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93.一種の才能

「ポキューズ殿へのニーズヘッグの代金。払うのも忘れて出ようとしてたでござろう? そりゃバカって言われても仕方ないでござるよ」


「わ……わわわ忘れてねぇし! 置いて行こうと思ってたし!」


 アカン……完全に忘れてた……金……金……

 ポケットの中を探るも出てきたのは小銭が少し。なんでだよ! ギルドでもらった金どこ行ったんだよ!



「その割には慌ててるように……よく考えたら足りるでござるか? ポキューズ殿はその剣最高傑作だって言ってたでござるよ? 下手したら金貨どころか白金貨すら飛ぶのでは……」


「は……白金貨ぁ!? 無理無理無理無理!

そんな金あるわけねぇだろ!」



 ポケットをひっくり返して出てきた金を全て机の上に置く。出てきたのは数枚の銀貨と銅貨。これを見たフォウルと顔を見合わせ乾いた笑みがこぼれる。



「……」

「………」

「…………」

「…………逃げるか」


「ダメに決まってるでござろう!?」



 テントから出ようとしたところをフォウルに掴まれ止められる。なんでだよこんなん払えっこねぇよ。



「土下座でもなんでもしてどうにかするでござるよ! ここで逃げたらポキューズ殿に二度と顔向けできんでござる!」


「無茶言うんじゃねぇよ! 白金貨レベルの買い物をどう頭下げたら銀貨数枚まで値下げできんだ! そんなもんもはや優しい強盗じゃねえか!」


「逃げようとしてたショウタ殿が言えたセリフでござるか!? とりあえず逃げるのは……」


「おーう。なんだ、起きたのか?」


「「ひゃぃっ!?」」



 フォウルと入り口で言い争っているとポキューズさんが帰ってくる。だから早く逃げようって言ったのに! フォウルに目線で訴えかけてみると目を逸らされた。お前あとでしばくわ。



「あんだけやりあってもうそんな元気でいられんのか。若いっていいわなぁ! ところで何を言い争ってたんだぁ? 外まで聞こえてきたぞ!」


「いやいやいやいやいや、なんでもないでござるでござる!」



 ござる重複してんじゃねぇか……はぁ。



「剣を打ち直してもらっといて悪いんだけど俺金ないんだ。今気づいた。」


「ショウタ殿!?」



 もういいだろ。誤魔化したって何も解決しないなら開き直ってやる。二、三回殺されるのは覚悟の上だ。死んでも剣は返さねえから覚悟しやがれ。



「……ん? ああ! 言ってなかったなぁ! その剣の金は要らん!」


「さあ好きなだけ殴れば……っては?」


「どういうことでござるか……?」


「言った通りだよ。ニーズヘッグの素材と設備はお前らが準備してくれたから原価はかかってない! ならもういっそのことお前らへの餞別としてくれてやろうと思ってなぁ!」



 そう言い切るとポキューズさんは豪快に笑い飛ばす。最高級の剣をタダって……



「ぷっ……はははっ! 最高傑作を餞別って……ポキューズさん、あんた相当イかれてんな。」


「もちろんそれだけじゃあない! 元はと言えば俺のせいでもあるからなあ! 魔王を倒してくれるのなら剣の一本や二本くらいくれてやる!」


「ポキューズ殿のせい……でござるか?」


「ああ! 俺があの時しっかり魔王を倒していれば……今こんなことにはなってなかったはずだぁ!」


「ポキューズ殿魔王と戦ったことあるでござるか!?」


「あるそぉ! ボコボコに負けたがなぁ! 素手で俺を圧倒するほどの実力者……今のままじゃあお前らは逆立ちしたって勝てねえだろうなぁ!」


「……まあそうでござろうなぁ。ポキューズ殿で勝てないほどの御仁なら拙者達では……」

「負けねぇよ。」


「な……何言ってるでござるかショウタ殿! 話聞いてたでござるか? ショウタ殿はポキューズ殿にもボコボコにされてたじゃないでござるか!」


「今は負けててもすぐに追い抜いてやる。何度負けても再挑戦し続けてやる。幸いなことに俺はその才能をもらった(・・・・・・・・・)。」



 何度死んでも諦めない限り挑み続けられる才能。これは他の誰にも与えられていない俺だけの才能だ。何百回、何千回、何億回死のうと心が折れない限り戦える。自分が勝つまで戦える。



「何のことがよくわからないでござるが……翔太殿ならできそうな気がしてしまうのが不思議でござるな。」


「まあまた説明するよ。そういうわけだ、ポキューズさん。俺が魔王を倒してやるよ。」


「ガーッハッハッハッ! 頼もしい限りだな! お前らならやれる! 大丈夫だ!」



 そう言って俺たちの背中をバシンバシン叩く……痛い! 力強すぎ!



「じゃあなポキューズさん。金はまた出世払いで払うよ。」


「期待しないで待っててやる! じゃあなぁ!」



 テントを出ると、爽やかな陽光が俺たちを照らす。そうだ、負けることなんてない。俺が諦めなければ、絶対にゆきは助けられる。










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