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64.剣士の証

毎回毎回ここ書くことあれへん

困る……

 男は勇者に最も近く、最も遠い男だった。

 勇者とは同じ村で生まれ育ち、親友として育った。そして彼らは村を出て、街で冒険者としてデビューした。しかし男は順調にランクを上げていく勇者の背中を見ながら同じランクで足踏みしていた。男がオーガ退治、リザードマン退治とこなし、ギルドの期待の新人と呼ばれる横で男はオーク退治をしていた。周りには嘲られ、罵倒された。なぜ彼が勇者の隣にいるのか、と。それでも男は勇者を追い続けた。どれだけ遠かろうと、どれだけ辛かろうと男は勇者に追い縋った。全てのものを退けて。全てのものを叩きのめして。そしてやがて……男は勇者の背中を守る存在となった。

 『盾鬼』ベルナール・エテュード


 近くにいた一番話が通じそうな(弱そうな)人に勇者の右腕の件について聞いてみると意外な事実が判明した。おっさんに幼馴染ねぇ……ってあの人おっさんと同世代!?



「よし、じゃあさっそく行こうか……と言いたいところだけどどうやらまだ準備ができてない子がいるみたいだね。」



 俺の考えをよそにベルナールさんは話を続ける。しかしベルナールさんは小汚い格好をしている俺の方をちらりと見て肩をすくめる。すると周囲の視線が俺に集まり、段々と険悪な空気になっていく。



「まあいい! じゃあ1時間だけ準備を整える時間を設けようか。ちょうど僕も準備したいものがあるしね。もう一度よく考えて、一時間後、命を懸けてでも魔王軍と戦う意思のある人だけがここに来て欲しい。」



 すると険悪な空気を察して気を使ってくれたのか、ベルナールさんが自分の都合であるかのように自由時間を申し出てくれる。ありがたい! 服買って武器買ってフォウル呼んで……やることが多すぎる!


 俺は解散するとすぐにニコさんの家まで走っていく。ニコさんの家まで戻る途中に、武器屋と思われる店を見つけたのでそこに剣を買うために立ち寄った。



「へい、ここはポキューズ工房だ」



 応対してくれたのは筋肉ムキムキの上半身をさらけ出したおっさんだった。頭には汗止めのバンダナを巻き、その手にはハンマーを持っていた。一目見ただけで彼がこの工房の武器職人だとわかる。



「剣が欲しい! 大至急! なるだけ丈夫で壊れにくい剣がいい!」


「おう? 剣を売ってやるのはいいがお前さんにうちの剣が扱えるか?」


「使える。だからくれ。金なら金貨5枚までなら出せる。」


「金貨5枚で丈夫なやつねぇ……ほら、これなんかどうだ? 俺が打った一本だ。金貨6枚のとこ特別に金貨5枚と銀貨5枚に負けてやるよ。」



 渡された剣は今まで振っていた剣よりかなり重く、大きかった。優に二倍は超える重量に、刃が1メートルほどもあった。……なんでこんな重いもん渡すかなぁ? 使えると言った手前返しづらい雰囲気だ。武器職人のおっちゃんもめっちゃこっち見てるし。振れってか。



「……振ってみても?」


「ああ、構わねえ。振ってみな。」



 観念した俺は剣を構えて息を吐く。剣の重さに震えていた俺の腕を構えに入った途端にピタリと静止させる。そして剣を振り上げ、力の限りに振り下ろす。振った剣はブレブレで、体の軸もズレていた。……ダメだ。



「おっちゃん……悪いけどやっぱりこれは……」


「うん、無理だろうな。」


「悪い……」


「いや構わねぇ。ハナからまともに振れるとは思っちゃいなかったからな。でも……」



 おっちゃんが工房の奥に歩いて行き、一本の剣を持って戻ってくる。おっちゃんが持っていきた剣は一見普通の剣だった。



「ちょいと見くびりすぎてたみてぇだな。

筋力も技術もまるで足りてねぇが相当振りこんでるのはよくわかった。こいつを使いな。」



 おっちゃんが剣を投げ渡す。受け取ってみると今度の剣はさっきのものとは打って変わって軽かった。



「これって……大丈夫なのか? 折れたりは……」


「大丈夫だ。そいつは俺が直々に打った一本だ。さっきのクズ鉄寄せ集めた棒切れよかは固えよ。」


「なっ……クズ鉄寄せ集めた棒切れって……」


「どう見ても剣士の体には見えなかったからな。悪いが試させてもらった。本当は振らせるだけ振らせて追い返そうと思ってたんだがな。」


「可能性を感じたよ。センスの欠片もねえお前にな。強くなれよ。」


「……ああ! この剣振ってみても?」


「ああ、振ってみろ。お前なら使いこなせるはずだ。」



 渡された剣を鞘から引き抜くと、銀色に光る美しい刀身が姿をあらわす。磨き抜かれたその刀身は俺の顔を写している。


 構えてから振り下ろす。まっすぐに振り下ろされた剣は空気を切り裂く音を伴い、風を巻き起こす。……これだ。しっくりきた。



「ポキューズ・フラムベル作『フェザーソード』。金貨5枚で持ってきな。」


「いや……でもこれ明らかに金貨5枚じゃ……」


「金貨5枚しか持ってねえんだろ? それでいい。俺にとってはいくらで買われるかより誰に買われるかのが重要なんだ。」


「……ありがとう。」



 ショウタは金貨5枚を机に置いて走り去る。

 一人になった後、ポキューズは呟く。



「あの剣筋……フッ、まさかな。」



オーク……ゴブリンより強いくらい

オーガ、リザードマン……オークの数十倍強いくらい。

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