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81.たとえ世界が変われども

あかん……このペースやと完結までにめっちゃ時間かかる……

 冒険者ギルドを後にして、ニッタさんが言っていた建物へと向かう。町中では厳つい冒険者たちが丸太を運んでいたり、大工の真似事をして家を修復していたりする。冒険者達は皆一様に首から冒険者カードをぶら下げていた。大体はF、Eランクの冒険者だけどそれに混じって何人かはDランク冒険者もいたりする。この人たちは魔物討伐には参加しないんだろうか。


 そんなどうでもいいようなことを考えていると小さかった建物が次第に大きく見えてくる。木造だが、どこか洋風な教会だ。その建物の外では小さな子供達が無邪気に遊んでおり、それをシスター姿の女の子が相手をしていた。


 俺がその光景を見ていると、急に一人のやんちゃそうな男の子が蹴りかかってきた。えっ何この子。微妙に痛い。



「こら! ドイル! すみませんお兄さん……どうか許してください……」


「止めるなねーちゃん! ぼーけんしゃだ! ぼーけんしゃが攻めてきた!」



 それに気づいたシスター姿の女の子が走り寄ってきて、男の子を押さえ込んだ。そしてすぐに謝って来た。しかし男の子は必死で手足をジタバタされながらシスターから逃れようとする。



「いや、大丈夫ですよ。気にしないでください。」


「いえいえそんな! あの……少ないですけどこれで……」



 そう言って女の子は銀貨を差し出してくる。

 えっ何この子ら。どんだけよ。



「いや……本当大丈夫ですから……」



 ちょっと子供に蹴られた程度でこんなにもらえんわ……



「へ……あ、そうですか…… まだ足りない…」


「いや! お金とか要らないですから! そこまで俺怒りっぽく見えます?」


「いえ! 決してそんなことは……」



 そう言いながら彼女はチラチラと俺の冒険者カードを見る。そして男の子から叫ばれるぼーけんしゃという単語。これは……



「えっと……もしかして冒険者って良く思われてないんですか?」


「え……えーっと……その……はい……」



 すごく申し訳なさそうに尻すぼみになりながらもシスターは俺の考えを肯定する。やっぱりか。確かに荒くれ者の溜まり場って感じはするからな。実際スキンヘッドとかこの辺よく見るし。



「その……冒険者さんたちの中でも低ランクの方達はちょっと……その……攻撃的な方多いので……」



 そう言って俺から守るように少年と俺の間に腕を入れて守るように振る舞う。

 めっちゃ嫌われてる。子供なんか親の仇を見るかのような目で見てくるし……



「このー! ぼーけんしゃめ! またぼくたちの家をこわしにきたなー!」


「いやどんだけやばいやつなんだよ。冒険者」


「こらっ! ドイル失礼でしょ!」



 ……冒険者やばすぎない? 町では家建ててるのにここだと家壊してるわけ?



「えっと……もしかしてこの子って冒険者と何かあったんですか?」


「この子……というか……」



 そう言ってシスターは目線を泳がせる。

 それにつられて目線を移すと教会が目に入る。先ほどまでは気がつかなかったが焼け跡や破壊された跡などを修繕した形跡があった。



「……実は昔から冒険者さんに金品などを取られることが多くて……」


「えっ……それって強盗じゃないですか。それこそギルドに依頼して追い払ってもらう案件なんじゃないっすか?」


「そういう風に考えたこともあったのですが……ただでさえギリギリしかないお金、盗られた分も考えると依頼するお金がないんです……子供達にもきちんとご飯を食べさせてあげられてないですし……」



 そう言って女の子は表情を暗くさせる。……人ごととは思えない。なんだかすごい助けてあげたい。



「あの……それだったらこれを」



 そう言って俺はシスターにリザードマンで得られたお金を差し出す。全く関係のない人だったら、ここが孤児院じゃなければきっとこんなことはしなかっただろう。でも俺は、その苦しみを、ご飯が食べられない苦しみを知っているんだ。



「へっ……? なんですかこれ……ってなんですかこの大金!? ここここんなのいただけませんよ!」


「受け取ってください。それで、皆お腹いっぱい食べてください。」


「!? 腹いっぱい食えるのか!?」


「ああ、お腹いっぱいで、もう食べられないってくらい食えるぞ。」


「まじかよ! すげー!」


「でも……なんでこんなに……あなたとは今初めてあったばかりじゃないですか! ……はっ! もしかして私の体を……」


「いや、いらないです。俺好きな人いるし。」


「でも……だとしたらなんでですか……?」


「……子供達が食べられなくなったら、真っ先に削られるのは(シスター)達の飯だ」


「!?……な……なんで…………」


「親が食うものがなくなれば、自生している野草なんかにも手を出す。そんな状態で、誰よりもお腹が空いて栄養が足りていなくてもそんなそぶりをまるで見せずに子供達と接する」


「………」


「俺はそんな(シスター)を知っています。そんな人に俺は助けられました。だから……今度は俺が助ける側になりたいんです。俺はもう二度と……あの人とは会えませんから。」


「…………心より、感謝します。本当にありがとう……」



 そう言って少女は俺に深々と頭を下げた。綺麗に90度に腰を折り曲げたお辞儀だ。


 死んだみたいに言っちゃったがシスター(先生)はまだバリバリ生きている……はずだ。もう会えないというのも嘘じゃないけどどうも勘違いされてるっぽい。泣いてるし、この子。



「お? 来たんかショウタくん。待っとったで。」



 そこにニッタさんがやって来た。相変わらずニタニタと貼り付けたような笑顔をしている。



「え、なにショウタくん。エリスちゃん泣かしたん? あかんようちの子泣かしたら」


「いえ違うんです! この方が……寄付を……」



 そう言って女の子がニッタさんに金の入った袋を見せる。



「そうなん? ……ってなんやのこの金額!?

ショウタくんなんでこんな金ぽんっと出せんの!?」


「いや……ちょうど依頼受けた時の金があったからな。俺には使い道もないし、ちょうどいいよ。」


「ほんまにありがとうなぁ! ショウタくん!

こんだけあれば子供達にも腹いっぱい食わせたれるわ! エリスちゃん! 今日はそのお金でいっぱいご飯作ったってくれんか?」


「はいっ! 全力で美味しいものを作らせてもらいますね!」



 そう言って少女……エリスちゃんはドイルくんを連れて走り去っていく。その足取りは軽やかで、とても嬉しそうだ。



「あの子にもちゃんと食わせてやれよ。成長期なんだから。……ってかニッタさんがここの責任者なの?」


「いや、ちゃうちゃう。わしはここの責任者のマブダチやな。言うても責任者もこないだの襲撃で亡くなってもうたんやけどな」


「そうなんっすか……なんかすいません。」


「いや、ええねん。確かに悲しいけどわし以上にあの子らの方が悲しいやろうからな。エリスちゃんとか下の子らのこと考えて泣くことすらしやんねんで。わしがうじうじしてられるかいな。」


「強い子ですよね。あの子。」


「せやなぁ。あの子外に働くことを選ばんとほぼ無給でここで働いてるからな。まだ13歳やいうのに。『院長先生や弟妹達に恩を返したい』言うて……院長がおらんくなってもあの子らが生きていけてるのはエリスちゃんのおかげやで。」



 ……どことなく聞いたことあるなと思ったら。ゆきと同じなんだ。確かゆきも弟達のために欲しいもの何にも買わないで、学費は奨学金を借りて、バイトもせず弟達の世話をしていた。



「でもニッタさんのおかげでもあるでしょうに。商人だって言ってたのにそんな格好してるのはそういうわけだったんですね。」


「アホ抜かせ、これはわし流のファッションや。別にここに金入れとるからとちゃう。」


「はいはいツンデレツンデレ。なるほどなぁ……あの爪を欲しがってたのはそういうわけか。」


「ちゃう言うてるのに! わしがそんなええ人なわけあるかいな!」


「はいはい。わかってるわかってる。暇だし俺も子供達の相手でもするよ。結構慣れてるしな。」


「おっ、助かるわ。じゃあとりあえず中入ろか。」



 そう言いながらニッタさんは外で遊んでいた子供達を連れ、教会への入り口を開けようとする。しかしふとニッタさんは何かを思い出したかのようにこちらに向き直る。



「おっと……そういや言ってなかったな…… ようこそ、『セティ教会』へ」

行間変えてみました

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