95.死の狭間
体に活力がみなぎる。死から蘇った時はいつもそうだ。体の限界を超えて無理矢理エネルギーを注入される。容器が壊れたとしても再生する。激しい痛みと嫌悪感を伴いながらもまた大宮翔太がこの世界に形成される。……そういえば自称神のところにはもういけないのか? 前は死ぬ度に行ってたけど……まあうるさくないからいいか。生きていれば……いや、死に続けていればいつか会うこともあるだろ。
起き上がるとフォウルが泣きながら俺の体をゆすっていた。俺が起き上がったことに驚いたようで目を白黒させている。
「あー……心配してくれてありがとう?」
なんかすごい照れくさい。なんて言ったらいいのか……自分の葬式の途中に棺桶から起き上がった気分だ。ここまで泣かれてると気まずいってレベルじゃねーわ。
「ショウタ殿……怪我は……怪我は大丈夫でござるか!?」
俺が起き上がったのが理解できないようにフォウルは俺の傷があった場所に触れる。
「大丈夫大丈夫……言ったろ。俺死なないから問題ねーんだって。怪我ももう治ってる。」
「ショウタ殿……お主は…………いや、助かったでござる。ありがとう。翔太殿」
やはりどこか含みのある笑顔でフォウルは語りかけて来る。
「それよりもハイリザードマンはもう大丈夫なのか?」
「えっ……あ、倒れてるでござるな……どうやらあれが最後の一撃だったようでござる。」
「そりゃよかった……なんなんだよあいつ……首取れても動くとか虫かなんかかよ。」
「いや拙者的には死んでも生き返るショウタ殿も同ポジでござるが……」
失敬な。俺はもう少しいい感じの……不死鳥とかそんなんだ。そんでハイリザードマンはクマムシとかプラナリアとかああいうの……なんか虚しくなってきたわ……
「ともあれ……Bランクモンスター程度なら倒せるようになったんだよ……」
「そうでござるな! 拙者達も確実に強くなってるってことでござる! それも魔法を使わずに!」
ゴブリンだのラビッツだのに苦戦してたのが遠い昔のようだ……実際は数ヶ月しか経ってねぇけど。この世界に召喚された時とは比べ物にならないくらい強くなった自信はある。……まあ頭おかしいような訓練積んだからな。
「ひゃぁっ!?」
驚いたような声が聞こえ、その声の発生源を探る。するとハイリザードマンが潜んでいた木の陰に腰を抜かした女が隠れていた。その女は髪の色は綺麗な金色で、パーツも整っておりおおよそ美人と言える要素が整っているのに、それなのになぜか目立たないような、人だかりに放り込めばすぐに溶け込むような女だった。
「お主は……誰でござるか?」
「ひゃっ!? くっ……くるなっ!」
ハイリザードマンの返り血を浴びた俺たちを見て怯えているのかその目には涙を浮かべ、動かない足を必死で動かし後ずさる。
「……落ち着け。俺達は敵じゃねぇよ。」
「えっ……ぐっ……ほんとに?」
「ああ、確かに安心できるような風貌はしてねぇけどいきなり人に襲いかかるようなやつではないつもりだ。」
「そっ……そうなの? ごめんなさい……私びっくりしちゃって……」
「別に構わんでござるよ! それよりもお主はなぜこんなところに一人で?」
「それは……ってごめんなさい。腰が抜けちゃったみたいで……手を貸してくれませんか?」
「ああ、気づかなかったでござる。申し訳ない。」
恥ずかしそうにはにかみながらフォウルに向けて手を差し出す。それにフォウルは笑顔で応じるように少女の手を取った。
「ありがとうございます……おバカさん。」
「……えっ?」
フォウルが手を掴むと同時に、少女の腕がフォウルの体を貫く。あまりに一瞬の出来事に、誰も反応できなかった。
「相変わらず甘っちょろい……それでよくこの世界を生きてこれたね。」
「お前っ……なんでフォウルをっ!?」
「たまたま僕に手を差し出してくれたのが彼だったから……大宮君が手を差し出してくれてたら君を殺してたんだけどね。」
当然のことを言うようにその女は答える。まさかこいつ……
「大宮って……お前まさか!?」
「あはぁ。まーだ気づいてなかったんだ?
そうだよ……私は」
少女の姿が変化していく。この世界では珍しい黒い髪に黒い瞳。そして150cmほどの小柄な少女……そいつには見覚えがあった。
「二宮陽子。久しぶりだね、大宮君。」
魔王軍に連れ去られたはずのクラスメイトだった。
ようやっと坂本以外のクラスメイトが登場しましたね。




