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Another World On-line  作者: 乙女恋
START&GAME
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START&GAME

この話はかなり非現実である意味本当に起こってほしいことだった。

僕は山の中にある築三十年近くの学校にバスで通っていた。

終点の駅の近くだからか、人が多いので、毎日二台同時に来る。バスといっても学校所有のバスなので行先は学校だけだ。

そのため、乗り過ごすことは決してなく、行きのバスでは寝ている人も多いが、約四十分もかかるのでゲームをしている人も少なくなかった。

もちろん、僕も寝ずにゲームをしている生徒の一人である。僕は、乗り物はあまり好きではない。

特にバスは、寝れないし、外の風景を見ていても、友達と話していても寄ってしまうから大嫌いだ。

そんなわけで、寝れずにいつもゲームをしている。

僕はいま、一週間前に発売されたVRRPG(仮想現実ロールプレイングゲーム)をしている。

多分、この世界に生まれてから、初めてハマったゲームだろう。いつもはみんながやっているゲームをいろいろやってみていたが、これと言ってそんなに面白いと思うものはなく、早いものではチュートリアル(ゲーム開始から五分くらい)で、長くても一か月も経たないうちに飽きてしまう。

この前、レンに「この世界自体に飽きているんじゃないのか」と言われてしまった。

レンというのは、僕の幼馴染で一応親友だ。一応というのは、レンが親友と思っていないからだ。

まあ、そんな僕でもハマったゲームなだけあって、発売からまだ一週間だというのに、プレイヤー数は国内だけでとっくに六十万人、世界では三千万人近くのプレイヤーがいる。

そんな中で僕の総合評価におけるランキングは常に上位で、悪くても五位良い時は三位になる。

このランキングは毎日二十四時時点でのランクが発表されている。ちなみに、このゲームは決してキャラゲー(強いキャラクターやレアなキャラでないと次第に勝てなくなるゲーム)ではない。

大体、モンスターにレベルが設定されていないため、一度戦わないと全く強さが分からない。

今までの感覚では各モンスターごとにある程度の平均に沿って強さが設定されている。

だから、異常に強かったり弱かったりすることは決してない。

まあ、こう長々とゲームの話をしても大半の人は訳が分からないだろうから、先にゲームのことを説明するとしよう。


1.自分のキャラクターを作成する。(髪型や目の色、身長、体重、血液型、誕生日、年齢とかなり細かく設定できる。)

2.約六十種類ある職業から一つ選ぶ。(後で変更するにはかなり高額の費用がかかる。ただでするには選んだ職業に課されたクエストを全部消化する必要がある。)

3.自分の飼いたい動物を作成する。これは、餌代や散髪代とかなり金がかかってくるので自由だ。


動物はチワワやポメラニアンなどの犬や、猫、動物園や水族館にいる動物、さらに空想の動物まで作れる。

ちなみに僕のは、昔カナダに行ったときに出会った狼だ。多分自分の中で一番古い記憶だと思う。

半分忘れかけているため、詳しくは言えないが、狼には少し思い入れがある。

さっきも書いた通り、動物の世話にはお金がかかるため、飼う人はほとんどいない。

多分普通の人は武器やアイテムを買うのにお金を使ってしまうからあまりお金が貯まらない。

だけど、僕の場合現実と正反対でできるだけお金がかからないように、最低限必要なものしか買っていない。

例えば、通常武器は初期装備でただで貰えるが、もっと良い武器が欲しいならどこかで買ったりしないといけない。

でも僕はそんなことにお金を使いたくないので、何らかの武器が貰えるクエストを探した。

その結果、この段階で買える武器の約二倍の性能を持つ武器が手に入った。

しかもタダで。

一度NPCが経営している武器屋で価値を調べてもらった。

そしたら、その剣の価値は約二十万、わかりやすく言えば、十メートル四方の土地の家を買うには通常五百万、安くても三百万はする。

この剣にそれほどの価値があるとは僕も全く思わなかった。

さて、今日も十分稼いだし、一回ログアウトしようっと。

ってあれ?なんかあったのかな。

出発してからもう、三十五分経つから、僕はてっきり、もうすぐ学校につく頃だと思っていた。

だが実際は、通常二十分ぐらいで通りすぎる所だった。

さすがに道が混んでてもここまで混むことは今までなかった。

今年の二月に久々に雪が積もってちょっと道が混んでたけど、それでもここまで混むことはなかった。

道が混んでくると、一番イライラしてくるのはバスの運転手だろう。

さっきからまったく車が進んでいない。渋滞しているというより、通行止めかと思ってしまう。

なんでこんなに混んでるのか気になる。


「カケル、なんでこんなに混んでるんだ?」


知るか、こっちが知りたいのに。

いい方法思いついた。


「レン、これじゃ埒が明かないし、それにトイレにも行きたいし、一回外に出よう。それでこの渋滞の原因を見に行こう。」


レンは僕の後ろに座ってるから僕は酔いそうなのを我慢して無理して後ろ向いて話している。

レンが小さくうなずいたので、二人でバスを降りることにした。その際に、バスに積んであった予備の無線機を前のバスと後ろのバスから一機ずつ借りた。

もちろん、情報通達のためだ。

この無線機は全部のバスと学校につながっている。

で、二機借りたのは、僕の分とレンの分だ。

一機で十分かもしれないけど、何せ予備機だからちゃんとつながるか分からない。


『カケルとレン、そっちの状況は』


話しているのは偶然にも担任だった。


「今のところまだ分かりません。概ね、少し強引にでも引き返す方が良いか...」


「カケル、伏せろ!」


レンがいきなり叫んだから驚いてとっさにしゃがんでしまった。驚いたのはそのあとだ。

頭の上を大きな物体が通り過ぎて行った。

ゆっくり頭を上げて後ろを確認した。大きな物体の正体は車だった。


『何だ、今の音は。二人とも無事か』


驚いて無線機のボタンを押していたため、こっちの音が聞こえていた。


「はい、大丈夫です。車が飛んできただけです。レンがすぐに教えてくれたんで当たらずに済みました。」


っておいおい、よく考えたらなんで車が飛んでくるんだよ。

普通事故でもこんな距離飛んでこないだろ。


「レン、まだ進むけど、何か異変に気付いたら教えて。」


「分かった。だが自分の体くらい自分で守れ」


自分の体くらいっていうけどね、あんなでっかい物体が飛んできてすぐに避ける方が難しいっての。

とにかく、車が飛んでくるくらいのことが起きてるってことはかなり危険だ。


「カケルです、だれか応答してください。」


『郁だけど、どうした。』


「ああ、いっくん今すぐ、バスを引き返させて。そうじゃないと多分死ぬよ。」


『何が起こってるの、それに引き返せって言われても、これじゃあ』


「何が起こってるかまだ分からないけど、かなりやばいのは間違いない。それに、いっくんなら、大丈夫。バスくらい簡単に運転できるよ。」


カケルのやつ、簡単に言いやがって。

しょうがないな、やれるだけのことはやってやろう。


この渋滞どこまで続いてるんだろう。

どうせなら家から折り畳み式の自転車でも持ってこればよかった。


「カケル、もうすぐ渋滞の始まりが見えてくる。何か武器があった方が良いみたいだけど...」


は、何を言ってるんだ。

銃の乱射でも起こってるんなら、武器より防具の方がいるし、何が起こってるんだ。

それは、すぐにわかった。

あれは動物ではない。

いわゆるモンスターだとか魔獣と呼ばれる類のやつらが人を襲っている。


「なあレン、なんか武器持ってないか。あんなの素手で倒せって言われても何もできなさそうだし。」


「えっと、水筒、ガム、クッキー、ラムネ、スマホ、筆箱、使えそうなものなら、これだ。」


「レンくん、それなんで持ってるの。かなり危険だと思うけど。」


「大丈夫だ、ちゃんと許可も取ってある。その銃カケルにあげるよ。」


どこのやつがレンに許可を出したんだ。


「まあいい、じゃあその銃で撃退する。予備の銃弾はあとどんなけある。」


「六十本入りの箱が三つで百八十本だ。」


一応、法律上は銃の使用と所持は一応禁止されているが、国から許可が下りれば所持はできる。

僕には許可は下りていないけど、昔海外にホームステイをしたときに銃の使い方を教えてもらった。

レンとはその時に仲良くなったのだが、一番驚いたのはホームステイ先の親から護身用にと銃の使い方を教えられた。

頑張って銃のライセンスも取った。

そのおかげで、今ではハンドガンくらいなら簡単に正確に撃てる。

だが...


「カケル、何をしている。ずっと突っ立ってても死ぬだけだぞ。さっさと銃を撃て。銃なら撃てるだろ。」


分かってる。撃ちたいけど、魔獣が怖いと思っているからか、撃てない。


「カケル、横!」


車の陰から、狼らしいモンスターが襲ってきた。

銃で撃とうとしたが間に合わない。

ここじゃレンにも狙えない。

僕は魔獣に殺されるなら、別に未練は残らないだろうと思った。...ってあれ、狼が来ない。

目を開けるとそこには狼ではなく、人が立っていた。


「おい、かける!のんきな奴だな。」


「いっくん!って何でここにバスの運転してたんじゃ。」


「バスなら、駅の方にUターンして、今頃誰かが運転してる。で、なんで銃を撃つ技術はあるのに撃たなかったわけ」


「怖いんだ、狼が。」


「カケル、どうせ逃げ切れないんだ。このまま死ぬか、少しの可能性に賭けて狼を倒して生き残ろうとするかだ。どちらにするんだ。カケルの判断で自分の行動も決める。」


「大事なものを守るためには、攻撃するのも大事だよ。それにカケル一人じゃない。レンも僕もいる。死ぬ確率も三分の一くらいになったんじゃない。」


そうだ、何もしてない人を襲う動物に手加減もしなくていいんだ。

本気で戦わないと。



【銀剣学園 剣零高校】新星暦三十一年七月二十九日

ここは、カケルやレン、イクが通う学校だ。

先生が全員集まって明日からのことを話している。

「とりあえず、明日は休校だ。明日の間に、できるだけ魔獣の対処設備を設営。恋、バスに乗ってた生徒はどうなってる。」


「郁が送り返しました。ただ、カケルとレンが今、魔獣と戦闘中です。」


「おい、それを先に言え。恋はヘリでカケルたちの所に向かえ。こっちで念のために二人分の治療ができるように手配しとく。できれば無事でいてほしいがな」


「大丈夫ですよ。だってあいつらそう簡単に死ぬ人ではないから。」



【魔獣交戦場所】

「さて、あいつがボスか。レン、あいつのパラメーターわかるか」


「通常より、攻撃力とすばやさは一・四倍強化されてる。だが、その分防御力は通常と同じくらいだ。弾が当たれば倒せる」


当たれば、か。そう簡単に当たらないだろうな。

何か動きに規則性でもあればいいんだけど。

とりあえず、撃つだけ撃ってみよう。


「へえ、カケルでも外すことがあるんだ。まあ、魔獣があれだけの速度で動いてたら、当たるものも当たらなくなるだろうな。」


今の時点であの魔獣に勝つ方法は、速度が落ちる隙を狙うか、意外な場所から一気に攻撃するかどっちかだな。

あの魔獣の隙を狙うにしても、あまりにも時間がかかりすぎてあっという間に持久戦になる。

意外な場所って言っても、屋上なんかは全部人が入れるような作りになっていないし、せめて航空機に一つや二つでもあればいいんだけど。


「カケル、向こうの空から何か来る。」


空からって、まさか飛行型の魔獣か。

普通の鳥ならレンが何かっていうわけないし、狼の次は何が来るんだ。


『カケルとレンレン、危ないから頭を伏せといてね』


突然さっきまで静かで存在を忘れかけていた無線機から、声が聞こえた。

さっきも車に殺されそうになったし、一応言うこと聞いておこう。


「カケル、飛行物体はヘリだ。多分あそこから、銃弾が...」


おいおい、あんなところから撃ったら、この辺一帯鉄の嵐だ。

ギャー、確かにこれなら、魔獣は逃げ場を失って死ぬかもしれないけど、僕たちも十分に危険だと思うけど。

これいつまで続くの。

ヘリからの攻撃が魔獣の急所に当たったのか、魔獣が叫んだ。

それと同時にヘリからの攻撃も止まった。


「やっと止まったか、死ぬかと思った。」


「そっちがかけるで、こっちがレンレンだよね。二人って聞いてたんだけど、なんで三人いるの。そして、その三人目がいくなのはなぜ。」


「あれ、いっくんの知り合い?」


「僕の幼馴染のこいくん。」


「女子力高めの恋です。よろしく。」


「こいくん、今日は学校でなんかあるんじゃなかったっけ。何でここにいるの。」


「そりゃ、もちろん、かけるとレンレンを助けるためだよ。思ったより苦戦してたみたいだけど。」


「なあ、こいくん。これいったい何が起こってるの。」


「それはヘリに乗ってから説明するよ。ここにいたらまた魔獣が襲ってくるかもしれないし。それに先生たちが心配してるよ。」


えっ、ヘリコプターに乗るの。それ酔わないかな。

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