54.2度目の死
なんで翔太さんすぐ死んでまうん?
失われた自己が新たに形成される。
白一色の世界に大宮翔太であり大宮翔太でない存在が顕現する。
白い世界の中心に、中性的な男とも女ともとれる存在……神がこちらをじっと見ている。
「やあ、また来るだろうとは思っていたけど案外早かったね。」
「……またここに来られたってことは俺が死んでも何度でも生き返らせてくれるってことなのか?」
「そのつもりだよ。
僕の力を持ってすれば人間一人生き返らせるくらい簡単だからね。100回や200回生き返らせることくらいわけないよ」
「100回200回死ぬの前提かよ……」
「まあ僕の読みじゃそのくらいは死ぬだろうね。君の世界にもあっただろう? トライアンドエラーで死ぬのが前提のゲーム。あんな感じだよ」
「リアルであんな何回も死にたかねぇよ……」
「あはは、だろうね。でも僕は魔王さえ殺してくれれば君がどうなろうと別に構わないからね」
そう神が言うと俺の体が光りに包まれる。その優しい光は俺という存在をこの世界か消し去ろうと輝き続ける。
「ああそうですか……
言っておくが俺の目的はあくまでゆきの救出だからな。ゆきさえ助けられれば魔王なんて無視するかもしれないぜ?」
「いやそれはないよ。
君は必ず魔王を殺しにいく。」
光はより一層強くなり、俺の存在を書き換える。満ち満ちたエネルギーの塊が俺に充填され、意識を優しく刈り取る。
俺の意識が覚醒すると、俺は空を舞っていた。ああ、死んだ場所からリトライなのな。優しくねぇ……
地面に叩きつけられ激痛が走る。
確実に骨が折れ、内臓が破裂したはずなのに内臓にも、骨にも違和感は感じられない。しかし脇腹の火傷と傷はそのまま残っているため、おそらく死因となった傷だけを回復させられるのだろう。
ゴブリンキングの方を見てみると、こちらにはもう見向きもせずフォウルがいるであろう方にハンマーを構えている。俺は死んだと思ってんだろうな。
ゴブリンキングの後ろから全速力で駆ける。痛みが全身を駆け回るが溢れ出すエネルギーのおかげで一時的に痛みを気にせずに走れる。
さすがというべきかゴブリンキングは俺に背後を取られる寸前に気配に気づいたのかこちらに振り向き、ハンマーを構える。しかしゴブリンキングが振り向いてハンマーを振り下ろすよりも俺が剣を振り抜く方が速い。
ゴブリンキングに剣での斬撃をしょうがダメージを与えられるはずもない。しかしあいつならこのチャンスを見逃さない。それは一種の信頼だった。
狙うべき場所はゴブリンの足。
足に向けて全力で剣を振るう。するとゴブリンキングの足に剣が触れる寸前に剣が炎に包まれる。魔力を内包した炎は剣だけに留まらず、剣を持つ俺の両腕にまで及ぶが不思議と気にはならなかった。
炎を纏った横薙ぎの一閃。
炎を纏った剣はゴブリンキングの足を焼き、肉を、筋を断ち切る。そこから燕返しの要領で腕力と脚力を利用して足の付け根から脇腹にかけて斬りあげる。その一連の動作を終えると、ゴブリンキングが初めて痛みに顔を歪めた……ような気がする。切り上げた後、胸の中程から股下までにかけて剣に体重をかけて振り下ろす。するとゴブリンキングの全身から緑色の血が吹き出し、噴き出した血は俺の体に届く前に蒸発する。俺が地面に着地すると同時に剣に纏っていた炎は消え去り、腕を焼いていた炎も消え去る。
攻撃を受けたゴブリンキングは手に持っていたハンマーを離し俺に向かって拳による一撃を放つ。
3度目の死を予見したが、その拳は俺の頭の上をすり抜けた。
そして俺の横にはフォウルが立っていた。どうやらゴブリンキングの拳はフォウルが逸らしてくれたようだ。
「大丈夫でござるかショウタ殿!」
「大丈夫なわけねぇだろ!
腕まで焼くやつがあるか!」
「し……仕方なかったでござるよ!
あれでもだいぶうまくいった方でござるよ! それよりまだ終わってないでござるよ!」
フォウルはそう言うとゴブリンキングの方を視線で促す。ゴブリンキングは緑色の血が流れていたが、筋肉が締まり傷を無理やり塞ぎ、ハンマーを持ち直す。マジかよ……全然元気じゃねぇか……
「GYAAAAAAAAAAAA!!」
ゴブリンキングが叫ぶと同時にゴブリンキングの全身が強く発光する。
それを見て直感的に死の危険を感じ、フォウルと共にゴブリンキングから大きく距離を取る。
距離を取ってすぐに地面から細い無数の土の棘がせり出し、ゴブリンキングを中心に、周囲を針地獄へと変貌させる。
幸いなことにギリギリ逃げるのが間に合い棘が刺さることはなかったが、ゴブリンキングの周りに近づけないようになってしまった。
ゴブリンキングとの戦いは、まだ終わらない。
普通は刺し傷と火傷だけでも重症なんですけどね。さらにザハード戦の傷も完全に癒えてません。




