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75.地獄の炎

がんばった……ワシがんばったで……

「《プロミネンスブレス》!」


「《クレイブシールド・トリプル》!」



 坂本によって放たれたブレスは先ほどのものとは比べ物にならないものだった。ベルナールによって作り出された3重の土壁もたやすく溶かし翔太達へと業火が迫る。



「……ッ! 《アダマンタイトガードッ》!」


 

 しかし翔太達にブレスが届くことはなかった。ブレスを全てベルナールが受け止めたからだ。《アダマンタイトガード》。地属性の極地と言われる魔法によって坂本のブレスは防がれたが、しかしベルナールの体はいたるとこが焼け焦げ、もはや立っているのがやっとの状態となっていた。



「ベルナールさんッ!!!」


「……ベルナール!」


「ぼ……僕が……いる……限り…………なかま……は……」



 最後まで言い切ることなくベルナールが倒れる。どう考えても重症だ。戦線復帰は無理だろう。



「……驚いたな。俺の攻撃を防ぐとは。でも……」


「サカモトォォォォ!!!」



 普段は寡黙なライアットが吠える。その目にはもはや坂本しか写しておらず、素手で龍と化した坂本と撃ち合っていた。



「べ……ベルナールさん、なんでそこまで……」



 翔太が言葉を投げかける。しかし返事はない。言葉が出ないのだ。



「ベルナールさん……そうだ! これを……」



 そう言って翔太が差し出したのは一粒の丸薬だった。血にまみれ色が変色してしまっているが、それはニコからもらった回復薬だ。

 しかしそれを飲ませようとした途端、翔太の脳裏にニコの言葉がよぎる。


『本来自然治癒には大量のエネルギーを必要とするの。毎日コツコツエネルギーを消費して傷を治すところをドカッと一気に治すわけ。もしエネルギーが足りていないと悲惨よ。生命維持に必要なエネルギーさえ傷の修復のために搾り取られて……』


 エネルギー……今のベルナールさんにそんなものが残っているとは到底思えない。……魔法が使えれば……ポーションがあれば……



「ふぅ……英雄とはいえこんなもんか。」



 ドサリ、という音とともにライアットさんが地面に倒れこむ。坂本の攻撃によってボロボロになったライアットさんはもはや半死体のような状態だ。



「ライアット・サングレイス。これで終わりだ。」



 坂本が腕を振り上げる。その手には鋭い爪が並んでおり、あんなもので貫かれたらひとたまりもないだろう。世界が止まるような感覚。思考も、理屈も、何もなかった。ただ俺は気がつくと坂本を剣で攻撃していた。

 とはいえ坂本も超然たる反応速度でそれを回避、距離をとって構えなおした。



「坂本……頼む。やめてくれ……今ならまだ……」



 俺がそこまで言うと坂本は炎の槍を生み出す。無詠唱で生み出されたそれは小さいものの人1人くらいは余裕で焼き殺せそうな熱量を伴っていた。



「間に合わねぇよ。俺はもうお前らの……」



 生み出された槍が倒壊した建物のある一点に向かい飛んでゆく。するとそこから人が現れ、悲痛な絶叫の後、事切れる。



「敵だ。」


「坂本ぉぉぉ!」



 翔太が坂本に飛びつく。怒りに身を任せて放たれた一撃は易々と坂本に躱され、その身を爪で引き裂かれる。



「がっ……はっ……」



 一瞬で死に、そしてまた再生する。翔太はその再生直後を利用し坂本へと連続する一撃を放つ……しかし



「死ぬはずねぇよな。お前は。知ってるよ。」



 翔太の決死の攻撃は坂本は爪で受け止める。確実に常識の埒外からの攻撃すら坂本には見切られていた。

 そして坂本は腕を捻ることで翔太を地面に叩きつけ、翔太の両肩に深々と爪を突き刺した。



「〜〜ッ!?」



「……フォルセティの使徒。それは決して不死でも不死身でもない。殺す手段は存在する。」



 翔太に爪を突き刺したまま、坂本は自分の爪を力任せにへし折る。すぐに坂本の爪は再生したが、翔太の肩には依然として爪が楔として打ち込まれたままだ。



「俺が龍の神から授けられた炎。その炎は体のみでなく魂までも焼き尽くす……《インフェルノ》」



 坂本の手から黒の炎が発現する。その炎は何物をも飲み込むような黒色で、生物の本能を刺激する。



「再生すら許さないほどに燃やし尽くされる……仮に再生したとしてもそれはお前(翔太)とはべつのお前(翔太)だよ。」


「坂本……やめ……」


「さよならだ翔太。俺を恨め」



 それが俺の目に写った最後の姿だった。






 なぜ? どうして? 目の前の光景にそんな考えが逡巡する。坂本の放った黒の炎は命中し、対象を燃やしている。その対象は本来あるべき対象()ではなく……



「シ……ショウタっ…………ち…………」



 ここにいるはずのない(タドム)だった。








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