65.さらに先へ
暑くなって参りました
ニコさんの家に着いた頃、約束の時間まではもう30分ほどしかなかった。
家の扉を開けると、ニコさんが出迎えてくれた。
「おっ、お帰り。どうした? そんなに慌てて」
「ただいまですニコさん。フォウルどこにいます?」
「いきなりだね。彼なら奥の部屋で寝てるよ。」
「ありがとうございます!」
ニコさんにお礼を言って奥の部屋へと駆けつける。相変わらず埃っぽい。……フォウルはこんなところで寝てて大丈夫なのか?
「フォウル!」
奥の部屋にフォウルはいた。食べ過ぎで少し体が大きくなっており、寝転んでいるが間違いなくフォウルだ。
「ん……ショウタ殿……どうしたでござるか?」
「魔王討伐する人が集まってるんだ!
それに参加しよう!」
「ん……んん? ちょっと急展開すぎて訳がわからないでござる。」
「魔王討伐隊、編成、それ参加、オーケー?」
「いや全然オーケーじゃないでござる。ちゃんと説明して欲しいでござるよ。」
「とにかく! 時間がないんだ。説明は移動しながら話すからとりあえず着いてきてくれ。」
寝転がっているフォウルの手を引っ張り外へ駆け出す。ってかうわ、重っ。
「あー待て待て、ちょっと待て」
「あ、ニコさん。傷の治療ありがとうございました!」
家を出ようとする寸前にニコさんにお礼を言う。この人がいなければまだ歩くことも難しかっただろう。
「いやそれはいい、それよりもこいつを持っていきな。」
そう言ってニコさんは巾着袋のようなものを投げ渡してくる。中身を見てみると、十数粒程度の丸薬が無造作にしまい込まれていた。
「これは……?」
「あんたらに飲ませた薬を丸薬タイプに改良したものさ。ただわかってると思うけど危険なものだから十分注意して扱いな。」
「あ……ありがとうございます!
でもどうしてこんなに……」
「私があいつから受けた恩はそれほどのものってことさ。その丸薬の数が私があいつに命を救われた数と言ってもいい。あとついでにこれも持っていきな。」
そう言って渡してくれたのは10㎝ほどの石をネックレス状に加工してあるものだった。
「あの……これは?」
「……まあ保険みたいなもんさ。
役立つ時が来れば自ずとわかる」
「はぁ……」
「さっきの聞こえたけど魔王討伐するんだって? ……あいつは強い。死ぬんじゃないよ。」
「……はい、必ず。」
「頑張るでござるよ!」
「いい返事だ、なら行きな!
あんたらのおかげで世界が平和になったらマルクトの飯でも奢ってやる。」
今までの気だるそうな顔から一転、ニコさんは微笑む。その言葉に応えるよう、俺たちは静かに頷いてニコさんの家を出た。
「それでショウタ殿、さっきのはどういうことでござるか?」
「ああ……それはだな……」
ニコさんの家を出て近くの店で服を買ったあと、俺とフォウルは集合場所へと走っている最中、このままいくとあと10分ほどで着くという時にフォウルが事情を聞いてきた。そこで俺はフォウルにさっきのことをできるだけ丁寧に説明した。
「……ということはもうこの街を離れるつもりでござるか?」
「ああ」
「ああって……リリア殿にサリア殿、それにグレン殿はどうするつもりでござるか? 確かこの街で落ち合うはずだったでござろう?」
「あっ……」
そういえば……あの3人のこと自然にスルーしてたけどこの街で合流しなきゃならないのか。一日合わなかっただけで忘れちまうとかどんだけ薄情者だよ、俺。いやでもかなり濃密な1日だったから忘れても仕方な……くないな。さすがにそれはアウトだ。
「そういえば……」
「わすれていたでござるか?
さすがにそれはサリア殿達も怒ると思うでござるよ。」
「いや……でも……」
「とりあえずその魔王討伐には参加せずにここで皆を探すでござるよ。そうすれば……」
「いや、3人は置いてく。」
「はぁ!? なんででござるか!?」
「なんか……うまく言えないけど嫌な予感がするんだ。早く魔王を倒さないと手遅れになるような……そんな……」
「でもだからと言って……サリア殿達もこちらを探してるはずでござるし……」
「リリアの目的も魔王討伐だ。同じ目的で同じ場所へと向かってるならまたどこかで会うこともある……はずだ。」
「し……しかし……」
「悪いけど俺は行く。
たとえフォウルが止めて一人になったとしても魔王討伐に参加する。」
「……わかったでござる。
ショウタ殿はそういう御仁だったでござるな。
最後まで付き合うと言ってしまったでござるし一緒に行くでござるよ。」
「……悪い。助かる。」
「それよりも覚悟しておくでござるよ。
もしサリア殿達に合流したらショウタ殿が置いて行くと言ったと話すでござるからな。
ビンタの一発くらいはもらうと思うでござるよ。」
「なっ……おま! ここまできたら共犯だろうが!」
「拙者は巻き込まれただけでござるー
本当は止めようと思ってたでござるー」
くっそムカつく……小学生みたいなこと言いやがって……でも……
「ありがとな」
「……急にお礼言われると照れるでござるよ。」
どこか坂本を思い出した。あいつもこんな感じだったっけ。……早く魔王のとこまで行かないとな。
俺たちが集合場所へ着いたのはちょうど1時間経った後のことだった。集合場所にはもう参加するメンバーが集まっており、ベルナールさんとライアットさんが前へ出ていた。
「よし! 時間だ!
こんなにも多くの人が集まってくれてありがたく思う!」
ベルナールさんが周囲を見渡す。集まっている人の中にはさっき来ていなかった人も何人かいる。……心なしかメンツの個性も凄まじい。
リアルモヒカンて……肩パッドて……お前ら世紀末かよ。
「じゃあこれから共に戦う仲間だ。まずは自己紹介でもしてもらおうかな。できれば自分の戦闘スタイルも。ということでまずは僕から。ベルナール・エテュード。戦闘スタイルは盾を持って攻撃を全て防ぐという感じだね。僕がいる限り皆に怪我はさせないよ。じゃあ次、ライアットお願い。」
「……ライアット・サングレイス。拳士」
「拳士……でござるか。そのような御仁がいたとは……興味深いでござるな。」
ライアットさんが自己紹介した時にフォウルが呟く。似たような戦闘スタイルの人を見たのは初めてだったのか、少し驚いている。
「お前も似たようなもんだからな。」
「確かに分類上は同じかもしれないでござるが拙者には技とか何もないでござるよ。どんな戦い方をするのか……見てみたいでござる。」
俺とフォウルがヒソヒソと話している間にも自己紹介は進んで行く。そしてやがて俺たちの順番が回って来た。
「俺はショウタ。戦闘スタイルは主に剣での攻撃。よろしく。」
「拙者はフォウルでござる。戦闘スタイルは拳での攻撃でござる。よろしくお願いするでござるよ。」
簡単に自己紹介を終えると周囲から試すような視線が刺さる。やめてそんなに見ないで。
「よし、じゃあ先へ進もうか。
いち早く魔王を討伐するために。目指すはイエーロの街だ。」
ひっさびさに思い出される坂本はん




