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94.不死への変質

毎日投稿が途切れるの鬼早かったっすね

「俺な、不死なんだ。」


「不死……でござるか。」



 遺跡に向かう道すがら、フォウルに俺の不死についてを説明していた。もはやフォウルに隠し事をするつもりはない。



「そう。それが俺に与えられた能力。首が切られようと心臓が破壊されようと死ぬことはない。痛いのは痛いし致命傷以外の傷は残るみたいだけどな。」


「なるほど道理で……」



 フォウルは俺の話を聞いて何か納得したように頷く。



「なんなら試してくれてもいいぞ。あんまり何回も殺られるのは嫌だけど。」



 最近は何回も死んだせいか一回くらいならいいかって気持ちになる。フォウルには世話になってるし憂さ晴らし感覚でやってくれてもええねんで。



「いや流石にそれは……」


「そうか? まあ助かるわ。俺だってできれば殺されるのも痛いのも嫌だからな。」



 死ぬのは痛いし苦しい。しかし今の俺にとってもはや死は慣れ親しんだ隣人のようなものだ。常に俺の隣に存在し、幾度となく挨拶を交わしている存在……忌避感は拭えないがそれもせいぜい嫌いな隣人程度だ。我慢できないほどじゃない。



「ショウタ殿……確かに蘇るのであれば死を経験するのも問題ないかもしれないでござる。それでも……死に慣れたらダメだと思うでござるよ……」


「は? 何で? こんなの慣れないとやってられねぇよ。」



 毎回毎回あの苦しみ、あの痛み、あの辛さを真面目に受け止めてたらいつか壊れてしまう。そう断言できるほどの苦しみなんだ、あれは。



「いや…………そうでござるな。拙者が口出しすることではなかったでござる。失礼した。」



 そう何かを言いたげな仕草を見せるも、それ以上言葉を続けようとはしなかった。言葉を切られると何を言いたかったのか気になるが、フォウルはその件についてはもう話すつもりもないのか話を合わせない。そして話を逸らすかのように別の話題を切り出す。



「そんなことよりショウタ殿。この辺りの魔物が強くなってきているのに気づいているでござるか?」


「ああ……確かにな。ギルドが魔物の大量発生で冒険者を募ってたし、これも多分異常現象なんだろうな。」



 このレベルが何匹も出てきたら対応できないレベルだろう。……いや、もしかしたら大丈夫なのか? ステータスとかいうのがあるのなら一般人でも割と戦えたりするのかな……



「そうでござるな。以前この辺りに来たこともあるでござるが魔物もこんな強くも数多くもなかったはずでござる。」


「へー……ってことはやっぱりこの先に魔物達の拠点があるっていうのも俄然真実味を帯びて来たな。転移門があってもおかしくない。」


「仮にあったとしても拙者達が魔王相手に戦えるとは思わないでござるが……ショウタ殿はその辺り勝算あるのでござるか?」


「ある。……といってもこの剣の性能次第だけどな。こいつが魔物に通じるのなら十分勝ち目はあるはずだ。」



 逆に言えばこれが通じなければまともに戦うことはできない。不死という最強の盾を持っていても武器が貧相なら勝つことはできない。



「だからこの剣の性能を試したいんだけど……あんま一人で倒すなよ。俺にも戦わせてくれ。」


「わかったでござる。……っと、言ってたら来たでござるよ……あそこの木の陰、何かいるでござる。」



 フォウルが指差した先には巨大な大木がそびえ立っている。しかしその裏側からは隠しきれないほどの強大な魔物の気配が溢れ出しており、空気がひりつくな感覚が周囲に満ち満ちている……とんでもないのがいるな。



「凄いのがいるでござるな。流石に試し斬りにあれはやりすぎだと思うでござるが……逃げるか戦うか。どうするでござるか?」


「戦う。ここから先逃げてるようで魔王と戦うなんざできっこねぇよ。これからの戦闘は全部貴重な経験だ。」


「……そういうと思ってたでござる。」



 俺の言葉を聞いてため息をついたフォウルは、拳を前に突き出し構える。それを見て俺もニーズヘッグを片手で持ち、半身に構えいつでも戦える体制を整えた。


 俺たちの殺気に気づいたのか大木の主は木の陰から姿を現わす。びっしりと鱗が敷き詰められた筋肉質な体に凶悪な牙、さらにそれだけではなくその手には冒険者達から奪い取ったであろう剣と盾を持っている。



「ハイリザードマン……でござるな。通常のリザードマンよりもはるかに強い……冒険者ランクで言うとBランク冒険者達が戦うようなモンスターでござる。気をつけるでござるよ。」



 フォウルの言葉に目線だけで頷き、ハイリザードマンに向き直る。ハイリザードマンは俺たちに向かってくることなくその手にった剣を振りかざし、発光する。これは……



「魔法だっ!」



 叫ぶまでもなくフォウルも理解していたようで、俺とフォウルは互いに左右に飛び退く。するとその直後、先ほどまで俺たちが立っていた場所を高熱のレーザーが通り過ぎ、周囲の草木を溶かした。……焼くのではなく溶かした。威力が段違いすぎる。これでリザードマンと同種族かよ……

 しかし怯えていても何も始まらない。飛び退いた地点から着地と同時にハイリザードマンへ向けて一歩目を踏み出す。跳躍の勢いを殺さず踏み出したことにより、爆発的な速度が生み出される。それにより俺達はほぼ一瞬のうちにハイリザードマンとの距離を詰めた。



「おう……らっ!」



 初撃からハイリザードマンの首めがけて最短距離に剣を振るう。ポキューズさんの言っていた通り、重心をやたら前に送り二撃目を捨てた一撃だ。これを回避されたら反撃を食らう……けどよく考えたらそれは俺にとって致命傷にはなり得ない。ハイリザードマンは咄嗟の反応で盾を割り込ませ剣戟を防ぐ……はずだったが。



「そうは……させないでござるよっ!」



 盾を持つリザードマンの腕をフォウルが蹴り上げる。空中で放ったため大した威力のない蹴りになったが、盾の軌道を逸らすには十分すぎた。結果俺の剣は盾に防がれることなくハイリザードマンの首に命中し、その首の半分まで剣が減り込む。



「ははっ……こりゃいいや。これなら俺でも戦える。」



 リザードマンにすら通じなかった俺の剣が、その上位種であるハイリザードマンにも通じる……初めて感じた肉を切り裂く手応えに心が震えた。案外忌避感は覚えないもんだな。



「これで終わり……でござるな。」



 フォウルが蹴り上げた足をそのままハイリザードマンの頭めがけて振り下ろす。フォウルの体重の乗ったかかと落としと、固定されたニーズヘッグに挟まれハイリザードマンの首は切り落とされる。断面からは血が噴水のように噴き出し、首が地面に転がった。



「ふぅ……怪我はないでござるか? ショウタ殿。」


「お前こそ……足痛くねぇの?」


「この程度で潰れるほどヤワな鍛え方はしてないでござるよ。」



 そう言ってフォウルは自慢げに数発蹴りを空撃ちする。それを見て苦笑した瞬間、背筋がぞわりとざわめいた。なんだ……この気配……まだ何かが……



「危ねぇフォウルっ!」


「……ほぁっ!?」



 目の前に現れた『それ』に、驚愕しつつもフォウルを突き飛ばす。そして振り下ろされた剣はフォウルの代わりに俺の体を切り裂いた。鮮血が噴き出し、体が冷たくなって行く。ああ……まただ。また隣人が……来る……。



「ショウタ殿!?」


「がっ……なん……で……」



 俺が命を落とす寸前に見たものは、首のないハイリザードマンが剣を振る姿だった。







「ショウタ殿っ!?」



 翔太が倒れるのを見たフォウルは、首のないハイリザードマンに蹴りを放つと同時に翔太の元へ駆け寄る。ハイリザードマンは死ぬ寸前だったのか、フォウルの蹴り一発で倒れ、動かなくなってしまった。しかしそんなことをフォウルは気にすることもなく翔太に呼びかける。しかし翔太の目から光が消え、その命の灯火が消えかかっていた。



「ショウタ殿! 死ぬなでござる! 拙者をかばって死ぬなんて許さんでござるよ!」


「だ……じょう…………だ…………」



 掠れるような声でそう言うと翔太の瞳から光が消え失せる。フォウルはその姿を見て涙を流しながら体を揺するも、その行為はなんの意味も持たない。普通死んだ人間は蘇らないのだから。



「いてぇ……大丈夫か? フォウル?」


「は……え? ショ……ショウタ……殿……?」


「あー……驚かせちまったか。まあこれでわかってくれただろ?」



 死者となったはずの男は何事もなかったかのように体を起こし助けた男に笑いかける。服には血の跡が残っているものの、もう傷は残っていない。



「俺な、不死なんだ。」


 


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