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90.龍爪「ニーズヘッグ」

「これが……」


「そう、フェザーソードを核に炎熱耐性を持つドラゴンの爪を用いて作った最高傑作。名付けるなら……『ニーズヘッグ』。そうだな。こいつの名前はニーズヘッグだ。」



 ポキューズさんが差し出した剣……ニーズヘッグはフェザーソードより少し長くなった剣だった。しかしフェザーソードと違う点はその刃先である。その刃先は細く、レイピアに似たような鋭さを持っていた。



「試しに振ってみるといい。フェザーソードの持ち味である軽さを維持しつつ切れ味と刺突性は段違いに変わってるはずだ……」



 アクビを噛み殺しながらニーズヘッグを手渡される。ニーズヘッグは軽く、手に馴染むようだった。試しに振るとあまりの軽さにバランスを崩す。



「あー……そいつは軽いから少し重心を前めに置いて体重を乗せて振ってみろ。そしたらもっと速く振れるはずだ……」


「重心を前めに……っておおい! 危なっ!」



 言われた通りやってみると剣の勢いに引かれて思いっきりバランスを崩して前に倒れ込みかける。するとそれを見たポキューズさんが吹き出した。



「ぶわっはっはっは! 本当にやるとはな!

やったのも驚きだが倒れなかったのも驚きだな!」


「騙したな! 本当危なかったぞこれ!」


「いやいやそれがあながち嘘でもねぇんだ! 理論上はな、重心を限界まで前に置き全体重を乗せた一撃を放つ……それができたら何よりも速い一太刀が完成する! 相当な下半身の粘りが必要になるが……その調子ならまあ大丈夫だろ!」



 そう言うとポキューズさんが豪快に笑う。どこか初めて会った時の元気を取り戻したような笑い方だ。この人の体力どうなってんだ。



「んなこと言ったって……まともに振れないぞこれ。」



 何度振っても耐えきれずバランスを崩す。たしかに剣速は速くなっているもののコントロールすら効かない。



「そりゃそうだ! 普通はそんな振り方したら顔面から地面にダイブだ! まともに振れてる方がおかしいんだよ!」


「んぁ……ショウタ殿……帰って来たでござるか……」



 ポキューズさんがタバコのようなものを懐から出して咥え、火をつける。一見よくみる光景だが、ライターもマッチも使わずに素手から火を出しているというのはよく見ないなと思っているとフォウルが起き上がった。



「おう、フォウルもお疲れさん。」


「本当に……ほんっとうに疲れたでござるよ……ポキューズ殿人使い荒いし……魔力ももう空でござる……」


「馬鹿野郎! こいつのために最高の剣作ってやってくれって言ったのお前だろうが!」


「でもあれはやりすぎでござるよ! 実際テント少し焼けてるでござろう!」


「そりゃこっちのセリフだ! 誰がテント焼くまで火力上げろっつった馬鹿野郎!」


「『テントが焼けないギリギリの火力』なんてできるわけないって言ったでござろう!?」



 ポキューズさんとフォウルが言い争っているのを尻目に、先ほど教えてもらった振り方を反復する。

 たしかに全体重を乗せて振るから速いけどどうしてもそのまま前に倒れこんでしまう……おまけに顔を地面スレスレまで振り下ろすから大きな隙もできる。どうしたもんか……そうだ、一回回ってみるか。

 全力で前に重心を移動させた後、そのままの勢いで空中を回る。隙はできるものの軌道はある程度操れる。おまけに二撃目につなげることもできるようになった。それじゃあ次は……



「だーかーらー! このテントは今の俺の家だったわけ! それをよくも燃やしてくれやがったなこの野郎! 明日から俺は野宿だよハッハー!」


「知ったこっちゃないでござるよ! 拙者こそ服が焼けたでござる! 予備なんてほとんどないのにどうしろって言うんでござるか!?」



 そうだ、前転の途中に足技を組み込んで見たらどうだろうか。それなら初撃をかわされても追撃ができる。試しにやってみるとダメだった。蹴り技を組み込んだことで着地が片足のみになり二撃目のバランスが悪くなる。

 でもいい調子だな、これを何度を練習すれば……



「ああー! もう! だから……ってうぉい!? お前何してんだ!?」


「あ、終わった?」


「いや終わったとかじゃなくてよ! えっ、何? 何でお前回ってんの……?」


「いやポキューズさんが重心を前に置けって言ったんだろ。それを俺なりの解釈した結果がこれだよ。」


「ん? あー……なるほどな、そう言うことか。しかし考えたな……なるほど、そういうやり方もあるか……」



 ポキューズさんは何かに気づいたように顎に手をやり思案顔になる。



「しかし体力が持つか……? 回転だけならまだしもかかと落としまで組み込んでるとなるとかなり……」


「そうか? 案外いけるよこれ。」



 実際もう10回くらい回ってるけど全然疲れてない。しかしとポキューズさんは止めさせようとするがそこにフォウルが口を開く



「前から思ってたでござるがショウタ殿の剣術はなんだかちぐはぐでござるな。」


「ちぐはぐ? 何が?」


「ショウタ殿は立体的な剣術……飛んだり跳ねたりして撹乱しながら戦うような剣術が向いてるようでござるがショウタ殿の戦い方はどうもそれとは真反対でござる。ショウタ殿の剣術の型は地に足つけた正道の剣術……正直合わないと思うでござる。」


「ああ、確かにそうかもな。お前さんはどうも教えてもらった剣術の型そのままという感じだ! 普通はそこから自分に合ったように崩していくもんだが全く崩れていない……正道の剣術をなぞっているだけだ!」


「んなこといきなり言われたって……」


「ふむ……ちょっと待ってろ。」



 そう言うとポキューズさんはテントに入っていき少しして出てくる。その手には大きめの木剣が握られている。



「ちょっと俺に打ち込んでこい! 指導してやる!」



 ポキューズさんは半身に木剣を構えてそう言った。

昨日で投稿始めてから一年経ったらしいです

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