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45.因果応報

 ついに俺たちがこの町から旅立つ時が来た。そんなに長くこの町にいたわけではないがこうやって目を閉じれば懐かしい思い出が……思い出が…………うん! 思い出すことなど何もない!



「何やってんのさ……」



 馬車の前で突然目を閉じた俺を見て馬車の準備が整うのを待っていたサリアが俺に変人でも見るような目を向けてくる。失敬な。



「うるさいな。色々思うところが……ないんだよ!」


「ないのにそんな考え込むような表情してたのかい……僕はてっきりあの子のこと考えてるのかと」


「終わったことは振り返らない主義なんだよ。もうあれは終わったことだ。」



 結局あの少年だが「連れて行かない」ということになった。

 俺たちの目的はあくまで魔王を倒すこと。一刻も早くたどり着くためにあいつに費やす時間はない、ということをオブラートで何重にも包んで説明した結果なんとか納得してもらえた。

 うん、嘘ではない。


 そうと決まってから行動を起こすまでは早かった。

 少年を振り切り、バレないように馬車乗り場にて合流。正直かなり疲れた。なんで町中で鬼ごっこせにゃならんのか……おかげでかなり視線を集めて恥ずかしかった。何人か指差して「あれ闘技場のやつじゃね?」みたいなこと言ってたし。


 しかし努力の甲斐あってか少年を振り切ることには成功し、馬車乗り場まで来ることができた。



「っていうかサリアこそ思うところないのかよ。お前この町の住人だろ?」


「別にないんだよね。僕は孤児として生きて来たから別れを惜しむ人だっていないし剣闘士だってお金を稼げるからやってただけだもん。それより今は君達に付いて行くほうが大切なんだよ」


「……まぁそういうことならいいんだけどさ。」


「ショウタ殿ー、サリア殿ー!

準備できたでござるよー!」



 そうこう話をしていると馬車の準備を手伝っていたフォウルが馬車から半身を乗り出して俺たちを呼ぶ。

 フォウルは馬車の準備などしたことはないらしいが、食い気味にやりたいやりたいと言い出し御者の人が苦笑い気味に手伝わせてくれたのだ。子供か。



「声がでけーよ!

すぐ乗るから待ってろ!」



 そう言いすぐに馬車の荷台に乗り込む。荷台にはすでにリリアが座っており、さらには御者の人の荷物らしい結構大きめの壺が5個ほど乗っている。だが俺たちが乗り込んでも十分なスペースが確保できる程度には広い馬車だ。ちなみにフォウルは目をキラキラさせて御者台に乗っている。だから子供か。



「お疲れ様ですおショウタさん

あの子は振り切れましたか?」


「あー振り切ったよ。結構足速かったから疲れたけど。あの根性を別の方向に活かして欲しいもんだ」



 子供であの速さ出せるならオリンピック選手でもなれんじゃないのかってくらい速かったな。



「ちょっと思ったんだけどさ、

リリアちゃんって僕と二人の時とだいぶ言葉遣い違うよね? なんで?」


「えっ……?」


「そうなのか?」


「うん、僕と二人の時はあんまり目を合わせてくれなくて時々どもりながら話してたから。おかしいなーとは思ったけどそういうもんなのかな? って納得してたんだ。けど翔太さ……翔太とは普通に話せてるからどういうことかと」


「フォウルとも普通に話せてるじゃん。慣れじゃないか?」


「確かにフォウル君とも話してはいるけどやっぱり翔太との会話が一番多いと僕は思うんだよね。そこんとこどうなの?」


「えっと……確かにそう……かもしれないですね。なんでかはわかりませんが……」


「まあせっかくのパーティなんだ。

僕とも仲良くしてくれると嬉しいな?」



 そう言ってサリアがリリアへと手を差し出す。それにおずおずと言った感じではあるがリリアが応じる。

 コミュニケーション能力高いな。



「じゃあ僕とリリアちゃんでガールズトークするから君は御者台行ってて。しっしっ」


「理不尽すぎねぇ!?」



 必死の抵抗むなしく俺は二人用の御者台へと押し出される。御者さんとフォウルは嫌そうな顔をしながらも状況を理解して受け入れてくれた。



「サリア殿は厳しいでござるな

まさかあの広い荷台から追い出すとは

あ、もうちょっとそっち寄って欲しいでござるよ」


「本当にな。ガールズトークをなんでここでやるんだよ……お前こそそっち寄れよそこスペースあるじゃねぇか」


「ええい! 暑っ苦しいわい! 失せろ!」



 うん、受け入れてくれた



「あの……だからってこれはひどいと思うでござるよ」


「しゃーねーだろ。お前がじゃんけんで負けるから悪い」



 現在フォウルは走っている馬の上に乗せられている。2頭の馬が馬車を引いているのだが、その右の馬に心細い命綱と共に乗せられている。ちゃんとじゃんけんで決めたことだ。何も問題はない。何回か落馬しそうになってるがそんなことは大した問題じゃない。



「あばばばば、これ! これやばいでござるよ! 無理! 落ちるでござる!」


「いけるいける。割と根性でなんとかな……る……」



 俺が言い切るよりも前に突如体が浮遊感に襲われる。確かに座っていたはずの御者台はすでに俺の尻の下にはなく、馬車より早く左の馬の方へと吹き飛んでいた。



「あばばばば!」


「いけるはずだぞあんちゃん。根性だ」



 あのオヤジ! やりやがったな!

 俺は必死に左の馬の側面にしがみつくことで落下を逃れたが御者台から弾き出されてしまった。



「こりゃ御者台が広くなっていいや

お前ら目的地までそうやって馬にしがみついてな」


「「いやぁぁぁぁぁぁ!!!!」」






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