エピローグ その③
「…………ここらへんか」
新たに貰った初仕事を前にして僕は言う。
村長から貰った仕事とは村の用心棒だった。
どうやら村長から僕らは村のゴロツキと言うレッテルを張られてしまったらしい。
……大体、間違ってはいないけどね。
まあ仕事が貰えれば御の字である。今日の仕事は村を襲う魔物が巣食うという草原地帯へと出向き、魔物の数を減らす事。魔王を相手にしていた僕らにとってはそう大した負担にもならない仕事である。――――筈だった。
「ちょッ!? ホント、待って! 少し待ってくれない! ええと……『ようこそ、アルヒムの村へ!』じゃない! こんなもんどうやって役に……ぎゃああああああ!!」
「本当、うっとりするぐらいのヘタレですぅ……」
少しばかり大きな猪と言った感じの魔物に突進され、踏みつけられて満身創痍となった僕を前にして、いつも通りの鎧姿を着けたクレアは顔を綻ばせて、言う。
「…………ねえ」
「何ですか、アルミナ」
「手伝って……くれないの?」
「だって……」
クレアは少しばかりしなを作って言う。
「アルミナのこういう姿を見ている方がお金を貰うより何倍も嬉しいんです」
「…………」
四面楚歌、あるいは渡る世間は鬼ばかり。
鬼を前にして立ち上がった僕はそんな事を思う。
「アルミナ。昔――私と貴方が最初に出会った時、何故私が貴方に声をかけたと思います?」
「……どうして?」
「私、あの時は王宮兵士を辞めて直後でしたから。まあ辞めた理由もいざこざがあって何ですけれど、結構荒んでたんですよね」
「……ほう」
「それでアルミナを見た時思ったんです。私、相手の目を見ただけで何となく実力だったり才能だったりが分かっちゃうんですよ」
「ああ、成程。僕にそこそこの才能を感じた訳だ――――」
「――――いえ。貴方が驚くくらいの雑魚で何の才能も感じないゴミだったから私は声をかけたんです」
「何、その悲しい理由」
僕それだけで自殺する理由に事足りそうなんですけど。
「でも私、そういう人って意外と重宝すると思うんですよ」
「は? 何で?」
僕の疑問にクレアは淡々と答える。
「そういう人は他人を無下にはしないでしょう? だって自分が最下層に居るんですから」
「……いや、そういう奴はむしろ他人を苔にする事を生きがいとしている奴は居るだろ」
他人を蔑ろにして自分の存在を確かめる。皆、よくやっている事だ。
「違いますよ。それは現状を認め切れていない者の事です。貴方は最底辺に居る癖にその現状を認めているように感じました。自分はここに居るべくしている、みたいな。そんな人が他人を苔にするとは思えませんから。私は貴方のそういう所に惹かれたのかも知れません。そういう意味では逃げ場所に最適ですから」
「何、その駄目人間掃除機みたいな評価」
僕ってそういう特性を持った人間だったのだろうか。
褒められているようで、確実に貶されているよな、これ。
「でもアルミナはこれ以上、人を惹きつけないで下さいね」
「……何で?」
「私が……その、迷惑するから…………です」
「…………? それってどういう――――」
僕の言葉が言い終わらない内にクレアが話を替えた。
「――――あ! そ、そう言えばアルミナ、結構魔物倒したでしょう? 能力値とかに変化あったりとかしますか?」
「ん? どうかな……」
僕は『村人スキル』を発動させる。そして何やら新しいスキルを覚えている事に気付く。
おもむろに僕はその覚えたてのスキルを発動させた。
「『貴方こそ真の勇者! その美しい姿でいつまでも我々の光となって下され!』――――魔王を討伐した事による村人の言葉かな……。だってさ、クレア」
「だってさ、って言われても…………何ですか?」
「希望になってよ、だって」
「お断りします」
即答したクレアは長剣を取り出すと、傍を通りかかった魔物をえげつなく両断した。一瞬にして細切れにされ血を吹き出す魔物を見てクレアは破顔する。
「私はこうして血を見ている方が楽しいですから……」
「お前は――いや僕達はその方がお似合いかも知れないな」
僕は彼女の恐ろしい程美しい姿を見て、そう口にする。
そもそも『村人A』は日陰で居る事こそが当然だ。
――――そんな事を考えつつ、僕は笑って魔物に襲いかかるクレアを眺めるのだった。
これで本作は一先ずの完結となります。お付き合い戴きまして誠にありがとうございました!
もし宜しければ感想、評価など戴ければ嬉しいです。「続きとかないの?」とかでも良いです。書くかは分かりません。気分次第です。すいません、気分屋で……。
ただ、他にも色々作品書いてたり、ブログやら何やらでも色々活動しておりますので、宜しければそちらも見て戴ければと……。まあ、そんな感じです!
改めてここまでお付き合い戴けた皆様、誠にありがとうございました!




