67.天才と凡才
お待たせいたしました
「ああ、勘違いしないでね。今はそんなことはないよ。」
「は……はぁ……」
「当時の僕はガイラスは何の努力もせずになんでもできるやつだと思っていた。僕がこんなに頑張っているのにあいつは何もしていない! ムカつく!ってね。あいつのことを努力をしていない天才だと。そんなわけないのにね、認めたくなかった。」
「それは……」
少し、わかる。才能のない人間からすれば努力とは才能のない奴の特権であってほしいのだ。しかし現実ではそうではない。天才でも努力をしているやつはいる。努力をする天才に凡才は追いつけない。天才は己の才能にあぐらをかいていて欲しい、そう思ってしまう。
「僕はガイラスに追いつこうとできること全てに手を出していった。魔法に剣に学問、盾もそのうちの一つだった。」
「当時の僕は本当に必死だった。周りを見る余裕もなくただただガイラスを追い越すことだけに固執した。……でもそんな時だよ、突然、本当に突然盾での戦闘……盾術とでも言おうか、それが楽しくなったんだ。」
「は?」
俺が驚いたような顔をすると、それが面白かったのか、ベルナールさんはクスリと笑いながら続ける。
「確かに意味がわからないだろうね。
僕も当時は意味がわからなかった。ガイラスに追いつくための技術とはいえ盾術は彼の強さとは正反対の強さ、自身が憧れた正道の強さから外れた強さだ。それなのに憧れを捨ててでもこの技術を極めたいと思った。」
なぜか、聞き逃せなかった。自分には関係ない、そう一蹴することが……できなかった。
「不安定だった僕の戦闘スタイルも盾による防御役として安定しだした。すると段々と追いつかなければという焦燥感も消えていってね、余裕ができた。」
「ガイラスも努力している。ライアットも、ニコも、シルベスもグレナスタも、みんな見えないところで血の滲むような努力をしていたんだ。でも……皆どこか必死なんだ。」
昔を懐かしむようにベルナールさんはゆっくりと語る。それはどこか嬉しそうにも思えた。
「パーティの中で一番才能がないのは僕だった。でもそんな僕がここまで来れたのは……楽しめたからなんだ。」
「それを才能だなんて簡単な言葉で片付けることは僕にはできない。でもね……ショウタ君。
君は気づいてないだろうけど楽しんでるんだよ。剣を振ることが……剣での戦いが。
言っちゃ悪いけど君も僕と同類に見えるからね。非才の同類さ……
今は否定してくれても構わない。でも……楽しむことが必ずしも悪ではないということ、強くなる道でもあることを覚えておいて欲しい。」
長々と続けられたベルナールの話は翔太には理解できないものだった。
翔太にとって剣術とは苦しんでいるゆきを助けに行くために身につけた技術であり、それを楽しむというのはゆき第一主義者である翔太にとっては悪なのだ。いくら強くなるためとはいえそれを認めてしまっては胸を張ってゆきを助けたと言えなくなる。
「……なんだか説教みたいになっちゃったね。そんなつもりはないんだけど。」
ベルナールさんは照れ臭そうに頬を指で掻きながら苦笑いをする。
「いえ……でもやっぱり俺には楽しむなんてできません。楽しんでるとも認められません。」
「うん。それでもいいよ。答えは一つじゃない。まあ思う存分に悩んで自分なりの答えを出すといいさ。」
「ベルナール……」
「うわぁ! びっくりした!
急に後ろに立たないでくれよライアット!」
突然ベルナールさんの背後にライアットさんが現れていた。今更反応できなかったことに驚きはしない。また、彼の近くに連れていかれたフォウルの姿はなかった。
「あれ? フォウルはどうしたんですか?」
「あいつ……フォウルというのか……
前線チームに借りる。」
「は?」
「あいつは……天才だ。
だがまだ未熟……だから技を教える。」
無表情ながらもライアットさんがそう告げる。
「へぇ……君が認めるなんて相当なんだね。
そんなにすごいのかい? 彼」
「才能だけで言えば俺より上……鍛えれば魔王を倒す逸材にもなりうる。」
「ちょ……ちょっと待ってくださいよ、
だったら俺も前線に……」
「お前はいらない。
前線に出れる力がない。」
即答された。
「うっわ……辛辣だね。」
「こいつの実力じゃ……邪魔。
かと言って育てるつもりもない……」
傷つくなぁ……
っても自分の才能の無さくらい自分が一番よく分かってるし納得もできるけど。やっぱり慣れはしない。
「まあでも妥当だね。
というわけでショウタ君、君は変わらず後方にいて欲しい。別にフォウル君と会えなくなるって訳じゃないから許してくれないかな?」
「はい、わかりました。その代わ……」
「魔人だぁぁぁぁ!!
魔人が出たぞぉぉぉぉ!!」
俺が言い終わるより先に前線にいた冒険者の一人が声を上げる。
どうやら前線では魔人と交戦中のようで、魔法の光がいくつも見える。
「!!? ライアット、戻るよ!」
「了解」
「あの……俺は……」
俺が言い終わるより前に二人は前線へと走り去っていく。ステータスによって強化された二人の脚力は目で追うのがやっとの程の速度であっという間に前線に戻っていく。
俺などいらないということだろう。事実後衛組はギザメルを始めとした実力者数名以外は素人のようなものだ。ちなみにヤドムとタドムも実力者に含まれる。もちろん俺は含まれない。
「さて……」
走り去っていくライアットさん達の後を追いかける。役に立てるとは思えないが……何となく、置いていかれるのは嫌だった。
俺が駆けつけた時には、もう戦闘は終了していた。襲撃に来たであろう3人の魔人は様々な魔法の攻撃を受けたのだろう、全身がズタズタに引き裂かれて倒れている。
「あれ? ショウタ君。来たのかい?」
「ええまあ……遅かったみたいですけど。」
「まあね、ライアットがいればこの程度の魔人くらいは相手にならないよ。」
ライアットさんを見ると目の前の魔族など興味もなさそうにしていた。拳人と呼ばれていたが魔法を使ったのだろうか、それともフォウルと同じ魔闘流の使い手なのか……
「フォウルもこれくらいできる……出来るようにさせる……」
「ちょ!?」
ライアットさんがそう言うと、フォウルは驚いたような声を上げた。その言葉からはフォウルなら出来ると言う信頼のようなものを感じる。
……天才同士の信頼関係というものだろうか、本当に、俺の周りは天才ばかりだ。
「ん……じゃあ今日は魔人の尋問と合わせてここで休もうか。後ろの皆が合流したら薪を集めよう。」
フォウル君は天才やったんや……




