5.魔法至上主義
「どうしろってんだよ…」
俺達がこの世界に召喚されて3日が経った。現在俺は孤立している。
まあそりゃそうか。俺は魔法が使えないのだから。
この世界は魔法至上主義である。魔法が使えないと魔族とまともに戦うことができない。それがこの世界の常識であり共通認識である。
そう、この世界には魔族というものが存在する
魔族というのはほとんど理性や知能がなく、破壊衝動に任せて他者を襲う魔物と、ある程度の知性があり、言語機能や統率能力を持つ魔人とに分類される。
魔人は魔物が進化した存在と言われおり、ほとんど人間と同じ姿をしているが、体の一部分に魔物であった頃の痕跡が残っているそうだ。
魔族達は総じて我々人間よりもステータスによる基礎能力値が高く、物理的な攻撃ではまずダメージを与えられないらしい。しかし魔法でならばダメージを与えられるので、皆魔法を用いて魔族に立ち向かっている。かなりレベルを上げれば物理で倒すことも可能らしいが、レベルを上げるには魔族などを倒していかなければならず、魔法が使えない俺には物理攻撃しか手段がない。物理で倒すにはレベルが必要で……という負のスパイラルに陥るわけだ。例外として、魔力を帯びた武器などの攻撃などもあるが、そういった武器はもはや伝説上にしか存在しないと言われている。
この世界の人が剣をとって戦うことはよほど格下の魔族や、人間相手、もしくは魔力節約でしかありえないのである。とはいえ格下であっても魔法を使う人も多い。そりゃそうだろう。抵抗うんぬんを抜きにしても剣で戦うより速度、威力、命中率どれを取っても魔法の方が強いのだから。
だから謁見の間にいた人達は槍ではなく杖を持っていたのであろう。フルプレートのアーマーも、魔法への抵抗ができないのであればただの重りでしかない。火系統の魔法で攻撃されたら大火傷だ。
この世界における魔法の存在の重要さを痛感させられる。
「つっても俺魔法使えねぇし……」
誰もこない図書室の片隅でこの世界に来てから何度目かの溜息を吐く。
俺は魔法が使えないため、他のクラスメイトが魔法の訓練に使う時間を自由に使っても良いこととされている。恐らく魔法を使えない俺の処遇をどうするか定まっていないためだろう。そして時間の有り余っている俺は図書室で時間を潰すしかできないのだ。
といっても何も面白い本などないのだが。
クラスメイト達の反応もあまり良くない
坂本とゆきは気にせず話しかけてくれるが、他のみんなは明らかに俺を無視するようになった。いじめられないだけマシだと自分に言い聞かせるが、このあいだまで仲良くしていたクラスメイト達に明らかに避けられるのはなかなかに心にくるものがある。
「はぁ……なんで俺だけ魔法が使えないんだよ」
誰も聞いてくれない愚痴をこぼし、掌を上にしてクラスメイトたちが魔法を発動させるような仕草をする。もちろん魔法が発動するわけもなく、ため息を吐いて与えられた自室に戻ろうと図書室を出る。すると図書室を出てすぐの廊下でクラスメイトの福田とゆきが何か話をしている現場を見て、とっさに身を隠す。
雰囲気的に……告白……か?
「あんな奴よりも!僕の方がゆきちゃんのこと好きだし、守れるし! だ……だから僕と付き合ってよ」
ふざけんな。俺の方がゆきを好きに決まってんだろ
「……ごめんね、それでも私が好きなのは翔太なんだ。守ってくれなくても、私のこと好きじゃなくなっても、私が好きなのは翔太。それはこれからも変わらない。だから、あなたとは付き合えない。ごめんなさい」
「そ……そんなぁ……」
……………
何故だろうか、ゆきに好きって言ってもらえて嬉しいはずなのに、部屋に戻った後もその日はモヤモヤした気持ちが晴れることはなかった。
驚くほどテンプレ