第27話
翌日。骨が軋むような痛みを覚えつつ、僕らは宿屋を引き払った。
宿屋のご主人の目が「ゆうべはおたのしみでしたね」的な様子で僕らを一瞥していたが、僕は極力気にしないように勤めた。クレアはクレアで全く気にしていない風だったけれども。こいつの事に関しては僕とて一年経って分かった事が数多くあるが、同時に分からない事も沢山ある。こういう心中を悟らせない態度も僕と比べると遥かに巧い。
……だからこそ、気になる事は山ほどある。
こいつの心中は深すぎて見通せない。まるで底深い沼のようである。濁った中を見通すには更に沼に近づき、場合によっては浸からなければならないだろう。
昨日、少しだけ僕はこいつの本心に触れた。……それでもそれはほんの一端だ。
一端に触れただけで分かった気になるのは下種のする事だ。でも無理に分かろうとしないで良い。分からないなら分からないで構わないでは無いか。
今はこいつと旅をし、そして新たに自分の価値を見つけたい――――そう思う。
多分、追々こいつに関する事は分かっていくだろう。だからそれまで無理に知ろうとしなくて良い。
仲間だからと言って全てを開示する必要は無いだろうから。
僕はクレアと今まで接してきたであろう過去の人間のように正しく在れない事を罪とは思わない。いや、罪であってもそれを罰しようとは思わない。
だって僕も同罪だから。弱い癖に正しく在ろうとするのはそれだけで迷惑で、そして罪になる事を僕は知っているから。……だから僕は彼女を罰しない。
『村人A』が魔王を倒すなんてそんな馬鹿げた事が罪でない訳が無い。
これでお互いがお互いに罪人だ。……しかしそれを僕らはフォローし合う。
歪ながらも順当な関係性だ。今はそう思って置く事にしよう。
「さあ、行きますよ――――アルミナ」
鎧を着け、兜を被り、長剣を背中に刺した少女は足早に口にする。
僕はその背中を追い掛け、そして走り出した。




