89.古代遺産
失踪じゃないんです!
信じてください!
次の日、名残惜しいが旅立つべく教会を後にする。教会では朝早いにも関わらず新田さんとドイル君達が見送りにきてくれていた。
見送りに来ている子供たちの中には涙を堪えるような顔をしている子もいる。
「……本当にここに残るのか?」
昨日、あの後新田さんに俺と共に戦ってくれないかと勧誘をかけてみたが、やることがあって教会に残るらしい。
「すまんな。でも必ず後で追いつくから先に行っといてくれ。この子らのことも心配せんでええ。」
「しょうたー……行っちゃうのぉ……?」
「やだー! しょうたのこってー!」
「こらこら、わがまま言うたらあかん。翔太くんにもやることがあるねんから」
子供たちが俺の足にしがみつき、行かせないようにする始末だ。ここまで懐いてくれてると俺としても引き離し辛い……
「やだー! やだー! 行かないでー!」
う……、しょうがない。
俺は昔よく孤児院の子供たちにしてやったように、しゃがんで目線を合わせて、ゆっくりと語りかける。
「俺は今は残れないけど、必ずまた戻ってくるから。その時は外で思いっきり遊ぼうぜ。」
子供たちはその言葉を聞いて少し涙を我慢するように顔を震えさせる。
「そや、翔太くん。これを」
「ん?」
そう言って新田さんが渡してくれたのはこの辺りの地図だった。しかしその地図はある一点まで線が引かれており、その中心に×印が記されている。
「それは今回の襲撃で魔族達が行軍してきた道のりを記してる。恐らく奴らはその辺から転移門を介してここに来たんやと思うわ」
「転移門って?」
「ああ、転移門言うのはこの世界に残されてる数少ない古代遺産や。特定の地点と地点を一瞬で繋ぐ……ようゲームとかでもあったやろ? あんな感じのやつや。国内でも2個くらいしか存在が確認されてへんはずやけど『アルギュロ遺跡』の中にならないと言い切られへん。」
「アルギュロ遺跡って確か……」
「どうせ『アルギュロ遺跡って何?』って聞くんやろうから先に言っておくとグリモリア王国最古の地下遺跡や。冒険者最大のドリームランド、未だその全ては探索されきっておらずその中には未知のお宝が数多く眠ってるという。その昔勇者パーティが挑んで未知の鉱石を発掘したり古代の神剣を拾うてきたりもしたらしいで。」
あー……そういや前おっさんが言ってたな。あの剣を発掘した遺跡か……
「でもそれってかなり危険なんじゃないのか? それこそゲームで言えばクリア後の隠しダンジョンみたいな所だろ?」
「まあせやな。Aランクの冒険者ですら戻ってこやんことが多い。それでも君なら……って思ってな。」
「でも……もしそこに転移門があったとしたら新田さんが追いついてこれないんじゃないか?」
「いや、わしは追いつくあてがあるからな。その辺は心配せんでええ。」
「アテも何も……まあいいや。じゃあありがたくもらっておくわ。」
そう言って新田さんから地図を受け取る。
すると新田さんが消え入りそうな声を漏らした。
「……ほんまにありがとうな。翔太君。」
「こっちのセリフだっての。……ありがとうございます。新田さん。ショートカットは本当に助かります。」
俺はそう言って頭を下げる。すると新田さんは一瞬驚いたような顔をして、しかしすぐに苦笑するように顔を歪めた。
「なんや久々に翔太君に敬語で話された気するわ。」
「今の新田さんは尊敬に値する人なんで。そりゃ敬語くらい使いますよ。」
「そんなんせんでええのに……そんなことされたらそれこそわしが君に敬語使わなあかんくなってまうわ。」
「ははっ。それじゃあ新田さん、そろそろ俺行きますね。」
「おう! じゃあな! 今更やけどお金ありがとうな!」
俺が教会を離れると新田さんと子供達がずっと手を振って送り出してくれる。
……やっぱちょっと残りたいって気持ちになっちまうなぁ……
街を歩いていると、昨日と同じように町中に復興の波が押し寄せていた。街の家を修理する冒険者に難民たちの保護をする兵士、そこに食料や物資を町中に売り歩く商人などが所狭しと駆け回っている。
そしてポキューズさんのテントにたどり着くと尋常じゃないほどの熱気が周囲を包んでいた。テントは所々焦げており、外でポキューズさんとフォウルが息を切らして倒れていた。
起こそうと二人に近づくとポキューズさんがそれに気がついたのかけだるげに起き上がる。
「おう……やっと来たか。できたぞ、俺の作れる最高レベルの剣がな。」
そう言うポキューズさんは疲れたような表情で、その手には白銀に輝く刀身を携えた剣が握られていた。
まさか一ヶ月経つとは……
その割には短いですが勘弁してください




