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87.非才の成長

「翔太……くん……」



 翔太くんはそう言ってこちらに顔を向け、笑いかける。



「信じてたぜ、新田さん。後は任せろ」



 すると翔太くんは(グロリアス)達に向き直り、鍔迫り合いになっていた斧を押し返す。しかし押し返すと同時に翔太くんへと集中された魔法が飛来し、命中した。



「いぇ〜い。顔面命中〜死んだ〜」


「な〜にが『信じてた』だよ! さみ〜っての」


「……当たってねぇよ」



 死んだと思っていた翔太くん声が聞こえたからか、チンピラ達はギョッとした顔になる。



「試しに剣で防いでみたけどダメだな。すぐに剣が壊れちまう。これなら体で受けた方がいい」



 そう言う翔太くんの剣は、既に折れていたのに加えて、至る所にヒビが入ってしまってる。もう長くは持たんやろう。



「剣で防いだだと……? ふざけるな! そんなことができるわけねぇだろ! このイカサマ野郎が!」


「んなこと言われてもできたんだからしょうがねぇだろ」



 激情に任せて振り下ろされた斧を翔太くんは軽々と受け流す。砕けかけの剣が砕けないように力を加減しとるな……。



「おいおい。こんなもんかよ。さてはあんたあんまり戦闘経験ないな? 遅すぎるぜ。これ。」



 魔法を受け止めたり、あの速さの攻撃を剣が壊れんよう受け流す余裕があったり……わしの時は手ェ抜いとったんかいな……ほんま、人が悪いわ。



「てめぇ! 言いやがったな! 《ダブルアクセル》!」



 異常なまでに加速したグロリアスの巨体から振り下ろされた斧は翔太に反応することすら許さず、その体を容易に切り裂いた。

 


「はっはっは! 見たか! 俺のこと舐めてるからこうな……」



 その言葉は最後まで続かなかった。そりゃそうや。続くはずがない。たしかに切断され、死んだはずの翔太くんがまだ立って……まだ生きてるんやから。



「確かに。速えな。ほんと、魔法ってのは厄介なもんだ。」


「てめぇ……なんで生きて……まさか蘇生魔法か!」


「さあ、どうなんだろうな。ただ……俺は死なない。」


「ほざきやがれ! なら魔力尽きるまで殺してやるだけよ!」



 ダブルアクセルのかかったグロリアスの斬撃に、後方からの援護射撃。それらは翔太くんを削り、何度も殺していく。剣が砕け、頭が潰れ、心臓を潰され、全身を焼かれる。それでも翔太くんはグロリアスの前に立ち続ける。



「ほらどうした……もう終わりか?」


「ぐっ……《アクセル》!」



 翔太くんの言葉にグロリアスは加速する。翔太くんじゃついていけないほどの速度で、血まみれの斧を振りかざす。……が、



「これだけやられてりゃ、馬鹿でもタイミング掴めるっての」


「なっ……!」



 振り下ろす寸前、翔太くんはその動きを予知していたかのように脇に避ける。そしてグロリアスの速度を利用し、その無防備な腹へもはや刀身のない剣の柄によるカウンターを叩き込んだ。



「がはっ! てっ……てめぇ……」


「確かに速えけど動きが単純なんだよ。まあその速度で曲がることができねぇんだろうけど。さて……」



 そこまで言うと翔太くんはバックステップで距離を取り、チンピラ達も視界に含めるような位置に立つ。さっきまで吹き荒れてた魔法も、もうなくなった。



「そろそろ魔法の雨も降り止んだな。どうする? まだやるか?」


「や……るに決まってんだろ! シビアスが殺られてんだ! そいつを殺さなけりゃ、部下達に示しがつかねぇ!」



 グロリアスが、わしを指差して怒鳴りつける。それと同時に今まで目を背け続けてきた『殺人』という罪がわしの背中にのしかかる。



「……そうか、でも悪いけど俺はあんたを止めさせてもらう。怒る気持ちも、泣きたい気持ちもわかるけどよ。」


「な……ッんでテメェが! 俺を止めんだよ!

テメエは関係ねぇだろ!」


「ある。新田さんに正義(大切なもの)を取り戻すよう言ったのは俺だ。だから新田さんがそれを取り戻すまで、この人は殺させねぇよ」



 言い切るより前に、翔太くんがグロリアスの顔めがけて剣の柄を投げつける。それをグロリアスは反射的に斧の柄で弾くものの、弾いた時にはもう翔太くんの木刀がグロリアスの腹にめり込んでいた。



「……俺は全ては救わない。でも、大切なものは助けたいんだ。」



 グロリアスは何も言わなかった。何も言わずに、前に倒れる。しかし地面に落ちることはなく、その巨躯を翔太くんが支える。



「おい、そこのお前ら」



 翔太くんが声をかけるとチンピラ達はビクッと肩を跳ね上げる。そこに向けて翔太くんはグロリアスを投げつけた。



「そいつを連れて帰れ。それともまだ戦うか?」



 その言葉を聞きチンピラたちはグロリアスを抱えて逃げて行く。翔太くんはそれを見届けるとこちらに向き直る。



「大丈夫か? 新田さん。」


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