46.優しさ
ラストォ!
「し……死ぬかとおもった」
「寿命が10年は縮まったでござるよ……」
「大げさなガキどもだな」
大げさなものか
あれから馬車が目的地に着くまで4時間ほど俺たちは馬上で過ごすこととなった。途中馬の背に乗ることはできたが、揺れに全く慣れない上に命綱があまりにも心細いため常に精神と尻の皮をすり減らしていた。おかげか乗る前と比べて少し老けた気さえもする。
本っ当に、怖かった……
「まああんま悪ノリしすぎず仲間は大切にしろってこったな。」
「いやそのセリフそのままバットで打ち返すわ」
「いや俺お前らの仲間じゃねぇし」
「いや……うん……」
なんという正論
「とりあえず降りな、もうこれ以上は連れてってやれねぇよ」
「うぃ……」
おっさんが指差した先には黒に近い色の葉をつけた木々が生え並んでいた。間違いない。『真宵の森』だ。
真宵の森はこの大陸で最も広いとされる森林群だ。
円形に近いこの大陸の中心付近を囲む森で陽の光も差し込まない深い森といわれている。数種類の強力な魔物が生息する上に、探索者と呼ばれる人々が作り出した出口までのルートが書かれた地図を持っていないと確実に迷うと言われている。安全性を重視する商隊などは絶対に迂回する森だ。
ただ迂回すると馬車で10日ほど、森を突っ切ると歩いて1日ほどらしい。ならばここは早さをとる。
馬車(馬)から降りた俺は降りる際に足下がおぼつかず盛大に尻餅をついてしまう。が優しいフォウル君は見なかったふりをしてくれる。なんと優しい青年か。
俺たちが降りるとほぼ同時くらいに荷台から二人も降りてくる。
どうやらガールズトークは弾んだようで結構仲よさげだ。なんか釈然としない。俺たちが死の狭間にいた時にキャッキャウフフしてたんですかぁ?
混ぁぜぇろぉよぉ!
リリア達が降りると、御者のオヤジが荷台から壺を一つ下ろす。
なんだろ。くれんのかな。
「んじゃ、俺はここまでだ。
あとはお前ら頑張んな」
そう言ってオヤジは壺を置いて馬車を走らせて行く。え? 説明なし?
ただ置いていくだけ?
「…………これ何?」
「さあ?……くれるんじゃないかな?」
「なんか無性に割りたくなるな
割ったほうがいいのかな?」
ド○クエ的に
「いやダメでしょ」
「発想が野蛮人のそれでござるな」
「誰が野蛮人じゃ」
「普通に開ければいいじゃないですか……ってうわぁ!」
リリアが壺にかけられていたボロボロの布を取り去る。そして中を見ると同時に大きく後ろへと跳ねた。
「び……びびびびっくりした……」
コ○イキング系女子……か……
ビクンビクンしているリリアを横目に壺の中身を見てみる。どれどれ……?
壺の中には少年が入っていた。
綺麗な赤い髪に小さな体。その小さな体には身の丈にあわせて切り揃えられたであろう木剣が抱えられている。今は寝ているのだろうかかすかに肩が動いているのがわかる。……間違いない。弟子にしてほしいと言ってきた少年だ。
「あちゃー……こう来たかー……」
「あのオヤジもグルだったってことだな……ハァ……もうほんっと……ハァ……」
ため息しか出ない。
もうあのオヤジもなんで許可しちゃうかな。金払うから連れて帰ってほしい……もう見えないけど。
外の光に気がついたのだろうか少年が小さく唸りその体を起こす。
「ふぁぁ…………ってショウタさん!
えっとその……これからお願いします!」
しばらく伸びをして目をしぱしぱさせていたが、周りに俺がいることに気がついてすぐにこちらに向かって頭を下げる。壺に入ったままな、すっげーシュール。
「……あのな、よろしくじゃねーよ。
断っただろ。俺は弟子とか取らないから、帰れ」
「嫌です! 俺はショウタさんみたいに強くなりたいんです! それにもう帰れません!」
こいつ……ドヤ顔で言いやがって
確かにこいつをこのまま帰らせたら魔物とかに襲われて死にそうだ。最悪野犬とかにでも殺されそう。
「……ハァ、なんでそんなに強くなりたいわけ?」
「僕は、せいぎのヒーローになりたいんです! 誰も立ち向かえないような悪いやつに立ち向かう、そんな力が欲しいんです!」
頭痛がしてきた。まさにこちらの事情をわかっているのではないかというほどピンポイントな願望だ。ある意味魔王を倒すという俺たちと同じ願望を持っていると言ってもいい。……弾けなくなったな……
「あの……ショウタさん……」
リリアが反応する。ああ、もうその続きは聞かなくてもわかる
「この子を、弟子にしてあげてくれませんか?」
ーーやっぱりか。
リリアは優しい。
ゴブリンに囲まれたフォウルを見て助けるという選択がすぐに出てきたように、決闘に出ている俺を見て全力で応援するといったように、他人に向ける優しさが強すぎる。さっきはリリアの見えないところで少年を放置する形で進めたが目の届く場所にいてはそうはいかない。彼女は目の届く範囲の人は助けたいという現実的な博愛主義者なのだ。
それが本当にその人のためになるかどうかは別として。
「ほら、私たちと目的も近いですし
もうここまで来ちゃったら引き返せないですし」
他の二人を見ても苦笑いをして言葉を出せないでいる。なによりリリアの言葉通り、放置したら死ぬのだ。断っても付いてくるのだろう。
「…………わかったよ。
ただ森を抜けるまでだからな、次の町に着いたらそこに置いていく」
「……! ありがとうございます!」
……こうして、俺に(一時的に)弟子ができた。
と言うわけで落ち着いて来たのでまた投稿ペース落とします。
なんやかんやで連日投稿は楽しかったのでまた嫌なことあったらやります




