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24.希望

やっちまったなぁ…

 気がつくと俺は白い世界にいた

 見渡す限り白。空も、地面も、全てが白い。俺が今までいた世界とも、地球とも違う。世界と言えるかどうかもわからない空間に。


 ああ……俺は死んだのか。

 ゆきを……守れずに……


 すると目の前の空間がぐにゃりと歪む。白い絵の具をぶちまけたような空間の歪みは白一色だった空間に、俺以外の新たな色を生じさせる。



「やぁ、いらっしゃい」



 それは人の形をしていた。

 少年とも、少女とも言えるような顔立ちにどこか懐かしい雰囲気の人? だ。そいつは柔和な笑みを浮かべ俺を迎える。



「俺は……死んだのか?」


「うん、死んだよ。

覚えてるでしょ? 魔人の男に蹴られたの

あの時のダメージで君のHPは0になって死んだ。」



 確かに覚えている。あの男に蹴られ、地面に転がった後段々と体が冷たくなって意識が飛んだ。



「HP……ねぇ……

じゃあここは天国か?」


「ううん、違うよ。天国でも、もちろん地獄でもない。

ここはね、僕の世界さ。

少し君と話したいことがあってね、

死後の君の魂を僕の元へ呼び出したんだ。」



 あー……なんか反応に困るな。

 それになんの感情も湧かない。

 死んだからか? もはや何もかもがどうでもいい。



「だとしたらお前は神様ってところか?」


「その通り!察しがいいじゃないか」



 投げやりな質問を自称神が食い気味に肯定する。



「それで、その神様が何の用だ?」


「おおう……反応薄いねぇ、

実は君に提案があるんだ」


「提案?」


「君、生き返ってみないかい?」



 その自称神の提案に、俺の中の消えかけていた感情が蘇るのを感じる。ゆきへの強い想い……答えは決まっていた。



「頼む!」


「そうだよね、いきなりそう言われても……って、ええ!?」



 自称神は驚いたような声を上げる。



「生き返らせてくれるなら何でもする

だから俺を生き返らせてくれ」


「お……おう……

あまりに食い気味な返事で僕かなり驚いたよ。」


「ゆきが拐われたんだ

俺はゆきを助けに行く。いや、行かなきゃならないんだ」


「ゆき……? あー神城ゆきか。

そういうことなら話は早いね」



 俺の言葉に何か納得したように自称神は頷く。



「……どういうことだ?」


「君にはね、生き返ってやってもらいたいことがあるんだよ」


「……それは?」


「『魔王を倒すこと』それだけだよ」



 ……は?



「今あの世界に今現在存在する魔王はね、

あの世界にとっては『異物』なんだよ」


「異物……?」


「道理を捻じ曲げ、世界の摂理から外れた存在。元来魔王とはそういうものなんだけどね、今代の魔王はちょっと外れすぎている。魔王をどうにかできるのは勇者だけ……でも今代の魔王には必勝のはずの勇者でさえ勝てないだろう。そもそもその勇者も魔王に攫われちゃったしね。」


「攫われたって……何でだ?」


「それはまだ教えられないかなぁ。

でもすぐに殺されることはないはずだよ。

それは僕が保証する」


「……そりゃありがたいことで」


「魔王は無敵だ。勇者が戦えない今、この世界に希望はないだろう。

だから君に希望を託す

同じく世界の摂理から外れた存在きみに、唯一魔王を倒せる英雄としての希望を」



 そう言って自称神は俺の方に妖しく光る手のひらを向ける。


「俺が摂理から外れてるって……どういうことだ?」


「そのままの意味だよ。

この世界ではね、魔力0なんてことはありえないんだよ」


「例え異世界から呼び出されたとしても、世界をまたぐ際に魔力を吸収し、この世界に適合する」


「でも君の体は魔力を吸収しなかった

多分そういう特異体質なんだろうね、遺伝か、それとも君だけの特性か。

その特性があるから君は魔王を倒すことができる」


「……どうやって?」


「ステータスを消すのさ

ステータスはこの世界の摂理そのものだからね。ステータスという摂理を有する存在では摂理を超えた存在は攻撃できない。それこそ勇者でもない限りね。」



 そう言って俺の元へ向けた手のひらをぎゅっと握る。妖しい光はそれに合わせて霧散し、消え去る。



「だから僕は君からステータスを取り上げる。これは魔力を有さない君にしか行うことのできない方法なんだ。そうすることで君は摂理を超えた存在となる。

これでようやく魔王と同じステージに立てる」


「だがそうすることで問題も発生する。レベルという確かな強さが失われる。つまり魔族達に君の剣の攻撃が通ることはまずなくなるんだ。」


「僕がしてあげられるのは魔王に攻撃することができるようにすることだけ

創作物の神様みたいに最強の力を与えたりはできない」


「すぐに壊れる可能性もある。

正直その可能性の方が高いと思ってる」


「それでも……生き返るかい?」



 自称神は俺に向かってもう一度手を差し出す。

 その手には先ほどと同じ妖しい光が纏われていた。


 手を差し出そうとした瞬間、自分が死んだ瞬間を思い出す。

 だんだんと自分の体が死んで行くのを感じる不快感。世界から自分だけが切り離されたかのような孤独感。正直二度と味わいたくないものだ……けど。


 俺に迷いはなかった。

 決めたんだ。ゆきは、死んでも俺が守ると。



 俺は、自称神の手を取った。


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