side story 坂本弘樹
今回は本編とは関係なかったりなくなかったり……
俺、坂本弘樹を語る上で親友である大宮翔太の存在は外すことができないだろう。顔も運動能力も頭も平凡でありながらなぜか憎めない一途な男……そう、今電柱の陰からストーキングをしている男だ。
「おっすー翔太。今日も元気にストーカーしてんなー」
「……!? いや待て、坂本。これは違うんだ。」
「いや……流石に誤魔化せねぇよ」
今日初めて見たとかならともかく最近は2日に一回くらいストーカーしてるの見てんだぞ。さすがに無理あるわ。
「坂本……お前なんか欲しいものあるか?」
挙句買収に走りやがったよこの親友は
「放課後カラオケ奢りで」
「ぐぅ……わかった……」
まあされるんだけどね、買収。貰えるもんはなんでも貰っておくが俺のモットーだ。
「ってか折角だから神城も誘おうぜ。ストーカーするより関係進めるだろ。おーいかみし……」
「ちょちょちょっと待って! バッカお前……マジバッカこの……バッカ!」
……バカにバカって言われたくねぇよ。どんだけ臆病なわけこいつ。側から見てたらお前ら両思いだよ。分かり易すぎんだよはよくっつけや。向こうも時々翔太ストーキングしてるの俺たまに見るんだからな。微妙なタイミングですれ違い続けてもうもどかしい通り越してイライラする。これが恋愛漫画の世界なら付き合うまで100巻くらい要るんじゃねぇの?
「なんだよ、お前神城と一緒にカラオケ行きたくねぇの?」
「行きたい……けど無理だ! まだ心の準備が……」
「別に放課後だから今心の準備できてなくても問題ねぇだろ。今日無理だったら明日になる話だし。」
まあ翔太が来るなら神城は断らないだろうけど。
「いやでも……うーん……」
「うーんじゃねぇよ。」
もうほんと……むしろこれどうしたら告白とかするわけ? 無人島に二人きりにしても無理なんじゃねぇのこれ。
「あ、ゆきケータイ見てる。かわいいなぁもう。」
聞けよ。もうこのままにしといてあげたほうが幸せなんじゃねぇの?
「まあいいや、取り敢えず誘ったら向こうもオッケーだってよ。」
「ちょぉぉぉぉい!! 何してんの!? 何してんのお前!?」
神城に対して送ったLI◯Eを見せると翔太が俺の肩を掴んで揺さぶってくる。翔太の名前を出したら神城の返事は速かった。「カラオケ行かない?」には少し悩んでいたようだったが「翔太も来るけど」って送ったらすぐに返事が来た。……これでなんで両思いって気づかねぇかなぁ……
「まー送っちまったもんはしゃーねぇだろ。それとも来ねぇの?」
まあ翔太が来なけりゃカラオケは流れるだろうけど。流石に俺だって神城と二人でカラオケに行って翔太に呪われたくはない。
「ぐぅっ……い……行く……」
「はい決定。じゃあ放課後すぐ行くぞ。」
「……もう一声。」
「何の値切りだよ。時間置く意味ねーだろ。」
「うむぅ……」
うむぅ……じゃねぇよ。なんでまだ納得いかないみてーな顔してんだよ。お前付き合う気あんのか。
「お前ほんとなんなの!? 舞い上がりすぎだろ!」
昼休みの屋上。昼食を食べている生徒達が驚きの表情でこちらを見ているがそれどころじゃない。
「だ……だって……」
「だってじゃねぇよ! お前デートが楽しみな気持ちは分かるけどな、授業中も10分単位で身だしなみ確認されるこっちの身にもなれよ! 「どう?」じゃねぇよ一緒だよ! 制服だよ!」
「す……少しでもかっこいい俺を見せたいだろ!」
「うるせぇバーカバーカ! もう放課後付いて行ってやんねーからな! お前ら二人で行け! そんでさっさとくっつけバカップル!」
「……!? 待って! お願い待って! 来て!」
屋上から離れようとする俺の足に翔太がしがみつく。……めっちゃ下級生とか見てるけどこいつ恥じらいとかないわけ?
「離せ!」
「だぁぁぁのぉぉぉむぅぅぅよぉぉぉ!!! 二人きりとか緊張して死んじまうよぉぉぉぉ!!!」
「わかった! わかったからしがみつくのやめろ! 周りの人がすげぇ見てるから! やめろ!」
「……!? ありがとう! ありがとう坂本!」
……なんでこんなに俺が協力してやらなきゃならんのか。学校終わったらすぐ帰ってやろうか……ダメだな。こいつのことだから全責任を俺に押し付けてブッチする可能性がある。……くそ、めんどくせぇ……
「……お前は本当、惚れた途端に態度がわかりやすいくらい変わったな。中学生の頃からか?」
「そうか?」
「そうだよ。お前昔は普通に神城のスカートめくりとかしてたじゃん。」
「……シテナイヨ」
「してただろ。お前小学生の頃「スカートめくりの翔」って呼ばれてたじゃん。やりすぎて教師から呼び出しくらってたし。」
「うわぁぁぁぁやめてくれぇぇぇぇ」
……これが恥ずかしいのかよ。しがみつきはオーケーでこれがダメって基準がわかんねぇよ。案外常識が残って……
「ゆきに……ゆきにそんなことしてしまったなんて……」
なかった。こいつ神城のことしか考えてねぇ……
「……ってもうあと5分で予鈴鳴るじゃねぇか! 全然飯食えてねぇよ!」
「ごちそうさまでした。」
「翔太てめぇ! 何しれっと食い終わってんだ!」
「じゃ、先に戻ってるからな〜」
「まて……待って! お願い! 翔太さぁぁぁぁん!!!」
午後の授業が終わり、終業を告げるチャイムが校内に鳴り響く。そして教室に担任の教師……田中先生が戻ってきてHRを始めるが、早く帰りたいのだろう。どこか皆浮き足立っているように見える。
「……ですので最近この辺りに変質者が現れているようです。皆さんも気をつけて寄り道などしないよう下校してください。それでは日直の方、号令を」
起立、礼と日直の声が響く。今日の日直は瀬川だったか、よく通った声だ。その号令が終わると教室中がざわめき出す。教室に残って談笑するもの、いち早く帰宅しようと教室を出るもの、今更になって目を覚ましぼーっとしているものなど様々だ。
「坂本くん」
そんな中俺の元に神城が近づいてくる。瀬川との会話を華麗にぶった切って登場だ、意図せず瀬川からの視線がこちらに突き刺さる。
「ん? どうした?」
冷静を装ってはいるが内心かなり焦っている。なんでこの子周りの空気とか読まず俺のとこくるわけ? カップル揃って俺の学園生活を潰したいわけ?
「その……今日のカラオケの話なんだけど……」
神城のその発言を聞きクラス中が静寂に包まれる。さっきまで談笑していた奴らもほとんどがこちらを見て……いや睨んでいる。……ちくしょう大型地雷だよ。もう瀬川達とまともな関係築けないだろうな……あいつも神城のこと好きみたいだし。ってか翔太に言えよ。俺はあくまでおまけだろ。
「あー……ね、うん。とりあえず行こうか。翔太、こら翔太行くぞ」
存在感を消していた翔太を引っぱる。クラス中の視線が俺と翔太二人に注がれ……視線が痛い……やめて睨まないで。
結局俺たちは家の近くのカラオケに行くこととなった。俺たち三人は幼馴染で家が近いのだが三人で遊ぶのは何年振りか……小学生の頃? いや、あの頃はあいつもいたから4人か。よく考えてみると初めてかもしれない。
店に来る途中、まあ帰り道だったのだが教室での雰囲気は何だったのかというほど喋る。ゆきと翔太、まるでカップルかのごとく喋る。もはや俺など眼中にないのだろう。そっとフェードアウトだ。もう関わりたくない。
「ハァハァ……君可愛いね……ぼ…僕と遊ばない?」
すると電柱の陰から突然男が現れる。男は見た目3〜40歳ほどでだらしない身なりをしており、でっぷりと太っていた。常に息を切らせて神城を舐め回すように見るその姿はその男が「不審者」であると確信させる。
「えっ……?」
「ゆき、行こう」
声をかけられた神城は戸惑っていたが翔太に手を引かれて男の横を通り抜けようとする。翔太お前……こういう時になると手握れるのな。
「む…無視するなよぉぉぉ!!」
「きゃっ」
すると男は突然激昂する。その巨体を揺らして神城に詰め寄り、その肩を乱暴に掴む。どうやらかなり強く握っているようで神城は痛そうに顔を歪めている。
「おい流石に……」
俺が声をかけるより先に翔太が男の腕を掴む。かなりの力で握っているのだろう、すぐに男は涙を流しながら、神城から手を離した。
「いだい! いだいいだいいだいぃぃぃ!!! はなぜよぉぉぉ!!!」
男が暴れると翔太はすっと手を離す。するとフー……フー……と獣のような唸り声で翔太を睨みつけた。
「いい加減にしろよ、明らかに嫌がってんだろ。」
「うるさぁぁぁいい!!! お前は関係ないだろぉ!?」
「ねぇわけあるか。ゆきは俺の彼女だ。」
……よくもまぁ、あんだけタンカ切れるもんだよ。普段は目を見て話すらできねぇくせにあんな真顔でよくもまぁ……
「えっ……あっ……えっ……」
ほら見ろゆきちゃん顔真っ赤じゃねぇか。言っちゃ悪いけど変質者ナイスとしか言えねえわ。
それから変質者は負け惜しみとばかりにありとあらゆる罵声を浴びせて去って行く。その数分後にパトカーが来たが俺には関係ない。パトカーに変な男が乗せられてたのも関係ない。まあ社会が平和になったのはいいことだよね!
「あ……あはは……ありがとね、翔太。」
「えっ……あっ! お……おう……」
今更翔太も自分の言ったことに気がついたようで顔を真っ赤にしてあたふたしている。
そこから先二人がどうなったのかは知らないが、次の日、学校で会った二人は少し……ほんの少しだけだが距離が縮まっていたように見えた。
今回は前のエイプリルフールから告白するまでの間の話です。
なんか長い気がする……




