23.襲撃
今話からストーリーが動き出します
「それじゃあ、この決闘を終わらせようか」
瀬川が剣を振り上げる
どうしたらいい……どうすればここから巻き返せる……必死に考えを巡らせるも具体的な案など出てくるはずもなく、ゆっくりと、まるで俺の敗北を周囲に知らしめるかのように、ゆっくりと振り下ろされた剣はーー
「敵襲! 敵襲です! 魔人が襲って来ました!」
門の方から門番がこちらに走ってくる。
その声を聞いた瀬川の剣が俺の目の前で停止する。
瀬川だけじゃない。その場にいた全ての人が状況を理解できていないかのようにその場に静止していた。
報告が来てすぐに、門の方から爆発音のようなものが聞こえる。するとその音を皮切りに静まり返っていた観客達から悲鳴が巻き起こり、辺り一面はパニックとなる。
「数は! 何匹の魔族が攻めてきおったんじゃ!」
爆発を聞いた国王が駆けつけてきた兵士に声を張り上げて問いかける。
「そ……それが……」
「はよう言え!」
「い……一匹です!」
「なんじゃと!? たった一匹じゃと!?
その程度さっさと片付けんか!」
「一人じゃありませんし一匹でもありません。『二人』です。」
「なっ……!」
不意に背後からかけられた言葉に国が振り返る。するとそこには男が立っていた。先ほどまではいなかったはずの男がいつのまにか背後で腕を振り上げていた。
その男は一見人間となんら変わらない。黒い髪に黒い目、日本によくいるようなエリート会社員のような雰囲気を持つ男は、しかし明らかに違う点が一つあった。尻尾だ。おとぎ話に現れる悪魔を想起させる黒い尻尾が腰から生えているのだ。間違いない。魔人だ。
「では、さようなら」
男はそう言うと国王の体を腕で貫く。
あまりに突然のことで、誰も反応できなかった。貫かれた国王の体からは赤い液体が滴り落ち、その身体から魂が抜け落ちる。
初めて見るそれは、まるで作り物のように、非現実的なものだった。
「ふむ……国の主とはいえ所詮は人間、この程度ですか。」
「あっ……ああっ……」
男は何事もないかのように腕を引き抜いて国王の隣にいたゆきにその手を伸ばす。
あまりの出来事にゆきは腰が抜けたようで、その場にへたりこんでいる。
俺は無意識のうちに走り出していた。
ゆきを守る。ただそれだけを考えて。
男がゆきを掴む。と同時に俺は男の前にたどり着いた。
「翔太!」
「ゆきを……ゆきを放せぇ!」
男に向けて木剣を構える。
男は俺の方を見ると、一瞬驚いたような表情になるもすぐにため息をつく。
「はぁ……全く。遅いぞ」
男がそう言うと、俺は背後から殴り倒される。気を失いそうになるほどの一撃。意識が闇に溶け込みそうになるが、ギリギリのところで耐える。
「いやーごめんごめん、意外と勇者ちゃん達強くてさぁ」
後ろから声が聞こえる。無邪気な男の声だ。
「さすが勇者って感じ。
まあ魔力が高くても所詮子供って感じだったけどね。」
勇者……こいつら何を言って……
震える体を無理やり起こしながら周りを見渡すと俺と同じように地面に転がっている勇者達が目に入る。
なっ……! みんなが負けたのか!?
「ならとっとと帰るぞ
魔王様に勇者を献上せねばな」
「わかってますって
それよりもこの子は? これも勇者っすか?」
「いや……こいつは勇者じゃないな
突出したところのないただの子供だ」
「そっすか」
すると俺は思い切り蹴り飛ばされる。
まるでサッカーボールのように、地面に転がる空き缶を蹴り飛ばすように。
俺の体は空高く投げ出され、そのまま重力に従い地面に叩きつけられる。
「翔太ぁ! 翔太ぁ!」
「ゆ……ゆき……今……助けて……」
俺は必死に手を伸ばす。が、その手が届くはずもない。ゆきは男に抱えられ、何もない場所に現れた裂け目のようなものの向こうに消えてゆく。
視界が暗くなって行く。
何も聞こえない、何も感じない。
そうして俺は……大宮翔太は死んだ。
主人公死にましたね
終わりませんよ!終わらせませんよ!




