの部屋に入ったときに気付いてたのだが、冬夏とは違う心臓の鼓動が微かに聞こえていた。予想通り、そこからは明らかに異国人だと分かる格好をした小さな男の子が入っていた。見た目からして十歳くらいだろうか。異国人だからようく分からないが。それにしてもよくこんな所に入ってたな。今年の夏、このクローゼットに不要な段ボールを入れ居たら、久々に開けた時にゴキブリやカナブンとかいろんな虫が入っていた。知らなければなんとも思わないけど知ったらかなり気持ち悪い。


「冬夏、この子何言ってるか分かる?」


「いや、全く分からん。カケルが分からんってことは、英語圏やドイツ、フランス、ロシア、中国、韓国ではないってことだな。スペイン、ポルトガル、タイでもないぞ」


僕は英語他五言語話せるが、冬夏はさらにもう二言語、計八言語話せるのだ。そんなに話せても大半は無意味で全然役に立たない。役に立ったのは今回が初めてだ。


「冬夏、この子をちゃんと拘束しといてくれ。カイルを呼んでくる。あいつなら何か少しでもわかるだろ」


「その必要はない。俺はここにいる。そいつは、金のためにしただけで具体だけに何をするかはまだ聞かされていない、と言っている」


そうか、やはり軍事大国でも貧しい人はいるのか。もしかしたら、軍事大国だからかもしれない。でも、だからと言って、このまま放置することもできない。


「この子、どうする気、カケル」


「君、これをもって生徒会室ってところにいるハルって言う人に相談して。何かいいこと教えてくれるよ」


「ありがとう、お兄ちゃん」


「また何かあったらおいで」


「おい、あの子に何をあげたんだ」


「そりゃ、ちょっとばかしの金だよ。金があったら、あの子は何もしないだろうし」


【生徒会室】

「カケル、この子は何なんだ。昨日百万も持ってここに来るもんだから驚いただろ」


「ハルさん優しい。この子泊めてあげたんだ」


「そりゃ、あんな時間にきてどっか行けなんて言えるわけないだろ」


「起きたか、名前はなんていうんだ」


「......」


「レン、その子は僕の方で相手するから。えっと、僕のこと覚えてるよね。名前教えてもらってもいい」


「えっ、名前知らない。分からない」


どういうこと、記憶喪失ではないだろうし、なんで名前が分からないの。


「親に捨てられた子、か。かわいそうに。」


「それって、この子何もしてないのに、ただの被害者じゃん」


「あの年なら、何も知らないうちに捨てられたんだろうね」


魔獣が出現してからというもの、安全に食料栽培をできる場所が減り、物価は急騰。借金をするために子まで売る親がいるという噂は聞いていたが本当にいたとは。


「ねえ、何か自分のことで覚えてることはない」


「うーん、今多分十歳。それぐらい」


「魔獣は怖くない、怖かったら別にしてもらいたいことがあるけど」


「魔獣って、外にいる動物のこと?それなら全然怖くない」


「それなら、僕たちと魔獣を倒しに行く?怖かったら、別にいいけど」


「あれを倒せるの。でも僕、武器は何も持ってない」


「ここをどこだと思ってる。生徒会室にはそのぐらいの武器はあるよな、カケル」


「どうだろう、銃の使い方わかる?」


さすがにこの子には銃は使えないだろう、と思ったけど念のために前もって弾倉を空にした銃を渡した。


「あのジュースの缶を狙うつもりで撃ってみて」


もちろん銃からは音だけしか出ないが、横でコンピュータ並みの能力を持つレンが見たところ、実弾だったら缶を貫通していたらしい。この子本当に銃を使ったことは無いんだろうか。普通なら銃の反動でずれたり、暴発したりするかもしれないのに、正確に缶を撃ちぬいていた。この光景を見るのは今回で三度目だ。ホームステイの時のレンと、魔獣出現時のいっくん、今回のこの男の子。ただ、いくら銃が使えようと、きちんとした身分が分からないと持たせることができない。


「えっと、君とかじゃ呼びにくいからここで名前を決めよう。」


「春ってのはどう。生徒会長のハルを漢字にして」


「ややこしいからやめて。」


「橘はどう。さすがに誰ともかぶらないだろ」


「でも、なんか苗字みたいだから変」


「カケル、無理を承知でだ。何か名前は無いか。」


無理を承知でって、そんなにネーミングセンスがないって思ってるの。確かに魔獣は見た目そのままで名前を付けてるけど、それは分かりやすくするためで、別に何も考えてないわけではない。でも、どうしよう。人名を考えるのって難しいな。あっ、いいの思いついた。


「スバルってのはどう。夜空に瞬く星団のように輝いてほしい、みたいな意味で」


「カケル、大丈夫か。熱でもないだろうな。それか何か縁起の悪い事でも...」


「僕は大丈夫だ。僕にもセンスがまったく無い訳じゃないんだから」


「スバル、スバル、スバルか。かっこいい。やった」


名前って付けてもらってそんなにうれしいんだろうか。もともとあったらよく分からないな。


「ハルさん、スバルを僕のチームに入れてもいい。いま一人分だけ空いてるんだけど」


「もちろん、カケルが良いなら好きにして」


よし、これでチームが六人になった。僕と、レンといっくん、恋、空、そしてスバル。なんか全員変な奴だけど、そっちの方が良い事多そうだしそれでもいいか。今日はゆっくり生徒会室で過ごすか。明日からまた楽しみだな。


「大変です。カイルさん、今いますか」


「あ、ああ。ここにいるがどうした、そんなに慌てて」


「葵が珍しい周波数の電波を見つけてそれを盗聴してたらこいつが流れてて」


葵さんはハルさんのチームで、ハッキングが得意な人だ。ハルさんのチームにいるのも、生徒会のコンピュータにハッキングしたからだ。


「宣戦布告か、今時珍しいね。宣戦布告なんて後でするもんだと思ってたけど」


「ねえ、センセンフコクって何」


「戦争を開始する意思を宣言することだよ。この場合はカリストアがドルガナとレドニアに対して戦争するみたいだけど」


「中立国なんかが大国二つに勝てるの」


「それは僕も無理だと思ってたけど、秘密裏に軍備拡張を進めていたみたいなんだ。それも攻撃目的の」


「カイルはどうするの。カリストアに帰るの、それともここに残るの」


「帰りたいが、そう簡単に行けるものじゃない。この銀河系の端にある惑星だ。距離は遠くないかもしれないが、時間はかかる」


「確かにそうだな。何か武器もいるだろうし」


「どんな武器を使ってるんだ。それによっていつ出発するか決めないといけないし」


「僕がこっちに来ている間に増えてるのもあるから分かる範囲だけなら」


カリストアの戦力は次のようだ。

戦車三百六十両以上、戦艦八十隻以上、巡洋艦百五十隻以上、駆逐艦百隻以上、潜水艦三十隻以上、通常空母(軽空母、正規空母)二十隻以上、航空機五百機以上、宇宙空母五十隻、宇宙小型機動兵器数千機以上。

これでも中立国なら十分だと思うが、ドルガナ、ドニアはこれを優に超える。意外と、両国の戦力はほぼ同じだ。

両国で戦車千両程度、戦艦三百隻、巡洋艦百五十、駆逐艦二百隻、潜水艦百隻、通常空母は無し。航空機二百、これは偵察用だ。宇宙空母四百隻、宇宙小型機動兵器数万機以上(詳しくは不明)、宇宙大型機動兵器十数機だ。

中立国をはるかに超えてはいるが、多すぎるようにも思える。


「じゃあ、これ全部来ても大丈夫なようにすればいいんだよね」


「何かいい案あるの」


「ないよ。でも、一週間あれば一つくらいいいのが出来る、絶対に」


「なにその自信。カケル、どこから湧いてくるわけ」


「そりゃ、ここに天才レンレンと、僕がいるんだもん。」


「変人集まれば賢くなる」


「それは違う。変人は何人いても変人だ。カケルが何人いてもその集まりはただのバカだ。もちろんカケルは一人でもバカだ」


僕がバカなのは分かってるけど、そんなはっきり言わないでよ。さすがに僕でも傷つくよ。まあ、今も守る必要があるかわかんないけど、校則や法律、憲法には軍事目的では禁止されてるけど、運送なら禁止されてないからある程度のものは造れる。艦船でも航空機でも武装が無ければ大丈夫だ。


「完璧な計画が思いついた。全部するのに三週間あればできる。武装は自衛程度しかないけど、三箇国には劣らないものが出来る」


「じゃあ、三週間完成するのを待つとしようか」


「あっ、言い忘れてたけど、レンレンは設計、恋たちは溶接、ハルさんの所は部品集めをしてもらうから。そうじゃないと、三週間じゃ間に合わないから」


「それじゃあ、製造開始!」

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