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7.練習

「おっさん、こんな感じか?」


「うっせぇ! いい加減ここ来んな!」


「いいだろ、それより教えてくれよ」


「だから教えねぇっての!」



 俺はあれから毎日おっさんの元へ通っていた。おっさんは俺に剣を教える気は無いと言ってはいるものの、俺が隣で剣を振っていると少し素振りがゆっくりになり、見て覚えろと言わんばかりに基礎的な動きを繰り返す。ツンデレオヤジめ。

 そうして俺の素振りが悪いと決まって舌打ちをする。とてもわかりやすい。



 別に剣を本気で学ぶつもりもない。もともと体力も筋力も平凡な俺が剣で戦っていけるとも思わない。

 なんたって体力テストで学年124位という微妙な数字だからな。



 ただ時間が余っているからやっているだけだ。それに剣を振っている時は不思議と気持ちが落ち着く。クラスメイトとのしがらみやモヤモヤした感情が剣を振っている時は消えるのだ。俺が剣を好きになるのに時間はかからなかった。



 今俺が教えてもらっているのはごくごく基本的なものだ。まっすぐに剣を振りあげ、振り下ろす。ただそれだけの素振りしかさせてくれない。だがそれでもいい。剣を振っている間だけはあのもやもやを忘れられる。

 何も考えないでいられる。



「チッ、俺はもう帰るからな」



 2時間ほど練習をすると決まっておっさんはそう言い中庭を去っていく。

 どこへ行っているのかはわからないが少なくとも城の中にはいるんだと思う。ってことはおっさんは兵士なのかな?

 だとしたら毎朝仕事前に剣の練習をするなんてすごいな。凄まじい勤勉さだ。



 そのあと俺は少し今日の反復練習をした後、食事を取りに部屋に戻る。

 部屋にはメイドさんが待っていてくれて、いつも俺が帰ってくると食事を持って来てくれる。

 本当は食事を取る時間も部屋には戻りたくない。メイドさんが明らかに嫌そうだからだ。

 もちろんポーカーフェイスを崩さずそういう顔はしないけど、雰囲気でわかる。

 そりゃそうだろう。俺はこの城ではニートのようなものなんだから。



 重い足取りで部屋に戻る途中、魔法の練習用のローブを着たゆきと会った。最近ゆきも魔法の修行が忙しいらしくあまり会えなかったので自然と頬が緩む。ゆきは俺を見ると途端に顔を輝かせてこちらに駆け寄ってくる。やだかわいい。



「あ、翔太! やっと会えたね!」


「ゆき! ちょっと待って! 今俺すごい汗臭いからちょっと待って!」


「やーだよっ、んふ〜」



 飛びついて来るゆきを手で制するが、

ゆきは気にせず俺に抱きついて来る。

 やばいなにこの子超かわいい

 天使かよ。お持ち帰りしたい


 ゆきの笑顔ひとつでさっきの剣の練習の疲れも吹き飛ぶ。ずっとこうしていたいが今引っ付かれるのは困る。

 ゆきに汗臭さがうつってしまう。

 俺は断腸の思いでゆきを引き剥がす。

 するとゆきは不機嫌そうに頬を少し膨らませる。なんていうか……ハムスターみたいだ。



「む〜………

そういえばさ、翔太はここで何してたの? もう出発の時間だよ?」


「出発? 何の?」


「遠征だよ。ついに外に出てレベルを上げるんだって」


 「……は?」

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