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76.野獣の戦い

自分で名付けといてなんですけどタドムとヤドムってややこしすぎでしょ。

「そんな……なんで……」



 燃え行くタドムの姿を見ても俺の口からはまともな言葉が出なかった。それはタドムも同じで、彼はもはや喋ることはできず、その体は崩れていった。



「あ……あぁぁ……」



 翔太は目の前で焼かれてゆくタドムの姿を見て翔太は言葉にならない声を漏らす。



「……チッ、外したか。」


「……っあぁぁぁぁぁ!!!」


 

 坂本の言葉を聞き、翔太の中の何かが切れたように跳ね上がる。しかし翔太が起き上がろうと全身に力を込めようと、坂本の爪が肌に食い込み、それを阻止する。



「無駄だよ翔太、魔人の力で刺した爪が人間ごときに抜けるはずがない。」


「っうううあぁぁぁ!! 許さねぇ! 許さねぇぞ坂本ォォォォ!!!」



 ぶちぶちと肉の引きちぎれる音が響く、翔太の肩に打ち込まれていた爪が翔太の肉をえぐり、筋が引きちぎられる。肩に刺さっていた爪は次第に肉に埋まってゆき、貫通して翔太の肩から外れ、地面に刺さった状態になる。翔太の両肩からは大量の鮮血が噴き出すが、それを無視して起き上がる。両腕はもはやかろうじて繋がっている形だ。



「……坂本ぉぉぉ!!!」


「……マジかよ。」



 腕を置き去りに、翔太が坂本へと飛びかかる。距離を詰め、回し蹴りを坂本に放つ……が……



「まあ、その程度効かねぇよ。」



 坂本はその蹴りを受けてなお、微動だにしなかった。むしろ蹴った翔太の脚が鱗によってズタズタにされていた。



「……ううぅ!!」



 蹴りが効かないとわかってなお、翔太は蹴りを放ち続ける。顔、首、みぞおち、股間など、急所を狙って蹴るが、それも効かないようだ。金的だけは少したじろいでいたが。



「……ッ、しつこいんだよ!」



 坂本が痺れを切らして翔太の胴を爪で貫く。しかしそんなことは知らないと言わんばかりに、翔太は坂本の腕に足を絡み付けて関節を極め、鱗に覆われた腕に噛み付く。



「ぐっ……はなせ! 獣かてめえは! もう無駄だって、わかれよ!」


「ぐぅぅ!! うぁぁぁぁ!!」



 坂本が腕を振り、衝撃で翔太を吹き飛ばす。吹き飛ばされた翔太は一瞬地面に転がるものの、すぐに立ち上がり坂本へと向かう。



「ああもう……失せろ!」



 それを迎え撃つように坂本が爪による攻撃を放つ。



「そこまででござる。」



 翔太の蹴りと、坂本の爪撃が交わる直前、フォウルが間に割って入る。両者の攻撃の勢いは完全に殺され、翔太はその場に崩れ落ちる。



「……ッ! てめぇは……フォウル!」


「坂本殿、初めましてでござるな。」


「ああ……けど噂には聞いてるぜ。魔闘流の継承者……ゾルガルムの弟子フォウルってな」


「……そこまで知ってるなら話は早いでござる。ここで戦うか、退くか……選べ」



 フォウルが坂本に向かって拳を構える。その体からはおびただしいまでの魔力が溢れ出し、フォウルの全身を包み込んでいた。



「……やめておこう。魔力が残っているならまだしも、今の状態では戦えない。」



 そう言い残し坂本は空へと飛び去る。こうして、イエーロの街での戦いは終わった。







 町は壊滅的な打撃を受けていた。魔王討伐隊の活躍のおかげで死人こそほとんど出なかったものの、建物は焼け焦げ、住む場所を失った難民達があちこちに布を敷いて過ごしている。



「本当に来ないのかい? フォウル君」



 旅支度を終えたベルナールがフォウルに問いかける。火傷の跡はのこっているものの、ポーションによってほとんど回復している。他のメンバーも同様だ。



「残念でござるが拙者は残るでござるよ。せめてショウタ殿の心が落ち着くまで、側にいるでござる。」



 そう言ってフォウルは遠くを見る。 

 翔太は坂本との戦いによって全身ボロボロになっていた。しかしニコの丸薬を受け入れず、ただ空虚に倒れ込んでいる。



「……正直言って君は天才だ。魔王を倒すのも君がいればかなり有利になるだろう。だから……付いてきてくれないか?」



 ベルナールが頭を下げる。英雄ベルナールが頭を下げたことで魔王討伐隊の冒険者達はざわめくが、フォウルは落ち着いていた。



「……本当に申し訳ないでござる。

それでも拙者はショウタ殿が心配なのでござるよ。」


「どうして……そこまでショウタ君に構うんだい? 言っちゃ悪いけど僕には彼がそこまでの人には……」


「ショウタ殿は拙者の憧れなのでござるよ」


「……憧れ?」



 フォウルの言葉にベルナールが驚いたような声を上げる。能力において翔太よりも上のフォウルが憧れるということが理解できなかったのだろう。



「ショウタ殿は誰よりも弱いでござる。魔王討伐隊の中でも、前のパーティメンバーの中でも。誰よりも弱いくせに誰よりも本気で魔王を倒す気でいる。……弱くても譲れないもののために強者に立ち向かう。拙者はそんなショウタ殿に……英雄に憧れたのでござるよ。」



 フォウルが意志の固まった目でそう語った。そしてフォウルの元にライアットが歩み寄る。



「……まだお前には俺の技を伝えきれていない。だから……必ず合流しろ。」


「……はい。

ショウタ殿の心が立ち直ったら、すぐに合流するでござる」


「そう……そうだね……うん、待ってるよ。君達二人にまた会える日を。」




 フォウルに別れを告げてベルナール達は町から出て行く。来た時は倍ほどもいた魔王討伐隊の去り際ははどこか寂しげに見えた。


非才の「剣士」やのに剣振ってへん……

蹴ってばっかな気がしてきた……

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