9.才能
「はぁ…」
先ほどおっさんに言った言葉を思い出しため息をつく。
あれは全部嘘だ。本当は俺だって剣を使って戦いたい。おっさんほど強くなって魔族相手に剣を振る自分を想像して練習していた。だが練習するにつれて俺には無理だともわかる
実際に剣を振ったものにしかわからない感覚……
俺は剣の才能などない。
自分の非才さに気づいてしまったのだ
だから嘘をついた
ちっぽけな自尊心を守るために
本気でやっても強くならないという事実に気づかないために。
「ま、くよくよしても仕方ない。ゆきのところへ行くか」
俺はそれ以上考えないように、自分の思考に蓋をするようにゆきの元へ走っていった。近寄るとゆきは嬉しそうにこちらに駆けよってくる
うん、かわいい
「翔太おかえり、ガイラスさんと何話してたの?」
「ん? あー……まぁ軽い自己紹介みたいなもんだよ」
「そうなんだ! ガイラスさんはね、すごいんだよ。色んな魔法が使えてね、それに優しいから皆にも人気なんだ!」
「……そっか
それよりもさレベルはどんな感じ?
やっぱもう上がった?」
「あ! そうなの!
私も坂本君もレベル2になったの」
「そうだぞ、お前が後ろでガイラスさんとイチャついてる間に俺達はもうレベル上がってんだ」
「イチャついてねぇよ!
お前ほんと殴るぞ!」
「ははっ悪い悪い、
それよりもお前もレベル上げねぇのか?
剣なんか持ってるんだからその気なんだろ?」
そう、俺は剣を持っている。木製の剣であるが。
自分に剣の才能はないとわかっていながら、剣への未練を捨てきれなかったのだ。
……見苦しい。
「いや……俺は……」
「いいからやってみろよ、あのうさぎなら弱いから簡単に倒せるって」
無理だと思う反面、あれだけ練習をして来た俺ならできるんじゃないかとも思う。浅ましい考えだとは思うが……努力が報われてもいいだろう。
「……わかった」
俺は近くにいたうさぎと対面し、剣を構える。といっても見て覚えただけなので構えもめちゃくちゃで隙だらけの構えなのだが。
そして力いっぱいうさぎにむけて剣を振るう。毎日素振りで練習してきた、まっすぐ上に振りかぶりそのまま振り下ろす形だ。しかしうさぎは横にジャンプし易々と俺の剣を回避する。
「なっ……」
そしてうさぎは横に着地すると同時に地面を力いっぱい蹴り、俺の方に向かって突進してくる。地面がえぐれている。やっぱりあんな奴でも魔物なんだ。殺される! 俺は怖くなり、目をつぶって頭を手で守るような体勢になった。
しかしいつまでたってもうさぎが俺に飛びついて来ない。予想していた痛みも全く来ない。おそるおそる目を開くと、そこには燃え尽きたうさぎの死体があった。
「大丈夫か! 翔太!」
「翔太!」
あぁ……二人が助けてくれたのか。
俺は全身の力が抜け、剣を手放しその場に座り込んでしまう。
「ああ、大丈夫だよ。助けてくれてありがとう」
「いや、ごめん。
戦えなんて無責任な事言って。
本当に悪かった」
「ごめんね……ごめんね……」
なんだ……これは
なんで二人が泣いてるんだ……
悪いのは俺なのに……弱くて戦えない俺なのに……
なんで……なんで……
それからのことはよく覚えていない。
気がついたら自室のベッドに倒れ込んでいた。
なんで俺には魔法が使えないのか。
なんで俺はこんなにも弱いのか。
……そんなことばかりを考えながら
戦闘シーン…
難しい