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73.親友の顔

 最初に仕掛けたのは坂本だった。青眼の構えから繰り出された斬り下ろしは翔太の頭を叩き割り、焼き尽くさんと迫って行く。……が



「甘えよ」



 坂本の斬撃を翔太は体をひねるだけで回避する。翔太に当たると思われていた剣は空を切り、剣を振った勢いによって坂本は体勢を崩す。



「なっ……」


「おらぁっ!」



 よろけて体勢を崩した坂本の腹にカウンターの形で翔太が斬撃を二発入れる。刃の潰れた剣では坂本の体を斬ることはできなかったが、その衝撃は坂本を2メートルほど吹き飛ばした。


 ……が、坂本は地面を蹴り翔太の元へと一瞬で距離を詰める。ステータスによって強化されたその脚力により異常なまでの速度をそのまま攻撃力に乗せ、斬撃を放つ。

 


「おらぁぁぁ!!」


「はっ」



 坂本の斬撃を翔太は真正面から受け止める。しかしそのまま力勝負には持ち込まず坂本の剣に合わせて体を後ろに倒す。勢いを流された坂本が翔太の上に重なった瞬間、翔太が坂本を蹴り、剣の勢いと合わせて後ろに弾き飛ばす。



「がっ……はっ……」



 坂本が地面に叩きつけられる間に翔太は体制を立て直し、剣を突きつける。



「……バカにすんなよ。どんだけステータス差があろうと、魔法で剣を強化しようと……剣振って1日くらいのやつに剣で負けるわけにゃいかねぇんだ。それに……」



 地面に叩きつけられたまま坂本は翔太に向かって剣を構え直す。しかし坂本の持つ剣に纏っていた炎は先ほどよりも弱々しく燃えていた。



「お前、ゴブリンロードとの戦いでもう魔力残ってねぇだろ。虚勢すら張れないそんな弱々しい魔力でやり合うつもりか?」


「ゲホッ……ゲホッ…………翔太…………」



 翔太は坂本の炎で強化された剣を掬い上げるように斬りあげる。坂本の手はその衝撃に耐えきれず剣を離してしまい、剣はくるくると宙を舞う。



「これでも俺じゃ足手まといだって言うつもりか?」



 遠くで坂本の剣が地面に突き刺さる。もはや坂本は無手だ。魔法も剣もない状態の坂本。魔法はないが剣は持っている翔太。誰の目にも勝敗は明らかだろう。



「ああ……翔太。そうじゃないんだ。」


「あ?」


「……確かに俺はお前に戦って欲しくなかった。でもそれはお前が心配とかじゃない。お前に魔王に挑んで欲しくなかった。お前にあいつの心をかき乱して欲しくなかった。お前を……」



 坂本がフェザーソードの刃を握る。刃が潰れているとはいえ握ればもちろん手は切れる。坂本の手から紫色の血が流れ、剣を伝って滴り落ちる。しかし剣を握る力は力は弱まらない。フェザーソードは凄まじい力によって押さえつけられる。そして剣の両端を二人で握ったまま坂本が立ち上がり翔太と目線を揃える。



「お前を……殺したくなかった。」



 坂本の体から鮮やかな青色のオーラのようなものが立ち上る。坂本の右半身がリザードマンのような鱗に包まれ、剣を握る右手からも血が流れなくなる。同時に坂本の剣を握る力はだんだんと強くなってゆき、やがてバキリという音と共に刃が砕けた。



「坂本……それ」



 翔太は次の言葉を発するより先に吹き飛ぶ。殴られたのか、蹴られたのか。それとも魔法か。それを理解する間も無く10メートルほど地面と平行に吹き飛んだ翔太は柵に激突し、一瞬の静止ののち地面に転がされた。



「でももう迷わねぇ。俺はお前を殺す。

魔王軍の一員として。魔王の右腕として!」


「なっ……!?」



 先ほどまでの脚力とは比べ物にならない、目にも留まらぬほどの速度で距離を詰め、仰向けに倒れている翔太の腹に折れたフェザーソードを刺す。フェザーソードは根元まで深々と刺さり、刺し貫かれた翔太の腹からは鮮血が吹き出す。



「ぐっ……は……」



 翔太は苦し紛れに蹴りを放つ。しかし翔太の蹴りは坂本の鱗によって易々と防がれ、足が砕ける音が周囲に響く。



「無駄だ。その程度で俺の……龍の鱗は砕けない。」


「お前……なんで……」


「…………さよならだ。翔太」



 坂本の腕の鱗から刃が生える。そして坂本の腕が振るわれると同時に俺の命は……消えた。




 何度目かの俺が形成されてゆく。神の世界を通る事なく俺という存在が新たにこの世界に作られてゆき、蘇る。

 すぐそこに坂本がいる。しかし話しかけようにも声が出せない。腹に剣が刺さっている。坂本がこの場を離れていっても動けない、追いすがることすらできない。声が出ない。そしてまた、死んだ。



 幾度となく死んだ。命を失いながらも腹に刺さった剣を少しずつ抜いていき、ようやく蘇った頃には坂本はもはやその場にはいなかった。



「坂……本……」



 立ち上がり折れたフェザーソードを拾い上げる。拾う時に地面を見ると微かながらも足跡が残っていた。その坂本のものであろう足跡は……イエーロの街へと向かっていた。


前半かつてないほど勝ってたのに……結局負ける翔太クオリティ

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