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57.勇者ガイラス

遅くなりました!

申し訳ない

 傷の件もあり、テントまでたどり着くのは20分ほどかかった。といっても俺が歩いたわけではなくおっさんに抱えられる形となってなのだが。戦闘が終わって落ちつくと、アドレナリンが切れたのか両腕の火傷、右足の損壊、脇腹の傷跡全てが痛み出し、立っていることもできないほどの痛みが走ってその場に倒れこんだ俺をおっさんが運んでくれたのだ。


 テントに戻ると、炊き続けていた火は消え、張っていたテントもボロボロに潰されていた。



「これは酷いでござるな……

とてもじゃないでござるがもう使えないでござるよ」


「そうだなぁ……しゃーねぇ、その辺で寝るか。今日は俺が見張りしてやるから二人とも寝な」


「かたじけないでござる。

正直もう眠気が限界で……ふぁ〜あ」



 するとフォウルはテントの中で無事だった寝袋にくるまる。余程疲れたのか10秒ほどで寝息を立てて眠りに入ってしまう。



「とりあえず……よく生きてたなショウタ。

てっきり勇者達と一緒に殺されたと思ってたぞ」


「あー……それはまあいろいろあったってか……実際殺されたってか……ていうか勇者達は殺されてねぇよ。攫われただけだ」


「ほーそうか……それはカミシロもか?」


「……ッ!」


「……なるほどな。ようやく合点がいったよ。

なんでお前がここにいるのか、なんで今生きているのか」



 おっさんが全てを理解したかのような顔で頷く。いや……なんで生きてるのかって死んでること前提かよ。失礼な。



「お前、フォルセティ様に会ったんだろ?」


「フォルセティ様?」



 なんだそれ

 聞いたこともないし会った覚えもない。

 俺が何のことか分からずにいるとおっさんは不思議そうに首をかしげた。



「あれ? 会ったんじゃねぇのか?

フォルセティ様。この世界の人間が唯一崇める神、平和と愛を司る神フォルセティ様だ。」


「神様……ってあいつかよ!」



 脳内に笑いながら俺の死を迎え入れる自称神様が思い浮かぶ。なんかあいつの顔命の恩人のはずなのに腹立つな。今度会ったら石投げてやろう。



「その反応だとやっぱり会ったみたいだな。

それで勇者として生き返らせてもらったってところか?」


「ああそう……ってちょっと待て

色々おかしいぞ。」


「ん? なんだ違うのか?」


「いや惜しい。惜しいんだけど決定的に違うところがある。勇者? 何それ」


「いやだから勇者だっつうの。『勇』ましき『者』って書いて勇者」


「いや別にそこが聞きてえわけじゃねぇよ

勇者として生き返るって何? 俺それ知らねえんだけど」



 少なくともあの神はそんなことは言ってなかった……はずだ。そもそもステータスをなくした俺が勇者になるはずがない。



「は? お前フォルセティ様に会ったんだろ?

それはつまり勇者になったってことじゃないのか?」


「ちょっと待って、全く理解できないんだけど。一つずつ説明してくんない? ってかその口ぶりだとおっさんはそのフォルなんとかと会って勇者になったのか?」


「フォルセティ様な。

そうだな、一つずつ説明していこう」



 おっさんが淡々と昔話を語るように懐かしそうな顔で語りだす。



「まず俺は一回死んでる。

10年くらい前だったか、依頼で討伐しに行ったミノタウロスに殺された」


「死んだって……」



 少し前までなら何言ってんだこいつ電波かよと笑い飛ばしていただろうが異世界に召喚されて生き返ってとしてる為か全く笑えない。

 非現実に慣れすぎた 。



「でも俺は生き返った。フォルセティ様に見初められて勇者にならないかと、世に蔓延る魔王を討伐しないかと言われたんだ。」


「正直戸惑ったさ。俺は一山いくらのBランク冒険者。適正魔法は多かったけど魔力の少なさでそれを活かしきれていない。ミノタウロスに殺されるような俺が魔王なんてなんの冗談かと思ったよ。」


「ゴブリンすらまともに倒せない俺への嫌味か。こちとら魔力どころか適正魔法も皆無だよ」


「ははっ、その通りだな。フォルセティ様にも言われたよ。『魔力の有無は重要だがそれのみで勝負が決まるわじゃない。だったら君を選んでない』ってな」


「じゃあなんで選ばれたわけ?」


「秘密だとよ。きっとあの方には何かが見えてたんだろうな。そして俺は生き返り仲間を集めて魔王を倒す旅に出た。死んでも生き返る体をもらってな。」


「死んでも生き返る……!?」


「ああ、勇者ってのは死を重ねる存在だ。何度も死に、その度に生き返って血を吐いた。魔王を倒したっつってもあんなのトライアンドエラーの反則みたいなもんだ。」



 確かに何度死んでも生き返って戦えるなら負けることはないだろう。生きていればそれはもう勝ちなのだから。それこそゲームのような戦い方だ。でもそれを誰もができるかと言うとそういうわけではない。死ねない体で何度死んでも立ち上がって、戦い続けられる人間がこの世界に何人いるだろうか。そういう意味では目の前にいるおっさんは『勇者』だったのだろう。



「でも……だったらなんで今はまだ魔王が!?」


「蘇りやがったんだよ。6年前にな。

そしてすぐに各地に散った魔人達を集めて強大な魔人軍隊を作った。通称魔王軍ってやつだ。」


「魔王軍……」


「魔王復活が噂になってすぐに俺たちは魔王を討伐しに行ったさ、でも勝てなかった。トーマス、グリンド、エランダ……仲間たちを死なせ俺も何度も死んだ。それでも勝てなかった。魔王は昔の魔王とは比べ物にならないほど強くなっていたんだ」


「魔王に負けた俺はただでさえ少ない総魔力の半分を魔王に奪われ、勇者の名を失った。おそらくフォルセティ様が俺ではもう魔王に勝てないと判断したんだろうな。勇者を失ったこの世界に呼び出されたのがお前達、異世界の勇者だ」


「俺は勇者じゃないけどな」



 勇者どころか魔法使いでも戦士でもましてや遊び人でもない。



「ははっ、そうだったな。

勇者が全員攫われてそれを助けに行くのが唯一の一般人なんて皮肉なもんだな」


「んで、おっさんはなんでここにいるんだ?

また魔王に挑むつもりなのか?」


「……それもいいかもしれねぇがそうするわけにはいかねぇ。俺が死んだら国が滅ぶレベルで国防が傾く。魔王に勝てなくても俺はまだまだ一級の選手だからな。俺がここにいる理由は失踪した第三王女の捜索だよ」


「失踪した? なんで?」


「わからん。この間の国王暗殺のゴタゴタの時に失踪したらしくてな。今王国の唯一の後継人だから探さざるを得ないんだ。」


「唯一の後継人って……兄弟とかいなかったわけ? 普通王族って大量に子供がいると思うんだけど。」


「全員殺された。王族はもう存在を秘匿されていた第三王女しか残っていない。」



 存在を秘匿って……やばい感じしかしないんだけど。



「さあ、今度はお前の話を聞かせてもらおうか」

なんか毎回翔太はんゆきのことばっかで思い出してもらえない坂本君。大丈夫! おれさまは覚えてるよ! いつか君のサイドストーリーでも書くからね! 多分ね!


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