49.焦燥
お久しぶりでございます
横になっていた体を起こす。
どうやら俺は寝てしまっていたようだ。テントの中にはサリアとリリア、そしてグレンが眠っている……やっぱり慣れないなこれ。
フォウルがいないのはおそらく外で見張りをしてくれているのであろう。
そう思い俺は見張りを代わろうと枕元に置いていた剣を腰に刺し、愛用の木剣を手に持つ。そして軽く寝癖を直してリリア達を起こさないよう静かにテントから出る。
外に出ると少し先も見えないような暗闇の中、煌々と燃え盛る炎が真っ先に目に入る。炎のそばにはフォウルが立っており、その長い手足を用いて技を繰り出している。
声をかけようかとも思ったが、真剣に修行をしている中、水を差すのもどうかと思い近くの岩に腰掛けてフォウルの修行を眺めていることにした。
フォウルの立ち回りは別段優れているという風でもなかった。右手、左手で交互に突きを放った後、前蹴りを放つ。練度はまだまだで時折体勢が崩れているのもわかる。が、投げ出さない。何回も何回も同じ技を繰り出し体に染みつかせている。
十分ほど経った頃だろうか、フォウルがようやくこちらに気づき修行を中断に、歩み寄ってくる。
少し汗をかいており、体から湯気が上がっている。
………………暑いならマフラー外せばいいのに。
「起きていたでござるか。」
「ん、さっきな。見張り代わるよ」
「おお、ありがたいでござる。
それじゃあ今から任せたでござるよ。
焚き木はそこに置いてあるでござる」
そう言いフォウルが指し示した場所には大小様々な焚き木が積んである。
「わかった。じゃあ休んでこいよ」
「そうさせてもらうでござる。
ショウタ殿も頑張るでござるよ」
「おう」
フォウルがテントに入ると、俺は木剣を構える。そして素速く振り上げ、何よりも速く振り下ろす素振りを行う。フォウルは俺も見張りの時に修行をしていることに気がついていたのだろう。だから頑張れと言ったのだ。
見張りとしての本分を忘れず適度に周囲に注意を配りながらの素振りとなるため、注意力は散漫でまっすぐ振り下ろすことすらできていない。だがそれでも剣を振ることは辞めない。この程度じゃ足りない。もっと速く……もっと強く……
30分ほど木剣で素振りを終えた後、木剣を腰のベルトに差し直し、鉄剣を鞘から抜く。かつて見たような鈍色の剣ではなくギラギラとした色の剣だ。構えてみると木剣に慣れていた腕が違和感を感じ取っている。重い。
試しに軽く振り上げ、下ろしてみる。すると剣を振るというより剣に振られる形となり、体の軸もブレブレとなってしまった。だが何度か振っていくうちに腕が慣れてゆき、ブレも減ってゆく。ブレがある程度なくなると今度は少し速く振り、またブレがなくなるまで振る……ということを繰り返す。そうして体に振り方を覚えさせるのだ。
1時間ほど経っただろうか、そろそろ腕が悲鳴をあげている。木剣の倍ほどもあろうかという剣を振り回しているのだから当然なのだが、明らかに木剣の時よりも遅く、拙い剣筋だった。
息も絶え絶えとなり、手のひらの豆は潰れた上からまた新たにできている。
立っているのも辛くなり火のそばに座り込み、焚き木をくべて火を耐えさせないようにしていると、ふと焦燥感のようなものがこみ上げてくる。本当にこのままでいいのか? 無理してでもここを進んでゆきを助けないといけないんじゃないか? ゆきだけじゃない。坂本も無事なのか? 魔人一人に簡単に殺された俺程度が二人を助けられるのか? そんな消えるはずのない不安が俺はただただ怖かった。
するとパチパチと枯れ木の爆ぜる音のみを捉えていた耳が新たな音を捉える。茂みがガサガサと揺れる音だ。何かがこちらに来てる!?
俺は急いで立ち上がり、近くにあった岩の陰に身を隠す。するとその音の主が暗闇から現れる。緑色の肌に鋭い牙、そして手には棒切れを握りしめた小汚い魔物……ゴブリンだ!
「起きっ……」
魔物が現れたら皆を起こす。
そう約束していたため皆起こそうと声をあげかけるがふと俺の脳にある考えがよぎる。
『ゴブリン程度なら一人で倒せるんじゃないか?』
……俺だって今まで必死に努力した。手の皮が擦り切れるほど剣を振ったしずっと筋肉痛が取れないほど筋肉を酷使した。
サリアが一撃でゴブリンを突き殺したシーンが脳内で再生される。俺だって……
そう考え行動に移すのは早かった。
ゴブリンの目の前に姿をあらわし、その首めがけて突き技を放つ。突き技は練習したことがなかったが、サリアの技を見て突き技なら効果的かもしれないと思い、試してみることにした。結果は剣先がズレ、顎の部分を刺す形となった。
しかし効果は抜群なようで貫きはしなかったもののゴブリンは大きく後方へ吹き飛ぶ。そして少し時間をおいて立ち上がるがどうやら顎が砕けたようで、元々醜悪な顔がより歪んでいる。
ゴブリンがこちらに向き直る。気味の悪い奇声をあげてこちらに駆け寄ってくる。棒切れを頭上にあげてドタドタと走るその様子は、まるで野蛮人のようで思わず笑いがこみ上げてくる。
今度は足さばきでゴブリンをかわす。ゴブリンが武器を構えていない左側に回り込み、ゴブリンを翻弄する。
幸いなことにゴブリンは棒切れでしか攻撃して来ず、うまい具合にゴブリンを振り回すことができた。
そして隙を見て背後に回り込み、剣でゴブリンを殴打する。
突きとは違いあまりダメージを与えられているようには感じられない。かつてラビッツ相手に立ち振る舞っていたのを思い出す。
数度同じ動きを繰り返したのち、ふとあることを思いついた。
バックステップでゴブリンとの距離を取った後、突き技に特化した前傾姿勢をとり、剣を構える。少しでも頭が回れば何を狙っているかわかるだろうがゴブリンにそれを期待するのは酷か。
予想通りゴブリンは直進して来た。
同時に全速力で前進し、迎え撃つ。
首に命中した突きは刺さると同時にゴブリンの推進力が加わった体重が腕を痺れさせてくる。
その痛みを無視し、ゴブリンの首を貫かんと力を加え続ける。
数秒そのままの姿勢で静止した後、不意に俺の体勢が崩れる。前に体が倒れてゆき、足が進む。そして足が進み切った後、顔を上げるとそこには首から緑色の液体を吹き出し、絶命しているゴブリンがいた。
その場の時間が止まったかのようだった。先ほどまで光を写していたゴブリンの目にはもう何も写しておらず、定点をじっと見据えている。剣には立つ力を失ったゴブリンの体重がかかり、首から顎にかけて剣が自然と切り上がる。
俺は後ずさり首から剣を引き抜く。
支えを失ったゴブリンはどさりと地面に抵抗なく『落ちる』。
自身の顔についた緑の液体を袖でふき取ると、得体の知れない恐怖に襲われた。
俺はガクガクと全身の震えが止まらず、地面に座り込んだ状態で放心してしまった。
戦闘盛り上げよう! って思うんですけどめちゃくちゃ難しいです。なんか2〜3回剣交えたら終わってしまいます。
なぜだ……なぜだ……
あ、あとフォウルのコンボはスマ○ラのス○ーク師匠のコンボみたいな感じです。まじス○ーク師匠リスペクト




