86.正義という重荷
だんだんと遅くなっていく投稿速度……
もうちょっと早くしたい。はよ書きたい。
そうは思うんですけどねぇ……
何を失ってでも守り続けた己が正義も、気がつけば失っていた。彼の憧れた正義はいつのまにか歪み、やがて修復不可能なまでに壊れてしまっていた。
「正義なんてもんは偽物や! そんなもんを信じ続けても……いつかはついて行けなくなる! どうやっても自分の実力不足が立ちふさがるんや! 自分の憧れた理想が……最大の重荷となって覆い被さり続ける!」
新田が剣に力を込める。すると翔太の手から滴る血の勢いは強くなって行き、より深く掌の肉が抉れる。
「ついて行けなくなったんじゃないだろ! ついて行かなくなったんだ! 実力が足りないなら立ち止まって実力をつければいい! 重荷なら誰かと分け合えばいい! 男だろ! 一旦自分でやるって決めたことを簡単に投げ出すんじゃねぇよ! 正義のヒーローに! なってみせろよ!」
「うるっさいわボケェ! 何様のつもりじゃあ!」
新田の体重を乗せた回し蹴りが翔太の腹部に命中し、吹き飛ばす。
「わしはもう正義の味方になんかなれんのや! どこの世界に人を殺すヒーローがおる? どこの世界に君みたいな子を蹴り飛ばすヒーローがおる? わしの正義はもう壊れたんや! ほっといてくれや!」
「ゲボッ……だから……壊れたとか、なれないとか聞いてねぇよ……新田さんが答えるまで……何度でも聞くぞ……」
それでも翔太は倒れなかった。立ち上がり、口から血を吐きながらも新田の元まで歩み寄り、また新田の持つ剣を握る。
「新田さんは……何になりたいんだ……」
まっすぐな瞳で、翔太は問いかける。何度も殺され、倒されてなおそう問いかけ続ける。しかし耐えきれなかったのか、翔太は倒れた。
「わしは……」
そこまで言うと突然新田は横に飛びのく。剣を握っていた翔太も、新田に引っ張られるように横に飛びのく形となり、地面に叩きつけられる。
すると先程まで新田と翔太がいた場所に斧が突き刺さる。
「おい! おめぇら俺の部下に何してくれてんだ!」
どこからか現れた男は2メートルほどもあろうかという巨体に、鋼のような筋肉を纏っていた。スキンヘッドで、顔には切り傷や火傷の跡が痛々しく残っており、その恐ろしさを強調している。その男の後ろには10人ほどの体格のいいチンピラ風の男たちがこちらを睨んでいた。
「グ……グロリアスさん! 助かった! アニキが! アニキがこいつにやられた!」
それに気づいた小男は、必死にグロリアスと呼んだ男の元へと四つん這いで這い寄っていく。あっという間に男の後ろに庇われる形で避難した。
「……ごめんやで、翔太くん。《コンベア》」
新田はこれから起こることを察したのか、翔太の倒れている地面を動かしてこの場から避難させる。新田が日本の文明を参考にして開発した唯一の地属性魔法だ。
「何やお前ら。こいつの上司かいな」
送り出される翔太に一瞥して、新田は男達へと向き直り、吐き捨てる。
「ああそうだ! 貴様……よくもシビアスを殺ってくれたな……ぶっ殺してやる!」
グロリアスは新たに斧を構え、新田に向ける。それに呼応して後ろのチンピラ達もそれぞれの武器を構える。
「能書きはええからはよ来いや。返り討ちにしたるわ。」
「ほざけ! 《アクセル》!」
グロリアスが魔法を唱え終わると、一瞬で新田とグロリアスの距離が詰められ、斧が振り下ろされる。しかし
「その程度の攻撃、珍しくもなんともないわ。」
新田は軽く体をひねっていともたやすく斧による一撃を回避する。まるで来ることが分かっていたかのように、行き場を失った斧は空を切った。
「これでしまい……」
そう言ってできた隙に新田が切り込もうとする。しかし剣が接触する寸前、不意に新田の攻撃の手が止まる。
「ぐおらぁ!」
その間にグロリアスは態勢を立て直し、斧の柄による一撃を浴びせる。短く持った一撃故に、ダメージこそ大きくないものの態勢を崩すには十分すぎるほどの一撃だった。
「おらおらおらぁ! どうしたぁ!?
この程度珍しくもないんじゃなかったのかぁ!?」
「ぐっ……やかましいわハゲェ!」
そこへ態勢を戻す暇も与えないほどの猛攻が新田を襲う。グロリアスからの斧撃、そしてチンピラ達からも弱いものではあるが魔法が飛んできている。その攻撃を辛うじて躱し、受け流してはいるものの、回避しきれなかった攻撃によるダメージが蓄積されていく。
「ほらほらどうしたぁ!? 守ってばっかじゃ勝てねえぞ!」
(くっ……なんで今更迷うんや……)
新田の脳裏には、先ほどまでの翔太の言葉が響き続けていた。
『正義のヒーローに! なってみせろよ!』
(そんなもん……今更なれるわけ……)
『壊れたとか、なれないとか聞いてねぇよ。』
『新田さんは、何になりたいんだ!』
(そんなもん……)
「……正義のヒーローに……なりたいに決まっとるやろ!」
攻撃にとうとう耐えきれなくなった新田の剣が砕け散る。
「おらぁ! これで終わりだぁ!」
無防備な状態となった新田に巨大な斧が振り下ろされる。しかしその斧は新田に届くことはなかった。
「そう言うと思ってたぜ」
新田の目の前に現れた少年が、そう言った。
グロリアスとかシビアスとか、覚えなくていいです。ちなみに小男の名前はザーナンテです(今考えた)




