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63.右腕

なかなか書けなくて申し訳ない

 冒険者ギルドはグリンと同じ木製の建物だった。入口の上に大きな看板貼り付けてがあり、その看板がこの建物を冒険者ギルドだと主張している。ギルド内はは荒くれ者が今日稼いだ金を使って酒を飲んで騒ぎ、新人に絡む……いわばファンタジー系ありきたりなイメージだったが予想に反して人はほとんどいなかった。酒を飲む人はおろか騒ぐ人もおらず、数人の冒険者たちが依頼版を見ているのみだ。……まあ今昼間だから当たり前と言えば当たり前か。

 どこかがっかりした俺は冒険者たちを避けて受付に向かう。受け付けカウンターにも職員は一人しかおらず、閑散としている。



「あの……すみません。

ここって冒険者ギルドですよね?」



 一応確受付の人に確認してみる。合っているはずだがもしここが傭兵ギルドですとか言われたらシャレにならない。



「ああ、はい。ここは冒険者ギルド、レド支部になります。なんの御用でしょうか?」



 どうやらここで合っているようだ……

 今日はたまたま人がいないのか?



「ああえっと……ここって食事とか置いてないですか? 軽食とかでもいいんですが。」



 言っといてなんだがかなりおかしな質問だよな。飯が食いたくてギルドに来るとか。



「食事……ですか? 軽食でしたらベーコン、チーズ、揚げ芋、エールなどがございますが」



 あぁ……ぽい。エール飲んでチーズ食って……冒険者って感じする! ……やってみてぇけどなぁ……俺の顔じゃ似合わねえよなぁ……おっさんとか似合いそう。



「ポテ……揚げ芋ください。いくらですか?」


「揚げ芋一皿銅貨5枚になります」


「はい、じゃあこれで。」



 一皿500円ほどと割高だが迷わず購入する。正直マルクトで普通に肉買ったほうが安いだろうがあそこではもう食いたくない。ベーコンすらちょっと無理だ。


 金貨一枚を受付の人に渡すと、お釣りとして銀貨と銅貨をジャラジャラと渡される。なんとなくその貨幣を数えてみると銀貨9枚と銅貨4枚だった。え?



「あの……お釣り足りないんですけど。

銀貨9枚と銅貨4枚で銅貨が一枚足りないです。」



 俺がそう言うと受付は僅かに顔をしかめる



「申し訳ございません。間違えたようです。

こちら銅貨1枚になります。」



 うっわ、こういうことされるのか。こりゃ確認してなければこんなの気づかんわな。



「では少々お待ちくださいませ。

出来上がりましたらお呼びします。」



 さっきのこともまるで何もなかったかのように話を終わらせようとする。……まあ被害被ったわけでもないし……いいか。


 ポテトを待つ間、依頼版を見てみる。依頼版には乱雑な字で書かれた張り紙がいくつか貼り付けてあった。『ウルフの群れの駆除』『行方不明の少女捜索』『真宵の森横断の際の護衛』などいろいろな依頼があったが、それよりも目を引いたのはでかでかと掲示板に貼り付けてある紙だった。


『ーー異世界から召喚された勇者、敗北か!? 今こそ魔王を討伐する真の勇者求む。我こそはという者は本日15時ベルナールまで』


 そして紙の下の方に簡素なこの街の地図が書かれており、地図上の一点をマークしてあった。おそらくそこに行けということだろう。

 正直これは願ったり叶ったりだ。なにせ魔王を倒さんとする仲間が何人も増えるのだから。

 俺は迷うことなく地図の場所へ行くべく、ギルドを出た。



「あの〜……揚げ芋お待たせしました」



 ……揚げ芋を食ってから。



 地図に書かれていた場所に向かうとそこには多くの人が集まっていた。目測2〜30人といったところだ。そのほとんどが歴戦の猛者といった風格を漂わせており、明らかに場違いな俺が来たところで全く警戒を解かず、不用意に他人に絡もうとする者も少ない。……まあいるにはいるのだが。



「あーんなモヤシがいたところで何の役に立つんだよ!」


「肉盾希望かぁ? だとしてもあの程度いたところで何も防げねぇだろうがなぁ!」



 ガハハハと下品な笑い声を上げながら俺を笑っている。この世界に来てから聞き慣れた嘲笑の声だが、やはりどうしても気にはなる。完全に無視などできない。言い返せるなら言い返してやりたいが、ボコボコにされるのが関の山だ。

 ひとしきり馬鹿にした後、俺が言い返さないのがつまらなかったのか、俺を見て笑っていた男達は舌打ちをしてまた別のやつに絡んでいく。それを見てホッとしていると



「お前、なぜ何も言い返さなかった?」



 突然誰かが俺の背後に立っていた。背中にはナイフか、剣かを当てられている。背筋に嫌な汗が流れ、自然と体が緊張し強張る。



「答えろ、なぜ何も言い返さなかった?」



 俺が何も話さないことにイラついたのか、刃物を強く押し付けて来る。



「お……俺には言い返せるほどの実力がないから……」


「ならなぜここへ来た。」


「魔王を……倒すため! そのためなら……地獄にだって飛び込んでやる。」


「……ふん、くだらん。」



 そこまで話すと背中に当てられていた刃物が外される。後ろを振り返るも、誰もいなくなっており先ほどまでの感覚がまるで幻であったかのように消え去った。しかし未だ硬直したままの筋肉と、かすかに痛む背中が現実のものであったとありありと語っている。



「よし、時間だね。みんな集まってくれてありがとう! 僕が本日招集をかけたベルナール・エテュードだ。よろしく頼む。」



 落ち着いたのも束の間、男の声が響き渡る。よく通る声で、声の元を辿ると爽やかな短い金髪をした見るからに好青年といった男が立っていた。彼が現れると集まっていた奴らの声がシンと止んだ。



「みんなももう知ってると思うが異世界から召喚された勇者が魔王軍に敗北したらしい。これは確かな情報だ。」



 その言葉を聞いてざわつく奴らもいるが、ほとんどは冷静にベルナールさんを見据えている。



「そこで僕はかつての仲間を集めて魔王を討伐しようと思う! 我こそはいう者は杖を取れ! 我こそはという者は剣を握れ! 『盾鬼(センチネル)』ベルナールに、『拳人(けんじん)』ライアットについて来い!」



 ベルナールさんがライアットという人の名前を出すと気だるげな顔をした銀髪の男が前に現れる。明るい雰囲気のベルナールさんとは違い、その目に覇気はなく、纏う雰囲気もやる気のない感じだ。しかし彼が現れた瞬間、集まっていた皆が湧いた。



「ライアットさんだ……さすが……」「ベルナールさんにライアットさん……こんなの無敵じゃねぇか……」「勇者の右腕……その実力、見せてもらおう。」



 …………勇者の右腕?

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