58.異常者
お久しぶりです
なんか会話パートって全然書けない
「と言っても別に変わった話じゃねぇよ。俺も魔人に殺されて生き返っただけ。」
「だけってお前それ十分変わった話じゃねぇか……」
このおっさんおっさんが自分の体験を棚に上げてよくもまぁ……
十分変わった体験してる自覚はあるが俺は生き返って勇者になったりしてねえからな? おっさんのが変人だからな? ……あっ、
「あとステータス消された」
「は?」
そういえばとステータス消されたんだった。そこがメインで生き返ったはずだった。しかしステータスのことをおっさんに告げると、おっさんは心底意味のわからなそうな顔で聞き返してくる。
「いやだからステータスを消されたんだって
まあもともとあってないようなもんだから消されても大して問題なかったけど」
実際あった時と今とで動きが変わったとかもない。……俺どんだけ貧弱だったんだよ……
「いやちょっと待て意味がわからねぇ
ステータスを?」
「消された」
「全部1にされたってことか?」
「いやステータスそのものを消された」
「どゆこと?」
必死に説明してみるがおっさんには全く伝わっていないようだ。どゆこともくそも言葉通りの意味だっつうの。言葉が通じないのかこのおっさん。
「お前だいぶ失礼なこと考えてるだろ……」
「わかる?」
流石エスパーおっさん。
「わかるわ! あー……じゃあ質問を変えよう。お前はどうやって動いてるんだ?」
「は?」
何を言いだすんだこのおっさんは。
動き方もわからなくなったのか? エスパーおっさんの考えが読めない。
「普段無意識にやってることだろうが足を動かすのには筋力が必要になる、速く動くには素早さが必要になる。お前はステータス上の筋力も素早さも存在しないのにどうやって動いてるんだ?」
言われてみれば……ステータスがなくなってもなくなる前と同じように動けているってのはおかしいのかもしれない。なくなった影響なんて感じてもないし。
……そもそもステータスってなんなんだ?
たしかに俺には数値上の筋力、素早さが存在しない。にも関わらず普通に動き、走っている。いや、でも地球にいた頃はそんなものがないのは当たり前、それでも普通に動いていた。おそらく……ステータスの有無がこちらの世界とあちらの世界の違いなのだろう。
「もし本当にステータスがなくなっていたとしたらお前は異常だよ。お前の元いた世界ではそれが普通だったかもしれないがこっちの世界ではそんなことはありえない。ステータスがないなんて過去例は聞いたことがない。」
おっさんが真剣な顔をして告げる。
真面目に俺のことを案じてくれているのだろう。それは素直に嬉しい。だけど……
「別に異常でいいんじゃね?」
「は?」
「だって俺元々魔力が0で異常って言われてたんだぜ? それが今更ステータスがなくなって異常って言われようと大したことじゃねぇよ。俺がすべきことが変わるわけでもねぇし、いままでと変わらずに動けている。ならそれは本当に些細な問題だよ」
俺の目的はゆきを助けることだけなのだから。
「……変わったなお前は。」
「そうか?」
「ああ、魔法が使えないってうじうじ言ってたのが嘘みてぇだ。」
「うっせ、どっかのオヤジに説教くらってこうなったんだよ」
「そのオヤジもこんな感じになってくれたなら説教して良かったと……って誰がオヤジだてめぇ!」
おっさんが顔を赤くして怒鳴る
……ノリいいね、おっさん。まさか異世界にもノリツッコミがあるとは。
「いいか! この際だから言っておくがお前は俺への敬意とかそういうのが足りねえよ! 仮にも師匠に対しておっさんだのオヤジだの……」
「ごめんなジジイ」
「ぶち殺すぞてめぇ!?」
「ははは! やられるまでもなくもうほとんど死人みてぇなもんだよ!」
両手の肘から先は黒く変色し空気に触れるだけで激痛が走っている。脇腹も服の繊維がこすれてヒリヒリする上に右足はもはや感覚がない。
軽く殴られただけでも簡単に死ねる。いや死ねないけど。すぐ生き返るけど。
「その程度で甘ぇこと言ってんなよ。
俺なんか全身潰されて臓物ぶちまけて死んだこともあんだぞ」
なにそれやべぇ……
「それどうやって生き返ったんだよ」
「何事もなかったかのように五体満足で潰された場所に立ってたんだよ。流石にあれは気が狂うかと思ったわ」
「えげつねぇ……やっぱあいつ邪神じゃねえか」
ニヤニヤ笑いながら生き返らされたんだろうな。……うわ、簡単に想像できる。
「そう言うなよ。もしフォルセティ様がいなけりゃ普通に死んでたんだからよ」
「死んだ方がマシ、とか思わなかったのか?」
「いや……頭がおかしくなりそうではあったけど死にたいとは思わなかったな。生きてるだけマシってやつだ。」
「おっさんも大概異常者じゃねぇか」
「お前にだけは言われたくない。
……っとそろそろ寝ろ。明日レドの街までは送ってってやるから。」
おっさんが焚き火に木をくべてそう言う。夜の闇を照らしていた月光も段々と弱くなっており、煌々と燃え盛る焚き火のみが辺りを照らす。
「正直寝れる気がしないんだけど……」
「気合いで眠れ。それでも無理なら俺が締め落として寝かしてやる」
「おやすみー!」
俺は慌ててテントに入る。左足でケンケンしながらだからかなり滑稽だったのだろう、おっさんが爆笑している。しゃーねーだろ。てかあのおっさん発想が怖えよ。何だよ締め落として寝かせるって……テントの寝袋に入ろうとするが動く度に全身が擦れたりしてとてもじゃないが無理だ。ムカついたので隣で幸せそうに寝ているフォウルに寝袋を叩きつけてテントに直で寝ることにした。
「へぶっ!……ちょ、ショウタど…………」
フォウルの声を無視し寝たふりを決め込む。
フォウルは俺が寝てるのをみて気を使ったのかそれ以上何も言わずに寝転がる。
……フォウルいい奴すぎんだろ。
結局あの後全然まともに眠れなかった……
浅く睡眠に入ることはあったのだが、寝返りをうったりすると激痛が走りすぐに目が覚めてしまったのだ。それを繰り返しているといつの間にか外から朝日が差し込んでいた……これ怪我治るまでずっとこうなのかなぁ……ってか治るのこれ? 魔法で治らないって結構やばくない? この世界の医学ってどうなってんの?
……ちょっと次の街でちゃんと調べてみよう。
「おーい起きろー……ってなんだショウタ起きてんのか。そっちの兄ちゃん……フォウルだったか? も起きろー」
するとおっさんが外から顔を出して俺たちを起こしにくる。その声に応じるようにフォウルが目をこすりながら上体を起こす。
「ふぁぁ……おはようでござるよ……」
「おう、おはようさん」
「というかショウタ殿! 昨日の夜拙者に寝袋叩きつけたでござろう!? なんででござるか!?」
「あー……うん。なんかごめんな……」
正直その場でキレられる覚悟をしていたのに次の日まで怒りを延ばしてくれるなんてフォウルをなめてた。いいやつすぎる。
「な……なんでござるかその目は……
気持ち悪い目をしないで欲しいでござるよ」
「うるせー。これは『温かい目』だ。
温かい目で見守ってんだよ。」
「全然温かくないのでござるが……
むしろヒヤッとしたでござるよ……」
「そんなことないだろ!
なぁおっさん! 違うよな?」
「キメェ」
「はいこの話おしまい!
さあ次の街行こう! すぐ行こう! さあおっさん! 背負って!」
「てめぇ……怪我してなかったらはっ倒してるところだ……」
「怪我してるからいーんだよ
ささっ、おんぶプリーズ。」
「はいはい……っと。」
おっさんが俺に背を預ける。
その背中に飛び乗り、激痛に耐えながら森を進んでいく。
真宵の森を抜けたのはそれから半日ほど歩き続けた後のことだった。




