60.本当の平等
感想……感想をくれぇ……
「さて、じゃあとりあえずショウタの傷を治してくれる奴のところまで行くか。」
「いや無理じゃね?」
軽く言ってくれるけどそんなに簡単に治る傷じゃない気がするんだけど……
「なぁに心配すんな。
俺の知り合いに魔法を使わない治療術の使い手がいる。そいつならなんとかしてくれるはずだ。」
「そんな御仁がいるでござるか……
興味深いでござるな。」
「そうそう。……まあちょっと個性的な奴だが悪い奴じゃないんだ。……傷は治してくれるはずだ。うん。」
「ちょっと待て。なんだその含みのある言い方は。」
「大丈夫だ、傷は治してくれる……多分。」
「今多分っつったな!? なんだよそいつ怖えよ! 俺何されんだよ!?」
「ええいうるさい! しゃーねーだろあいつしか心当たりないんだから。ちょっとぐらい我慢しやがれ! 腹を切り開くのだけはやめてくれるよう頼んでやるから!」
「やっぱ怖えよ! 頼んでおかないと腹開かれるとかそいつマジモンのキチガイじゃねぇか!」
「否定はしねぇ!」
「してくれよ!」
治療を頼んで解剖するとかどこのマッドサイエンティストだよ! 今時そんなコッテコテのやつ漫画でもいねぇよ! ……ヒッヒッヒッとか笑い出すんじゃないだろうな……
「……っと、そこに隠れてる奴ら、何の用だ?」
「へっへっへっ……よく気付きやがったな。まあ止まれや。」
「殺されたくなけりゃ金目のもん全部置いてってもらおうか?」
おっさんにが裏路地に入る寸前に立ち止まり声をかける。すると裏路地から二人の男が現れる。二人共ガタイが良く日本だったらプロレスラーとかやってそうな体格だがその手に持ったナイフと隙だらけの構えからチンピラ感が拭えず、隠しきれない小物感が溢れ出ている。ベスト・オブ・小物の称号を捧げたい。
「へっへっへっ……びびって声も出ねえのか?
持ってるもん全部置いてくんなら見逃してやらんでもないぜ?」
「そりゃこっちのセリフだ。
今ならまだ見逃してやるからさっさと逃げろ。」
おっさんが毅然とした態度でチンピラを睨みつける。おっさんの強烈な殺気をを感じ取ったのかチンピラ達は少し後ずさる。
「ああ!? チョーシこいてんじゃねぇぞ!」
「ぶち殺すぞてめぇ!」
しかしおっさんの実力を読みきれなかったのか、それとも虚勢か、チンピラ達は逃げることなくナイフをこちらに向けて突進してくる。
「……警告はしたぞ」
ガイラスは冷静だった。目の前で殺意を持った男達が襲いかかってくるにも関わらず、その目には焦りだとか恐怖だといった感情がまるでない。ただ、無表情だった。男二人が突進してくるよりも早く抜刀し、ナイフを持つ手首を一瞬で切り落とす。
男達は手を切り落とされたことに気づく間も無く続いて首を切り落とされる。弱者を蹂躙し続けてきた男達の顔は、勝利を疑うことなく今までと同じように弱者を蹂躙する強者の笑みを浮かべたまま頭ごと地面に転がり落ちた。きっと痛みを感じる暇もなくこの世を去っていったことだろう。
「なっ……!?」
「まったく……こんな奴らはいつまで経ってもいなくなりやがらねぇな。」
剣を鞘に収めるとおっさんは先ほどまでの表情に戻る。さっきまでは安心できたその優しい表情もこの血なまぐさい現場を見てしまっては恐怖しか感じない。
「が……ガイラス殿!? 少々やりすぎでは……? さすがに命までは……」
「やりすぎだろ……どう考えても……」
「こんなやつらを逃したらまた同じことをする。それに殺すとまで脅してきたんだ。なら俺だって殺す。それに警告はしたしな。」
「し……しかしでござるな……」
「いいか、こいつらは他者から奪い、殺す。やってることは魔物と同じなんだ。魔物達も生きるために俺たちを殺しにくる。ガルムだって、ゴブリンだって殺してきただろ。なのにこいつらだけ殺さないってのはおかしいだろ。」
「…………」
先ほどまでとは違う、真剣な目で俺たちに訴えかけるように話す。おっさんにとっては人も、魔物も、すべての命は平等なのだろう。
何も、言い返せなかった。
暴論も暴論。人の命というものをあまりにも軽視した考え。日本にいた頃いくらでも聞いた『命は平等である』という言葉。日本にいた頃は理解できたし納得もできた。だが実際に目の前で行われた『平等な行為』は理性が、本能が拒否している。こんなことは間違っている。
なのに言い返せなかった。きっとおっさんはいままで何人もの人を、魔族を、殺してきたのだろう。そんな男の持論……生き様とも言える言葉を、否定できるわけがない。その言葉を否定してしまったら俺は……おっさんを、勇者ガイラスという男を否定することになってしまう。……この人はどれほど壮絶な人生を送ってきたのだろうか。
「まあそんなことはどうでもいい。ここを曲がったらもうニコの家だ。ガイラスの紹介で来たって言えば治してくれるはずだ。」
空気を察したのかおっさんは気まずそうにそう言って俺を背中から下ろす。
「おっさんは……来ないのか?」
「やっぱりやめておく。
俺には俺の用事があるからな。もう行くわ。」
「……そっか、ここまでありがとな。」
「拙者からも、ガイラス殿がいなければ拙者達は死んでたでござる。心より感謝を」
「よせよ照れくせえ。
じゃあ、またな。」
俺たちに別れの挨拶を告げておっさんは来た道を戻って行く。足元に転がる死体などもはや興味もない様子だ。優しすぎ、特殊な死生観を持って壊れてしまった勇者ガイラスという男。神に魅入られ死ぬまで……いや、死んでも戦い続けた男の成れの果て。その姿はまるで未来の俺を見ているかのように思えた。
大陸北部編……と言いましたが大陸図とかそういや出してませんでしたね。この大陸は雫みたいな形で、頂点の部分が魔王の城です。地図を書く技術がおれさまにないばっかりに……スマヌ……スマヌ……




